26 ギルドで昼食。そのメニューにとんでもないものが……!
冒険者ギルド内には飲食スペースがある。今日はそこで昼食を取ることにした。
メニューは簡単に調理できるものが多く、出来上がるまでの待ち時間が少ない仕様になっていた。
手早く済ませたいときや、疲れて店を探す気力がないときに重宝しそうだ。
カウンターで注文の品が載ったトレーを受け取り、空いている席に座る。
「……まさか、こんな物まであるとはな」
『マスター、これなぁに?』
「これはハンバーガーとポテトチップスだよ」
ミミに聞かれ、頼んだ品を答える。
異世界とは思えないラインナップである。
ポテトチップスを食事にカウントしてもいいか迷うところだが、ある国ではピザが野菜にカテゴライズされるらしいし、まあいいだろう。
早速食べてみる。
「……う〜ん、期待しすぎたか?」
ハンバーガーの味は微妙だった……。
形は似ているが、味は想像していたものと随分違っていた。
パンは固くてボソボソ。
肉は塩のみ味付け。ピクルスではなく、塩漬け野菜が挟まっている。
ケチャップやソースの類いは付いていない。
ハンバーガーというより、肉サンドだった。
悪くはないが、想像していたものとの落差を感じ、がっかりしてしまう。
食べ応えのあるパテに、ふわふわのバンズ。ケチャップやピクルスの酸味が味を引き締め、レタスのシャキシャキ感が食感を楽しませる。
そういうのを想像していたんだよなぁ。
気を取り直し、ポテトチップスを食べてみる。
咀嚼するとパリッと小気味良い歯応え。適度に効いた塩味。こっちは元が単純な料理だけに想像通りの味。むしろ揚げたてで想像以上に旨い。これは当たりだ。
ミミにもポテトチップスは好評で、『これ、おいしい〜』とパクパク食べている。
二人で一気に平らげてしまったので、おかわりを注文して食べた。
昼食を食べ終えた後は、モンスター素材の買取所へ向かった。
基本的に依頼の処理は、シモーヌさんが居た総合受付で行う。
モンスターの討伐依頼に関してもそうだ。
討伐依頼は、それぞれのモンスターに設定された討伐証明部位を提出することで達成となる。
モンスターによっては、かなり巨大な個体もいるので、そういうシステムになっている。
わざわざ倒したモンスターを持ち帰らなくてもよいのだ。
だが、モンスターの肉は食えるし、牙、皮、臓物なんかは武器、防具、薬になるため、血液を含めた全てに需要がある。また、モンスターには魔石なるものが体内にあり、それも需要がある。
そのため、そういった物を持ち帰れば、依頼とは別枠で買い取ってもらえる。
それらの買い取りを行っているのが、モンスター素材の買取所。
中には一匹丸まま持ち帰ってくる冒険者もいるため、解体もしてくれる。
現在、俺のアイテムボックス内には、この街に来るまでに倒したモンスターの死骸がいくつか入っている。
さすがにブラックドラゴンは出せないが、ミミを襲っていたサーベルタイガーみたいな奴なら、大丈夫だろう。
倒しはしたが、鉄級の俺では討伐依頼を受けることができない。だが、素材を買い取って貰うことはできる。なら、売ってしまえ、というわけである。
素材の買取所は別棟になる。
解体作業をすると、どうしても臭いが発生してしまうので、冒険者ギルドから少し離れた位置にあった。
中に入ると、肉屋の倉庫と呪術道具を扱う店を足して二で割ったかのような怪しい雰囲気の内装となっていた。
俺は受付にいるスキンヘッドの男に話しかけた。
「ここに来るのは初めてなんですが、素材買い取りの受付はここですか?」
「おう。素材だけか? 解体込みか?」
「解体込みでお願いします」
「分かった。俺はハンス、ここを仕切っている。適当な物を持ってきても、誤魔化せないからな?」
「まるもっちーと言います。よろしくお願いします」
「解体費用は、素材の買い取り価格から引かれることになる。だから、あまり安いモンスターや需要がないものだと、マイナスになる。そのときは解体前に言う。で、モノはどこだ? 仲間がここへ運んでいる最中か?」
「いえ、アイテムボックスに入っています。今出しますね」
俺はアイテムボックスからサーベルタイガーもどきの死骸を出し、カウンターに置いた。
「……うお、クリムゾンタイガーじゃねえか。牙も爪も損傷なし。皮も頭部以外無傷。しかも、今死んだかのような鮮度。極上の状態だ……」
「幾らくらいになるんでしょうか?」
軽く石を投げつけただけで死んだ弱いモンスターだ。
どうせ安いだろうと鑑定すらしていない。
買取価格は、あまり期待できないけど、初めに出すならこれくらいでいいだろう。
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