342 調査開始するも、衝撃の事態に!?
というわけで、ドミニクさんが先頭に立ち、船内へ入ることとなった。
…………
「この船、おかしくない、ですか?」
船内を進んでいると、フローラさんが俺に聞いてくる。
何か違和感でも覚えたのだろうか。
俺も気になっていることがあったので、頷き返しながら話す。
「壊れていますね。もうずっと人がいた形跡もない感じだし……」
扉の類いは機能しないほど崩れ、いちいち部屋ごとに室内を確認しなくても誰もいないことがひと目で分かる。
とてもじゃないが、人が生活していたとは思えない状況だ。
「もしかして……、私が記憶を失ったのは最近ではなく、もっと昔だったのか……?」
余りの朽ち果てぶりにドミニクさんさえ、疑問を抱いているようだった。
俺たちがドミニクさんと会ったのは数日前だが、船を出たのがもっと前だった――。
ということも考えられないわけではない。
しかし、その状況でも説明が付くのは、せいぜい数週間くらいではないだろうか。
だが、船の荒れ方は年単位のものに思えた。
ドミニクさんが何年も船から離れて行動していて、最近になって海で遭難して記憶を失った……、なんてありえるだろうか。
全員がそれぞれに疑問を抱える中、船内の探索を終え、一旦甲板に戻る。
探索の結果、誰もいないことが分かった。
というか人が居た痕跡がない。
もしかしてドミニクさんが船を見間違えたのだろうか。
俺が考え込んでいると、ミミが服をちょいちょいと引っ張った。
『誰かいるよ?』
「え?」
ミミが指差す方向を見ると、物影から一人の男が顔を出した。
それを境に複数の男女がゾロゾロと姿を現す。
この船の乗客だろうか。
だけど、誰もいなかったよな……。
……まさか、船底に張り付いていたとか?
「ドミニクか?」
「急に騒がしくなったから、びっくりしたわ」
と、周囲を警戒しながら、こちらに話しかけてくる。
「おお! 私だ! 冒険者を連れて来たぞ!」
めぐり合えたことがよっぽど嬉しかったのか、ドミニクさんは、現れた人達とは対象的な明るさで話しかけていた。
ドミニクさんの言葉を聞き、人々がこちらへ詰め掛ける。
「何、本当か!?」
「よかった。これでモンスターを何とかできる!」
「引きつけながら移動していたから、いつ襲われるかと冷や冷やしていたんだ」
「貴方が船を出た途端、アレに攻撃されていたから心配したのよ?」
「冒険者と言うのはその人達かい?」
「失礼だが、あまり強そうに見えないな」
「ああ。丸々としていて動きが鈍そうだ」
「それに凄く柔らかそう。とても鍛えているようには見えないわ」
俺たちを取り囲み、言いたい放題言ってくる。
特に俺に対する評価が低い気がするな。
「大丈夫だ。この人は強い。絶対なんとかなるはずだ!」
「ドミニクがそこまで言うなら間違いないか。期待していいんだよな?」
「ああ、これで安心だ」
ドミニクさんが乗客を説得し、小さな騒ぎはあっという間に収まった。
そんな光景を見ながら、俺は頭の中に浮かんだ疑問を自然と口にしていた。
「……船内を見た時は人なんていなかったはずだ」
隅々までくまなく見たわけではないが、人の気配はしなかった。
一人や二人なら、息を殺して隠れていたと考えてもいいかもしれないが、これだけの人数だとありえない。
こんなにも静かな海上で、物音一つしないなんてありえないのだ。
冗談で考えたが、船底に張り付いていたとするなら体が濡れていないとおかしい。
だが、現れた乗客は全員濡れてなどいなかった。
一体どうなっているんだ。
「ドミニクさんと会った時から少し気になっていたのですが、それは多分……」
俺の呟きを聞き、フローラさんが何か言おうとして止める。
フローラさんは思い悩むような表情で口を噤んでいた。
どうにも顔色が悪い気がするけど、大丈夫だろうか。
「フローラさんは何か気づいたんですか」
続きが気になった俺はフローラさんに尋ねた。
「ええ。あの人達は……」
フローラさんが俺の質問に答えようと口を開いた次の瞬間、周囲が騒然となる。
乗客たちが騒ぎ出したのだ。
「来たぞ! モンスターだ!」
「まずい! 逃げないと!」
恐怖におののく乗客たちが見つめる先には、大きな船の姿があった。
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