345 とんでもないものが出現……!?
どうやら揺れているのは俺たちが乗っている船だけのようだ。
「あっちは揺れていないような……。く、もう一回飛び移るよ」
『うん!』
頷いたミミを抱きかかえ、ボロボロの船に跳び戻る。
背後では衝突を仕掛けようとしていた不審船が船首を大きく持ち上げ、船尾から沈んでいくところだった。
「船がひっくり返る……」
無事ボロ船に戻り、不審船が沈んでいくのを見守る。
海草の拘束を無理に突破したせいで、ガタが来たのだろうか。
『あ!』
ミミが驚きの声を上げるのも無理はなかった。
不審船がひっくり返ったと思ったら、船底からモンスターが姿を現したのだ。
「ヤドカリ……?」
途轍もなく巨大だが、そう見えた。
不審船を宿にした巨大なヤドカリが姿を現し、こちらを見下ろしていたのだ。
巨大なヤドカリは至る所に傷跡があり、片方しか腕がない。
傷は治っているようだが、それでもかなり弱っているように見えた。
全体的に動きが重く、鋭さがない。
それでも健在な方の腕を掲げ、攻撃の意志を示してくる。
『あれで海草を切られたみたいなの!』
「やばい! こっちにくる」
ヤドカリが掲げたハサミを振り下ろす。
俺はミミを抱きかかえて、自分のボートへと飛び移った。
振り下ろされたヤドカリのハサミはドミニクさんたちの船を直撃。
もともとボロボロだった船が胴で真っ二つになり、海へ沈んでいく。
「よっと……。危ない危ない」
『マスター、来るの!』
ミミの言葉に振り向けば、ヤドカリの標的が俺たちへ変わっていた。
再度ハサミを振り上げ、俺たちへ向けて狙いを定めている。
「当たるとまずいな」
俺は素早くオールを握り、ボートを漕ぐ。
一気にトップスピードに到達し、ヤドカリから距離を引き離した。
すると、ヤドカリの標的が俺たちから、豪華客船へと変わりそうになる。
「だめだ。逃げていたら、あっちに行ってしまう」
ヤドカリの移動速度はそれほど速くない。
俺が全力でボートを漕げば、余裕で引き離せる。
だが、そうなるとドミニクさんやフローラさんが乗った豪華客船が狙われてしまう。
ここで俺が引きつけて倒すしかないか……。
俺が考え込んでいると、ミミが腕を引っ張ってくる。
『何か出したよ!』
そう言われて顔を上げれば、ヤドカリが口から大量の泡を吐き出していた。
泡はシャボン玉のように一定時間空中を漂うと、急に速度が増して豪華客船の方へ飛んで行く。
「く、間に合わない!」
シャボン玉が豪華客船に接触。
泡が弾ける瞬間に爆発のような衝撃波が起き、船が大きく揺れる。
これはまずい。
「もちもち波! 波! 波!」
船体で防ぐのはまずいと判断し、無属性魔法を発動。
小規模な威力で連射し、ヤドカリから吐き出された泡が豪華客船に辿り着く前に割ってしまう。
「船に当たりそうで怖いな……」
一応コントロールしているが、自分が放った無属性魔法が船に当たりそうで怖い。
無属性魔法は直線的にしか飛ばない。
誘導ミサイルのような軌道は描けないのだ。
練習すれば多少カーブさせることはできるかもしれない。
しかし、それには精密なコントロールが必要となる。
つまり、今のように連射している時は、どの道コントロール不可能という事だ。
「ミミ、キンモクセイは出せる?」
ミミのキンモクセイは軌道のコントロールを精密に出来る。
俺が無属性魔法を撃つより正確に泡を破壊できるはず。
『ん〜! ダメみたいなの』
両手をかざしたミミが力を振り絞っていたが、海上でキンモクセイを出すことはできなかった。
「そうか……。なら、海草で船とヤドカリの間に壁を作れる?」
ならばバリケードだ。
壁を作って泡の侵入を防ごう。
『分かったの!』
力強く頷いたミミが海草を操り、壁を作っていく。
「こっちだ!」
俺はヤドカリの注意を引こうと、本体目がけて無属性魔法を発射した。
魔力を練って威力を高めていると船に注意が向いてしまうので、小規模な威力のものを断続的に撃ち、こちらへ意識が向くように仕向けていく。
『う〜! もう少しなの!』
ミミの言葉通り、ヤドカリと豪華客船の間に緑の壁ができ、進路を妨害する事に成功していた。
後は高さを確保できれば、泡も防げる。
海草の壁ができるのを見守っていると、ヤドカリがこちらを向いた。
俺が無属性魔法を撃ちまくったせいだ。
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