表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

251/415

251 絶体絶命! とんでもない状況に……!

 

「ッ!? あいつ何やってやがる!?」


 なんと、ラッシュボアに対峙するように、ちんちくりんが身構えていたのだ。



 ラッシュボア相手にあんなちっこいのが勝てるわけがねえ。


 俺はちんちくりんの側まで駆け寄ると、勢いもそのままに抱き上げ、踵を返して駆け出した。


「お前何やってるんだ! 相手が悪すぎるだろ! 死にたいのか?」


 小脇に抱えたちんちくりんに叫ぶ。


 ちんちくりんは言葉の意味が分からなかったのか、俺に再会したのが嬉しかったのか、キャッキャとはしゃいでいた。


 おいおい、どういう状況なのか分かってるのか?


 俺が恐る恐るといった体で振り向くと、案の定ラッシュボアが追って来ていた。


 最悪だ……。


 そもそも湖に着くまで走りっぱなしだったため、体力の限界が近い。


 なんとしてもこいつだけは逃がしてやりたいが……。


 などと考えながら走っていると、前方からレッドウルフたちがやって来た。


 くそ、予想通りの展開じゃねえか……。


 レッドウルフたちはこちらに気づかれないよう、木の陰に隠れながら俺を追跡していたんだ。


 立ち止まった俺は小刻みに首を振って前後を確認しながら、距離を測る。


 前方にレッドウルフ、後方にラッシュボア。


 絶体絶命だ。


 なんとか挟み撃ちを避けようと、横に逸れて走る。


 すると、レッドウルフの群れとラッシュボアが合流し、俺を追ってきた。


 モンスター同士で戦えばいいのに、仲のいいことだ。


 悪態をつきながら走っていると、前方に大きな木が見えてきた。


「おい! そいつに掴まって登れ!」


 俺はちんちくりんを抱え上げ、近くの木の枝へ登らせた。


「そこにいれば多少は時間が稼げる。俺が今からあいつらに飛びかかるから、隙を見て逃げろ。いいな?」


 ちんちくりんは木に登れたのが嬉しかったのか、満面の笑顔だった。


 意味が伝わっているといいんだが……。


 しかし、迷っている暇はない。


 俺は懐から櫛を取り出し、自慢の髪型を整える。


 無駄な動作に見えるが、これをやると落ち着いてくるのだ。


 限界まで追い詰められた今の俺にとっては、どうしても必要な作業だった。


 髪が整うと自然と呼吸も整い、恐怖が薄れる。


「ここは冒険者として、いいところを見せねえとな。行くぜ!」


 剣を抜いた俺はこちらの様子を窺うレッドウルフとラッシュボア目がけて飛び出した。


 モンスターたちの数歩手前で停止し、滅茶苦茶に剣を振り回す。


「うおおおお! こっちに来るんじゃねえ!」


 まともに斬りかかれば、その隙に他の個体が襲い掛かってくる。


 ここは威嚇に徹して時間を稼ぐしかない。


 その間にちんちくりんが逃げてくれれば……。


 剣に反応したモンスターたちは慎重な姿勢を崩さず、じっとこちらを見ていた。


 間合いを計りながら飛びかかるタイミングを窺っているのだろう。


 いい感じだ。そのまましばらくはじっとしていてくれ。


 その間にあいつが逃げてくれれば……。


 そう思った次の瞬間、事態は一変する。


 動きが止まったモンスターたちの足もとから大量の木の根が飛び出し、絡みついたのだ。


 木の根の拘束は強力で、抵抗するモンスターの動きを完全に封じ込めていた。


 そして、コキリという音とともにモンスターたちの首があらぬ方向へと曲がった。


 木の根がモンスターの首を捻ったのだ。


 モンスターたちの目から生気が消え、ダラリと脱力する。


 ――絶命したのか。


 レッドウルフはもちろん、ラッシュボアまで一撃で仕留められていた。


 役目を終えた木の根が地面へと戻り、モンスターたちが力なく地面へ倒れていく。


 一瞬の出来事だった。


「ぇ……」


 俺が呆けていると、トテトテとちんちくりんが前に出て、収納鞄にモンスターをしまっていく。


 ……なんであんなに大量のモンスターが収納鞄に入るんだ。


 高級品なのか?


 いや、いやいやいや。


 そんなことより、あいつがモンスターを全て倒したのか?


 俺が疑問に思っている間に、全てのモンスターが収納され、ちんちくりんがこちらへ駆け寄ってきた。


 くいくいと服の裾を引っ張り、森の出口を指差す。


「あ、ああ、帰るってことか?」


 俺がそう尋ねると、ちんちくりんが元気よく首肯する。


「わ、分かった。帰るか……」


 そう答えるしかなかった。


 なんせ、俺も帰るつもりだったんだ。


 それがモンスターに追われて、森の奥へ逆戻りしただけ。


 帰れるならさっさと帰りたい。


 俺の返事を聞いたちんちくりんは手を伸ばしてきた。


 ん、なんだ?


 やたら手をアピールしてくるな。


「握ればいいのか?」


 手を繋いでやると、嬉しそうに笑う。


 俺はちんちくりんに引き連れられる形で森の外へ向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

   

新連載は、こちらから読めます!

   

   

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ