29 宿屋にモンスター出現! とんでもない事態に!
俺はタオルケットで覆うようにして、ミミの頭に被せた。
『わぁ〜、フワフワだね!』
「これを羽織って寝るといいよ」
ミミは俺と一緒に寝たがる。そこでちょっとした問題が発生した。
それは体格差。俺の体が大きすぎて、ミミと布団の間に隙間ができてしまうのだ。
街に来るまでは物がなかったので、何も羽織らずに野宿していた。
そのため、今まで気づくことすらなかった。
昨日宿に泊まって初めて気づき、これは何とかせねばとタオルケットを購入したのだ。
『ありがとう、マスター! 嬉しいの』
ミミがタオルケットを被ったまま飛び跳ねる。
「よし、これで気持ちよく眠れそうだな」
『はーい!』
今日一日のことを振り返った俺は「おやすみ」と言いながら布団をかぶる。
するとミミもタオルケットにくるまり、『おやすみなさい』と返してくれる。
二人揃って就寝。楽しい一日だったと振り返りながら、目を閉じた。
――そして翌朝、宿を出る際に問題が発生した。
ミミがタオルケットを気に入りすぎてしまって、手離さないのだ。
こ、困った。
「ミミ、タオルケットは片付けようね」
『このままで行くの』
タオルケットにくるまり、お化けのようなスタイルのミミが真剣な表情で答える。
「ええ……、しまっておこう?」
『や』
もこもこスタイルで頑なな姿勢を見せるミミ。
く、手強い……。
「えらく気に入っちゃったみたいだな」
『マスターにもらったタオルケットなの。フワフワなんだよ』
タオルケット自体も気に入ってくれたみたいだが、俺があげたという事実が非常に嬉しいようだ。それは俺にとっても嬉しいことなんだけど……。
「そんなにくるまらなくても」
『準備できました!』
ミミが元気一杯に告げる。
どうあっても脱ぐつもりはないらしい。
キリリとした真剣な表情からは、強い意志を感じる。
完敗だ……。
その内飽きるだろうし、それまでは好きにさせておくかと、諦める。
「わかったよ。今日はそのままでいいから、明日からはしまおうね?」
『うん』
頼むと、明日以降は羽織らないことを約束してくれる。
基本的に聞き分けがいい子なので、こういった強情さを見せるのは珍しい。
よっぽど嬉しかったのかな。
仕方ない、今日はぐるぐる巻きのミミと行動だ。
…………
というわけで、冒険者ギルドへ向かう。
ギルドで、採取しておいた薬草を提出して依頼を達成。
受付では、タオルケットにくるまったミミがシモーヌさんに大好評。手を振る姿が昨日と違って、これもいい、などと言われてしまう。
依頼達成後、その足で素材買取所へ向かう。
中に入ると、待ちかねたという表情でハンスさんが声をかけてきた。
「おい。さっさとこっちへ来い。解体は終わってるぞ」
「おはようございます。それで、結局いくらくらいになりそうでしょうか」
「合計で金貨八百十四枚だ。詳細を説明していくぞ。クリムゾンタイガーは骨、牙、爪、皮、肉、内臓、魔石に解体して金貨百七十六枚。スカルサーペントは骨、牙、皮、肉、毒袋、魔石で金貨二百十一枚。パイコーンは角、骨、皮、肉、内臓、眼球、魔石で金貨二百三十四枚。オルトロスは骨、牙、皮、肉、火炎袋、魔石で金貨百八十三枚。ブルーエイプが骨、爪、皮、肉、尻尾で金貨五十四枚。ジャイアントフォックスは骨、牙、皮、肉、内臓、尻尾で金貨四十七枚。合計で金貨九百五枚。そこから解体費用を引いて八百十四枚。それがコレってわけだ。素材別の価格はこっちに記載してある。確認してくれ」
ハンスさんがお金が入った袋と明細を渡してくれる。
早速袋を開けて、金額を確認する。
「おお……。これが魔銀貨ってやつですか?」
金額が高かったため、支払いの一部が魔銀貨になっていた。
魔銀貨、煎餅のような大きさで青銀に輝く不思議な金属だ。
これ一枚で金貨百枚になる。
「そうだ、初めて見るか? ミスリルの硬貨だ。それとも全て金貨で渡した方が良かったか?」
「いえ、大丈夫です」
カウンターに置かれた複数の魔銀貨を見て、ごくりと唾を飲み込んでしまう。
一気に大金が手に入ってしまった。
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