330 今後の予定調整するも、まさかの事態に!?
それを見届けた俺たちは、夕食の準備のため客間を出てキッチンへと向かう。
今日は作りおきしたものを使って手早く済まそう。
「ドミニクさんは普通に食べても大丈夫かな……」
何日漂流していたか分からないし、がっつり肉とか食べても大丈夫だろうか。
「お粥の方が、いいのでは?」
「そうしますか」
フローラさんのアドバイスを受け、ドミニクさんの夕食はお粥にする。
しばらく食べていなかったのなら、胃に優しいものの方がいいよね。
というわけで、さっとお粥を作り終えた。
ついでに出来上がったお粥に癒やし効果スキルを注いでおくか。
「……あれ?」
が、うまくいかなかった。
てっきり何でも注げると思っていたが、どうやら違ったみたいだ。
改めて他の食材にも試してみたが、うまくいかない。
色々と試してみた結果、俺が出した餅類にしか注げないことが分かった。
今まで餅に注げれば何とかなっていたので、全く気づかなかった。
俺が餅人だから餅との親和性が高く、癒やし効果スキルを注げたってことなのか?
残念だが、お粥は普通のものを提供するしかない。
癒やし効果を注いだ餅はしばらくお預けだ。
お粥もできたので、ドミニクさんを呼び、皆で夕食となった。
食事中、肉も食べてみるかとドミニクさんに尋ねてみる。
すると、遠慮しておくと返事が返ってきた。
元気そうに見えるが、やはり体調は本調子ではないようだ。
夕食を終え、お茶で一服。
落ち着いた雰囲気になったので、俺はドミニクさんに話を切り出した。
「ドミニクさん」
「何でしょう?」
「明日、俺とイリスの街の治療院へ行きましょう。そこで看てもらえば、何か分かるかもしれません」
ここは無人島だから何もない。これ以上ここにいても仕方がない。
街の治療院に行けば、記憶を取り戻す手がかりが得られるかもしれない。
それが駄目だったとしても、街に行けばドミニクさんを知っている人と出会える可能性もある。
無人島にいるより、街に行った方ができることが増えると思うんだよね。
しかし、俺の言葉を聞いたドミニクさんは首を横に振った。
「……いえ、行かないです。……これ以上街に近づいてはいけない気がします」
額に手を当てたドミニクさんは苦しそうに話す。
「街に行きたくないということですか?」
ドミニクさん自身も自分が話していることに確証がないせいか、聞いているこちらも意味を図りかねる。
行きたくない理由がはっきりすれば対策も打てるが、何か思い出せないだろうか。
「人には会いたいのですが、人里には近づきすぎてはいけないと感じてしまうようです」
「それは……」
ドミニクさんの言葉を聞いて真っ先に考えてしまったのは犯罪絡み。
何か法を犯していて、無意識に拒否反応が出ているとかなのか?
でも、ドミニクさんは悪人のようには見えないんだよな。
人には会いたいようだし、はっきりしないな。
何が別の理由があるのだろうか。
「とにかく、これ以上街に近づきたくないと感じています。ですが、どうにかして人に会いたいという気持ちがあるんです」
「人というのは、特定の人物なんですか?」
知り合いや家族に会いたいということなんだろうか。
名前が思い出せるなら、捜してきてもいいけど。
「いえ、そんな感じではありません。でも、誰でもいいといった感じでもないです」
ドミニクさんが会いたいのは、特定の人物ではないと言う。
でも、人なら誰でもいいというわけでもない。
ということは何かに所属する人、何かに関係する人といった感じだろうか。
「私たちでは、ダメなんですか?」
今までの会話を聞き、フローラさんが尋ねる。
会いたい人というのが俺たちでも問題ないなら、記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないけど。
「どうでしょう? ……分からないです」
ドミニクさんは俺たちの方を注意深く見るも、首を振る。
会いたい人の詳細が分かれば、会わせてあげられるんだけどな。
「ドミニクさんは、自分が人に会って何がしたいんだと思いますか?」
誰に会いたいのかがはっきりしないなら、会って何をしたいのかを聞いてみる。
が、俺の問いにドミニクさんから返答がない。
頭を押さえ、辛そうな表情になっている。
これはいけない。少し話しすぎてしまったかもしれないな。
「……すみません、少し疲れてしまいました」
顔には汗が滲み、疲労の色が窺えた。
これ以上会話するのは難しそうだ。
「こちらこそ、質問攻めにしてすみません。今日はもう休みましょうか」
「そうさせてください」
「街の治療院へ行くのはやめにしますので、ゆっくり休んでください」
「ありがとう」
ドミニクさんはそういうと、ゆっくりと立ち上がる。
俺はドミニクさんに付き添い、客間へ送った。
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