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320 船を気に入らないのが、とんでもない理由だった!?

 

 ミミは強烈な水飛沫を上げて、プールの中をグルグル回っていた。



 浮き輪が気に入ったのか、とても楽しそうだ。


「それじゃあ、海に出ますか」


『はい!』


「お疲れ、さまでした」


 今日の水泳教室は、これにて終了。


 明日は海に慣れる練習かな。


 もっと時間がかかるものと思っていたが、明日には訓練自体が終わってしまいそうな勢いだ。


 そんな事を考えながら、皆で昼食タイム。


 フローラさんにじっと見ているだけで退屈しなかったですか、と尋ねれば、かわいいミミちゃんを見ていたらあっという間に時間が過ぎてしまったという回答を頂く。


 その顔は満足感からか、ちょっとテカテカしていた。


 その後はプールを片付け、アイテムボックスからボートを取り出す。


 都合良く砂浜にいるし、わざわざ港まで行かずにここから海に出てしまえばいい。


「海に出る前に一応予備を作っておくか」


 と、ボートを取り出した後、引っこ抜いた木を何本か取り出す。


 木を材料に錬金術を発動し、予備のボートを三つ作っておく。


 長く使うつもりもないし、木の種類にはこだわらなかった。


 これで壊れても安心。咄嗟の時にも対応できる。


 一連の光景を見たフローラさんは「また怪しげなことを……」とでも言いたげな視線をこちらへ向けてくるが無視しつつ、予備のボートをアイテムボックスへ収納。


 それじゃあ、海に出るとしますか。


「二人とも乗ってください」


 ミミとフローラさんに乗船を促しつつ、オールを取り出す。


『乗りました!』


「準備、できました!」


 二人が乗り込んだのを確認し、俺が最後に乗る。


「よし。それでは、漕ぎますよ〜」


 オールをセットし、準備完了。


 早速、ボートを漕いでみる。


 オールを使うのは初めてなので、うまくいくか不安だったが、問題なく前進してくれる。


 ミミの水泳習得方法に倣って、力技でねじ伏せてから、細かい部分を微修正していく。


 うん、いい感じだ。


『わあ、前に進んだの!』


 ボートが進んだ事に喜ぶミミ。


 しかし、俺は納得がいかなかった。


「うーん……、ちょっとタイム」


 一旦漕ぐのをやめ、停止する。


「戻るんですか?」


 俺の行動が気になったフローラさんが尋ねてくる。


「いや、オールが小さすぎるなと思って」


 買った際、付いてきたのは普通サイズのオールだった。


 別に子供用というわけではない。


 だけど俺が使うと、どうにも小さい気がする。


 手応えが無さ過ぎて、漕いでいる感じがしないのだ。


 それが返って漕ぎにくい。


 もう少し大きい方がしっくりきそうなんだよな。


「え……、オールにサイズなんてないですけど……」


 と、疑問顔になるフローラさん。


 まあ、オールは体格にあわせて選ぶものじゃなく、船の大きさで決まるだろうしな。


「とりあえず、木を出してっと……。よっと」


 俺はアイテムボックスからプールを作る時に余った木を取り出し、海に落とした。


 それを錬金術でオールに加工する。


 サイズとしてはご飯屋さんの立て看板に相応しいくらいの大きさにした。


『おっきいしゃもじ!』


「ううん、これで船を漕ぐんだよ」


 ミミの言葉に首を振りながら、オールだと答える。


『ご飯はよそわないの?』


「これだと土鍋に入らないからね」


『そっかぁ』


 その食いしん坊な発想はかわいいけど、これでご飯はよそえないぞ。


「それを、どうするんですか?」


「これで船を漕ぐんですけど」


 船を漕ぐと説明したばかりなのに、何に使うかとフローラさんに問われてしまう。


「えぇ……」


「それじゃあ、行きますよ」


 普通のオールをアイテムボックスにしまい、巨大しゃもじをセット。


 これで、さっきより手応えがある筈だ。


 俺は感じを掴むようにゆっくりとオールを動かした。


 大きさに慣れ、普通に動かせるように感じた瞬間から漕ぐ力を強めていく。


 巨大なしゃもじのせいで強烈に水飛沫が上がるが、速度は抜群。


 体感だとテリーさんに乗せてもらったモーターボートより速度は出せている感じだ。


 そうそう、こういう感じで漕ぎたかったのだ。


 これならあっという間に目的のポイントまで着けそうである。




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