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34 ラッシュボアを届けた結果、とんでもない事態に!?

 

「……年のせいか、目が悪くなったようじゃ。一頭のラッシュボアがボヤけて十頭くらいに見えるわい」


「目は悪くなっていないわ。実際にそれ位いるから」


「実はそうじゃないかな〜と、薄っすら思っとったんじゃよね。……ちょっと気持ちを整理したいから、家に帰ってひと晩考えてきていい?」


「駄目よ。ていうか、まるもっちー君を放っておかないで。ちゃんと話して」


「あ、はい。どうも、こんにちは。村長のナタンです。それで今回はどういったご用件なのでしょうか?」


 オレリアさんに促され、村長のナタンさんが挨拶してくれる。


「まるもっちーと言います。こっちは従魔のミミ。今日はラッシュボアの群れを倒したことを報告したかったのと、これらを村の修復費用に当ててもらおうと思って来ました」


「いや、無理。多すぎるから」


 断られた。これは予想外。


「じゃあ、必要な数だけ持っていって下さい。残りはこっちで処理しますんで」


「……なあ、やっぱり家に帰って、ひと晩考えてきていい?」


 村長が弱気な表情で、オレリアさんに尋ねる。


 するとオレリアさんは「駄目に決まってるでしょ!」と叫んだ。


 二人はしばらく言い合った後、皆に聞いてくると言って村に戻って行ってしまう。


 当然、俺は取り残された。


 仕方ないので、木陰に腰掛け、二人が帰って来るのを待つことにする。


 やることもないので、餅スキルでヨモギ餅を作る。ミミと二人でおやつ休憩だ。


 ヨモギ餅を食べ終わる頃、話し合いを終えた村長とオレリアさんこちらへ戻ってきた。


 村に居る者全員で話し合った結果、四頭のラッシュボアを貰いたいとのこと。


 それが処理できる限界量らしい。


 四頭分あれば当面の食料にも困らないし、余った肉と素材を売れば、村の修復にも随分と助かるそうだ。


 俺はそれに応じ、四頭のラッシュボアを渡した。


 残りはアイテムボックスへ戻しておく。


 二人は恐縮し、何かお礼をしたいと言ってきた。


 お礼となると、現金や高価な品、もしくは食料になってしまう。


 それでは本末転倒だ。


 村の修復費用と食料の足しになればとラッシュボアを渡したのに、意味が無くなってしまう。


 とは言ったものの、何もいらないです、とは言い出しにくい雰囲気ではある。


 何か欲しい物はないかと思考を巡らすも、特にない。


 これから買おうと考えている物でもあれば良かったのだが、街に来て数日しか経っていない俺には何も思い浮かばなかった。


「特にないですね。まあ、色々な偶然が重なっただけですし、あまり気にしないで下さい」


「「そういうわけにもいかないだろ!!!」」


 さっきまでの恐縮振りが嘘のように、二人に声を揃えて叫ばれてしまう。


 この二人、案外仲が良いのかな?


「す、すいません。か、考えます。ちょっと待ってください……」


 なぜか俺が謝る展開になり、欲しい物を必死で考えるハメになってしまう。


 できれば金や物は受け取りたくない。


 俺に渡すくらいなら修復費用に使ってほしいし。


 そうなってくると、他に思い浮かぶのは技術や知識。


 何か俺の知らないことを教わる、なんていうのはどうだろう。


 これなら相手側の物理的負担は少ない。うん、いいんじゃないだろうか。


 となると、後は何を教わるか、だ。


 この村は狩りを生業とするそうだし、そういった技術なんていいかもしれない。


 モンスターの倒し方。探索方法。武器の扱い。色々と思い浮かぶ。


 全く別方向から考えるなら、料理というのも有りだ。


 俺は料理ができない。


 こういった機会に簡単な料理を教わるのも悪くない気がする。


 う〜ん、今度は選択肢が増えすぎて迷うな。


 何がいいかなと考えていると、また村長とオレリアさんが言い争いを始めてしまう。


 何を騒いでいるのかと思えば、俺が決めあぐねているのが原因だった。


 二人の口論はヒートアップし、つかみ合いに発展してしまう。


 これはまずいと止めに入ろうとした瞬間、オレリアさんが村長に向けて手をかざす。


「あー! 村長であり、祖父であるワシに向けてオレリアが魔法を撃とうとしてるぅ! 魔法は人に向けて撃ったらいけないんですぅ〜!」


「その言い方……むかつく……」


「それだ!」


「「何が!?」」


 俺が急に“それだ!”と叫んだものだから、驚いた二人がこちらへ振り向く。


 ほぼ同時、さすが祖父と孫と思えるほどのシンクロぶりであった。


 この二人、どこか似ているなと思ったら家族だったのか。


 一人納得した俺は二人へ向けて、提案した。


「オレリアさん、俺に魔法を教えてください。お礼は魔法の指導ということで、どうでしょう?」



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