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328 人命救助するも、とんでもない事態に!?

 

 俺は慌てて倒れている人に駆け寄る。



 砂浜まで引っぱり上げ、絡みついた海草を取り除くと苦しそうにする顔が露わとなった。


 顔が分かったことで、その人が男性だと判明する。


 年齢は五十から六十くらいだろうか。


 流れ着いた男は日の光を感じたのか、ゆっくりとまぶたを開けた。


 男は側にいる俺に気付き、視線を向けてくる。


 呼吸はしているし、意識もハッキリしているようだ。


「……うう」


 軽く呻き声を上げた後、苦しそうに顔を歪める。


 心肺蘇生の必要は無さそうだし、こういう時は何をすればいいんだろう。


「ゴホッ、ガハッ!」


 俺が逡巡している間に、男はむせるように咳き込むと、大量の海水を吐き出した。


「俺が分かりますか? 声は聞こえますか?」


 背中を擦りながら、問いかける。


「はい……、なんとか」


 男は朦朧としながらも、しっかりと受け答えができた。


「なんでここに? 船から落ちたんですか?」


 この無人島は街から遠いし、泳いで来れるような場所ではない。


 服装も普段着だし、水着ではない。何があったのだろう。


「そもそもここはどこなんですか? なぜ私は濡れているのでしょう」


 俺の質問を受け、男が質問を返してくる。


 溺れていたわけだし、混乱しているのかもしれない。


 今の状況を理解してもらうためにも、詳しく説明した方がよさそうだ。


「ここはイリスの街から離れた無人島です。濡れているのは海水に浸かっていたからです。貴方は砂浜に流れ着いたんですよ」


「無人島……、海……。そうだったんですか」


 男は俺の言葉をかみしめるように繰り返し、頷く。


 ひとまず体調に問題は無さそうだ。


 少し休めば、気の動転も収まるだろう。


「ここへ着く前は、どこにいたか覚えていますか?」


 どこから来たか覚えていれば、そこへ送っていくことができる。


 関係者が心配しているかもしれないし、体調が回復したら船で連れて行ってあげよう。


「ここへ着く前? ………………どこだろう。思い出せない」


 男はこめかみに手を当てて必死に思い出そうとしていたが、答えが見つからない様子だった。


「貴方自身の名前は分かりますか?」


 場所が分からないなら、もっと身近なことから。


 というわけで、名前を尋ねてみた。


「名前……。名前は……ドミニク。ドミニクです」


 ドミニクさんは腰に差している剣に気付いた後、思い出したかのように名乗った。


「記憶が混乱しているみたいですね。少し休みましょう。俺の家まで案内しますよ」


「ありがとう」


 俺はドミニクさんに肩を貸し、家に向かうことにした。


 一応ドミニクさんの体を支えているが、ふらついているわけではない。


 割としっかり歩けているが、念のためだ。


 この調子なら、少し休めば色々と思い出してくるだろう。


 …………


 家に案内し、風呂に入ってもらい飲み物を提供。その後、客室へ案内した。


 しばらく休んだ方がいいと説明し、横になってもらう。


 その後、ミミとフローラさんに合流し事情を説明。


 三人で家へ戻った。


「その人は、大丈夫なんですか?」


「今は寝ています。自分一人で歩けるし、風呂も入っていたので、元気なことは元気なんですよ」


 フローラさんにドミニクさんの具合を問われ、答える。


 ドミニクさんの体調は、それほど悪いわけではない。


 海に流された影響で体力を消耗しているものの、会話なんかはしっかりとできた。


 しかし、問題もある。


「でも、名前以外覚えていない、と」


「はい。相当真剣に考え込んでいたんですが、何も思い出せないみたいですね」


 ドミニクさんは記憶喪失になっていた。


 名前は思い出せたが、それ以外は全く思い出せないのだ。


 無理に思い出そうとすると頭痛がするらしく、途中で止めさせた。


「それは困りましたね」


「目が覚めたら、街の治療院に連れて行ってみますよ」


 素人の俺ができることはこの辺りが限界。


 後は専門の治療院で看てもらった方がいい。


 記憶喪失が相手では、癒やし効果スキルもさすがに効かないだろうしね。


「治療院でも、記憶を取り戻すのは難しいかもしれないです」


 俺の案を聞いたフローラさんが眉根を寄せながら答えた。


「そうなんですか……。参ったな」


 治療院でも回復は難しいのか。


 だけど、何か治療に繋がる手がかりが得られるかもしれない。


「あれ、ミミは?」


 と、ミミの姿がないことに気付く。


 家までは一緒に戻ったのに。




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