表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/322

32 捜索開始! ミミが重要な手がかりを発見か!?

 

 凄まじい勢いで景色が変わり、山が近づいてくる。


 後方を見れば、足を動かすのに合わせて、土煙が激しく舞い上がっていた。


 こちとらレベル99だ。身体能力の高さは折り紙つきなのである。


「一応予想通りの結果だけど、実際に走ってみると驚くな」


『わぁー♪ 速い速い!』


 流すように走り、山頂へと到着する。


「中々の見晴らしだな」


 高所から見下ろし、地図と目的地を照らし合わせる。


 周囲は似たような山が多数あるため、ここは慎重に見ていく必要がある。


 じっくりと見定める中、村のようなものが見えた。


「へぇ、あんなところにも人が住んでいるのか」


 王都とタマリの街しか見た事のなかった俺にとっては、小規模な村を見るのは初体験。


 壁のように厚い木の柵は崩れ、中の家屋が見えるもボロボロだった。廃村なのだろうか。


 何かの目印になるかもと村を記憶しつつ、地図と景色の間を視線で往復。


 しばらくして、目的の山を発見する。


「多分あれだな」


『あの山に行くの?』


「そうだよ。また走るから掴まっていてね」


『うん!』


 ミミが身構えるのを確認した俺は目的地へ向けて山を下った。


 しばらくして、依頼のポイント近くへと到着する。


 匂いを嗅いで探ったり、気配を探知したりするスキルでもあれば便利なのだが、俺はそんなスキルを持っていない。ここからは地道に探すしかない。


 もう走らないので、ミミには元の大きさに戻ってもらう。


 ここからは二人で森を散策、もとい、捜索を開始する。


 周囲に何か痕跡が残っていないか、視線を巡らせながら、ゆっくりと歩く。


 俺の隣では、ミミが真剣な表情で探してくれている。


 そして、『マスター、見て!』と、どんぐりを拾ってきてくれた。


 うん、捜索は順調に進行中だ。


 どうもこの辺りは倒木が目立つ。嵐でも通り過ぎたかのように、荒れていた。


「お、湧き水だ」


 しばらく歩き回り、水が湧いている場所を発見する。


 大きさは水溜まり程度だが、澄んだ水が溜まって泉になっていた。


 もしかしたらギュスターブさんたちは、この辺りで休息をとったのかもしれない。


「あら、冒険者さん?」


 泉を見ていると、背後から声をかけられる。


 振り向くと、女の人がこちらを見ていた。


 雪のように透き通った白い肌に、青みがかった銀色の長髪が映える


 なんとも涼しげな雰囲気を漂わせる女性だった。


 手には籠を持っており、中にはキノコが沢山詰まっていた。


「はい、まるもっちーと言います」


 自己紹介し、ぺこりと頭を下げる。


「ご丁寧にどうも。私はオレリアよ。依頼?」


「はい、死骸運搬の依頼です。といっても、依頼のモンスターを捜索中で、まだ運んではいないんですけどね」


「そうだったの。私は近くの村からキノコ採りに来てたのよ」


「大漁みたいですね」


「ええ、今から帰るところ」


「トレントの死骸を探しているのですが、この辺りで見かけませんでしたか?」


 この辺りに住んでいるなら、何か知っているかもと聞いてみる。


「ううん、見てないわ。村の人がモンスターの死骸を村に運び込んだりしているのも見ていないから、まだ誰も見つけていないと思う。そのまま残っているんじゃないかしら」


「そうだといいんですけどね。もう少し探してみます。ありがとうございました」


「見つかるといいわね。だけど、ここからはなるべく早く離れた方がいいわ」


 と、オレリアさんに忠告を受ける。この辺りは危ない地帯なのだろうか。


「何かあるんですか?」


「昨日、ラッシュボアの群れが現れたのよ。多分、ブラックドラゴンから逃げて来たんじゃないかしら。そのせいで、村はボロボロ。私は食料探しってわけ」


「もしかして、あの辺りにある村ですか?」


 俺は、山頂から見下ろした時に見つけた村があった方を指差して尋ねた。


「そうよ。来る途中で見えた? 家や畑が荒れちゃって大変なのよ。もし、持ち帰れないくらいモンスターを倒したら、おすそ分けしてね。それじゃあ」


 と、冗談めかしに言うとオレリアさんは去って行った。


 俺は彼女を見送ると、トレントの死骸捜索を再開する。


 泉から離れ、しばらく歩いた所で開けた場所に出た。


「見つけた……、あれだ」


 そこで目当てのトレントの死骸を発見する。


 トレント、でっかい木のモンスターだ。


 木材として利用され、非常に需要が高い。


 害獣のくせに、高級木材の待遇という不思議な存在。


 ざっと見渡すと、剣で斬られた跡や、矢が刺さっている死骸が十体。間違いない。


 近づけば、討伐証明部位が取り除かれていた。


 俺は、トレントの死骸をアイテムボックスへと収納する。


「よし、これで後は帰るだけだな」


『お仕事、終わったの?』


「うん、うまくいったよ」


『やったー!』


 万歳するミミに笑顔で応えながら、帰ろうと立ち上がる。


 すると、急に辺りが薄暗くなった。


 何事かと思えば、巨大な影が差し込んだせいだった。


 影の正体は巨大なモンスター。俺の正面に立ちふさがる形で、巨大な猪が現れたのだ。


 軽トラほどの大きさの猪は、鼻息荒くこちらを睨んでいた。


 お互いの視線が交差し見つめ合う中、新たな猪が次々と現れる。


「多分、こいつらがラッシュボアなんだろうな……」


 見た目はうり坊のように可愛らしい。


 そんな外見に反するように、突出した二本の巨大な牙が凶悪さを醸し出す。


 巨大で気性が荒そう。群れと呼ぶにふさわしい頭数。ついさっき聞いた話と合致する。


 鑑定スキルを使ってみると、ラッシュボアと出た。


 うん、やっぱり正解だ。


 ……さて、どうしよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ