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3 驚愕! 俺の体がとんでもない事態に……!


 だが、言われてみると、二人の言うとおりなのだ。


 俺自身の体感としても、着ぐるみを着ている感覚がない。


 まるで自分の体を動かしているかのように、違和感がない。


 異世界召喚という異常事態に遭遇し、着ぐるみを脱いだ格好でいると勘違いしていたのだ。


 そのため、今の今まで何も気付かなかった。


 本来なら着ぐるみを着た状態なのだから、視野が狭く、音が聞こえにくく、動き辛く、暑苦しいのが正しい。そうでなければおかしい。


 だが今は風呂上りのようにスッキリ爽快だったりする。


「異世界に召喚されて気が動転していたのは俺の方だったのか……」


 今更ながらに、異常事態に直面していることを痛感する。


「試しに鑑定スキル使ってみたけど、転移失敗者って出ますね」


「マジだわ……。うお、名前も“まるもっちー”って出るっすよ?」



「え……、さっきも自己紹介したけど、俺の名前は茄子畑なんだけど……。か、確認してみるわ……」


 二人に言われ、自分に対して鑑定スキルを発動してみる。


【名 前】 まるもっちー

【種 族】 餅人

【レベル】 1


【膂 力】 11

【魔 力】 11

【体 力】 11


【クラス】 なし

【称 号】 転移失敗者


【固有スキル】


 鑑定 自動翻訳 特殊アイテムボックス 

 餅 癒やし効果


【スキル】


 なし



 ――うん、突っ込みどころ満載だな。


 自分が茄子畑紫郎と識別できる情報が一切載っていない。やばいわ。


「本当だ。どうなってんだ……これ?」


 ついさっき国宝の魔道具で鑑定された時に、よくこれで何一つ疑問を感じなかったものだ。


 転移失敗者の部分や二人より能力値が低いことばかりに目がいって、他まで気が回っていなかった。


 異世界転移だな、などと余裕をかましていたつもりが、相当混乱していたようだ。


 三人でそれぞれのスターテスをじっくりと見て比較した結果、共通点があった。


 固有スキルの欄にある鑑定、自動翻訳、特殊アイテムボックスは鷹村君と富士原さんも使えたのだ。


 きっと、転移される者が共通で持っているスキルなんだろう。


 鑑定は、対象を設定して発動すると物の名前と簡単な説明が出るスキル。


 自動翻訳は、この世界の言葉や文章を分かるようにしてくれるスキル。


 特殊アイテムボックスは、容量と個数無制限かつ時間停止した状態で、異空間に収納できるスキル。


 異世界転移初心者三点セットみたいな感じである。


 つまり、ここまでは普通。


 異常なし、というわけである。


 残念ながら俺のステータスは、それ以外の部分が色々とおかしい……。


 まず、名前の部分がまるもっちーとなっていた。


 しかし、俺の名前は茄子畑紫郎。決してまるもっちーではない。


 まるもっちーというのは、俺がバイト時に着用していた着ぐるみの名前であり、餅月市公認のゆるキャラの名前だ。


 全体的にぽてっとした身体つきで、全身が真っ白のクマっぽいデザインのゆるキャラ。


 かわいいと評判で、色々とグッズも出ている人気者だ。


 それがなぜ、俺の鑑定結果の名前の欄に載っているのか。


 種族も餅人という徹底振り。匠もびっくりのこだわりだ。


 キャラクター性を大事にすることは素晴らしいと思うが、時と場合を選んで欲しい。


 更に固有スキルの欄には、餅と癒やし効果なる謎のスキルが記載されていた。


 勇者である鷹村君と富士原さんの二人は魔断剣や魔絶盾というような、それっぽいのが並んでいるのに、なぜ俺の欄には餅がへばりついているのか……。


「ねえ、これってあれじゃない? 前、深夜に二人で見た古い映画の……」


「ああ! あれか!」


 俺が自身のステータス欄に頭を悩ませていると、鷹村君と富士原さんが以心伝心で通じ合う様を見せ付けられてしまう。


 隙あらばイチャイチャ。これが……、カップル!


 二人ほど通じ合えていないため、蚊帳の外に居た俺は「え、何?」と、つい尋ねてしまう。


「知らないっすか? 昔の映画で、転送装置の実験中にハエが入り込んで、人がハエ人間になっちゃうやつ」


「そうそう、はじめは凄い能力に目覚めて喜んでるんだけど、段々ハエ化していくんだよね〜」


 正解を言い当てたみたいで気持ちいいのは分かるけど、その状況に直面しているかもしれない人間の前で嬉々として言わないでくれ。



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