343 避難開始するも、まさかの事態に!?
恐怖におののく乗客たちが見つめる先には、大きな船の姿があった。
「ん? 船じゃないの、あれ?」
この船に負けず劣らずのボロ船がこちらへ近づいてきている。
これまた不審極まりない船である。
大きさだけで言えば向こうのほうが巨大だが、モンスターには到底見えない。
『お船がモンスター?』
「見間違いでしょうか」
近づく船を見てミミとフローラさんが疑問を口にする。
今乗っている船と合わせて、不審船が二隻になってしまった。
二隻も居れば目撃情報も増えるわけである。
「違う! あれがモンスターなんだ! 早く逃げないと!」
と、ドミニクさんが叫んだ。
木の枝や葉っぱに擬態する虫なら知っているが、あれがモンスターというのは無理がある。
完全な人工物だし、虫が擬態しているかのような不自然さはない。
さすがに見間違いではないだろうか。
「モンスターかどうかは置いておいても、衝突しそうなコースだな」
新たに現れた大型不審船は、こちらの船体側面へ向けて直進中である。
このままいけば衝突は免れない。
「でも、この船は動かないと思いますよ。浮いているのが不思議なくらいなんですから。だから、早くなんとかしないと!」
と、フローラさんが慌てたようにまくし立てる。
確かに、この船はどうやって動いているのか謎だ。
帆はボロボロ。船体もボロボロ。
波に流されるまま移動していたと考えた方が自然なほど、自発的に動く手段が見当たらない。
「俺たちが乗ってきたボートでは、この人数を乗せて運ぶのは無理だ……」
俺が乗ってきたボートに全員乗せたら、重量オーバーで沈んでしまう。
というか、乗り切れない。
何か手はないか。
「急いで船を動かせ!」
「まかせて!」
乗客たちが声を掛け合い、船内へ駆けて行く。
途端、船がゆっくりと動き始めた。
衝突を避けるようにコースを変更したのだ。
「え、動いた?」
無音でスーっと動く船に不自然さを感じ、驚く。
どうやって動いているんだ?
「でも、この速度では避けられないですよ! 動き出すのが少し遅かったんです!」
フローラさんが言う通り、動いたはいいがとても遅い。
もう少し早く気付いていれば何とかなったかもしれないが、今となってはどうしようもない。
更に追い打ちをかけるように向こうの不審船が進路を変更し、衝突コースを維持してきた。
残念だが、回避失敗と見た方がよさそうだ。
「まるもっちーさん! 早くあのモンスターをなんとかしてください!」
現状を見かねたドミニクさんが俺にすがり付いてくる。
「いや、あれは船ですよ。でも、衝突するのはまずいな……。かといって向こうに人が乗っていたら、壊すわけにもいかないし……」
無属性魔法を撃てば消し去ることも容易い。
だけど、人が乗っていたら大変なことになってしまう。
相手が海賊的な存在だったとしても、できれば生け捕りにしたい。
しかし、このまま何もしないでいれば、衝突してしまうのは明白。
これは参ったぞ。
「ミミ、海草であの船を縛れる?」
『やってみる! どっこいしょー!』
強く頷いたミミが、海底から海草を大量に生やす。
海面に顔を出した大量の海草は大型不審船に絡みつき、進行を妨害するのに成功した。
今の内にこの船の乗客を避難させよう。
こちらへ向かって来る不審船の処理はその後だ。
「ドミニクさん、皆を甲板に集めてください!」
「なぜそんなことを?」
「戦闘の邪魔になるので避難してもらいます」
「分かった! すぐに集める」
ドミニクさんが船内へと駆け出す。
「フローラさんもお願いします。二人で乗客を全て甲板に移動させてください。俺はその間に避難の準備を進めます!」
「分かりました! 行ってきます!」
「見落としがないように気をつけて下さいね!」
と、フローラさんも船内へ向かわせる。
「よし、今の内に……」
二人がいなくなったのを確認した俺は、アイテムボックスからブラックドラゴンの死骸を取り出し、海上へ向けて放り投げた。
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