292 到着、イリスの街!
街道を軽快に走り、あっという間に街に到着。
海が近いせいか、吹いてくる風に乗ってほのかに潮の香りがした。
街の門の前に到着し、フローラさんを降ろす。
「着きましたよ。立てますか?」
「は、はい……。凄く速いんですね」
「走るのは得意なんですよ。じゃあ、手続きしますか」
俺はフローラさんに話しかけながら、門の番をする衛兵の下へ向かう。
「すみません。初めてこの街に来たので、手続きをしたいのですが」
「ようこそ、イリスの街へ。身分証の提示と、入街料の支払いをお願いします」
「はい、お願いします」
衛兵の言葉に従い、ギルドカードを提出し、料金を払う。
「確かに。どうぞお通りください」
手続きが滞りなく終わり、通行の許可が下りた。
その隣で、フローラさんが何もせずに門を通っていく。
「あれ、フローラさんは手続きしなくてもいいんですか?」
街に住んでいる人でも、門を潜る時は手続きが必要だ。
冒険者ならギルドカードを提示しないといけない。
無理に通ろうとすれば、衛兵に止められてしまうのでは……。
「ああ、彼女は顔パスなんで大丈夫ですよ」
と、思ったら衛兵から説明があった。
「へえ、そうなんですか」
毎日通っているから、手続きが免除されているとかなのか?
もしくは生まれ育った街なら、手続きが簡略化されるのかな。
こういう展開は初めてだな。
「そ、そうなんです。私は特別扱いが好きではないのですが」
こちらの会話を聞いていたフローラさんが愚痴っぽく呟く。
ん、誰でも顔パスってわけでもないのか?
まあ、気にするほどの事でもないか。
「それじゃあ、ギルドまで行きましょうか」
門を潜り、農地に入る。
「ということは、もしか、して……」
「じゃあ、行きますよ」
「やっぱり!?」
察して後すさるフローラさんを横抱きにし、再度走り出す。
イリスの街は他の街と比べ、農地が小さいように思えた。
これなら俺以外でも駅馬車を利用せずに住宅街へすぐ着きそうである。
ゆったりと走っている間に第二の門に到着し、住宅街へ入る。
夏の海を連想させる爽やかな服装の通行人の間を抜け、ギルドを探す。
色々な街を巡った結果、冒険者ギルドなら一目で分かるようになった。
特徴的な建物なので、この街でも簡単に探せそうである。
どこにあるだろう、と周囲を見渡しながら走っているとギルドを発見。
驚きの表情で固まるフローラさんを抱えたまま一気にギルドに到着する。
目的地に着いたので、未だ放心状態が抜けないフローラさんを降ろす。
「ありがとう、ございました。あっという間でした」
「いえいえ。それじゃあ、俺はこれで失礼しますね」
『またね!』
目的地は一緒だったが、やることは違う。
ここでお別れだな。
挨拶を済ませた俺とミミは、受付で手続きしようとフローラさんに背を向けた。
「すみません!」
が、フローラさんが俺の正面に回りこみ、呼び止めてきた。
「は、はい?」
「弟子に、してください!」
俺が言葉の意味を理解しようとする間に、素早い動きで直角に頭を下げられてしまう。
まさか弟子にして欲しいと言われるなんて思わなかった。
でも俺に教えられることなんて何もない。
彼女には悪いが、ここはしっかりとお断りしよう。
「ごめんなさい、そういうのはちょっと……」
「そう、ですか……」
「教えられるようなこともないので……。すみません」
俺のこれまでの冒険者ライフは独特すぎる。
弟子をとっても、相手の成長に役立つことを教えられる自信が全くない。
できれば何かしてあげたいけど、逆効果になりそうな気がしたので断った。
「こちらこそ、無理を、言って、ごめんなさい」
「それじゃあここで。依頼、頑張ってください」
「はい! ありがとう!」
『バイバイ!』
俺は改めて別れを告げ、その場を後にした。
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