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236 口論勃発! とんでもない事態に……!

 

 スライムは餅人形を取り込んだ瞬間、まるで沸騰したかのように大量の気泡を発し始める。


 そして、数秒の後、爆散した。



「倒したか……」


 どうやら何とかなったようだ。


 巨大なスライムが爆発した様子は最後尾でも視認できたようで、皆、方向転換して先頭集団に合流してきた。


 負傷者が出なかったことから、一時的にレースの緊張感が解け、弛緩した雰囲気になっていく。


「お預かりしていた魔走車です。どうぞ」


「すまねえな」


 皆が合流していく中で、収納していた魔走車を選手に返す。


 その後、選手全員と相談し、チェックポイント出発時と同じタイム差で随時出発する事が決定した。


 また、起動できなかった魔走車もあったため、整備時間のインターバルを設けてからスタートすることになった。


 皆が調整に勤しむ中、その時間を利用してヴィヴィアンさんとジョゼさんは再び口論を始めてしまう。


「何やってるのよ! 魔走車が溶けちゃったじゃない!」


「ふん、そんなこと見れば分かる」


 腕組みしたジョゼさんが不機嫌そうにそっぽを向く。


 激高したヴィヴィアンさんはジョゼさんに近づくと、おもむろに両肩を掴んで揺すった。


「買い取ってもらうはずだったんでしょ!?」


「死んでしまっては金を貰っても意味が無い」


「そうじゃなくて! あんたがやっと完成させた魔走車だったのに……」


「私はレースに出場していない。私の魔走車を使うのが最善だった」


 ジョゼさんが淡々と答えるたびに、ヴィヴィアンさんの語気が強まっていく。


「大型の魔走車には結界を発動できる機構があるわ! わざわざ貴方が結界を作る必要なんてなかったわよ!」


「魔走車に搭載されている装置では大した大きさの結界は作り出せない。あれだけ大型のスライムだと防ぐことは難しいだろう。だが、私が使った方法であれば一台でも瞬間的に大規模な結界を展開する事ができる。問題があるとすれば、使用した魔走車に負荷がかかりすぎて走行不能になることだ。つまり、あの状況で結界を展開した魔走車はレースの続行が不可能になってしまう。私の魔走車を使うことが最適だったんだ」


「そうかもしれないけど!」


 納得できないけど言葉が見つからないのか、ヴィヴィアンさんは目に涙を浮かべて声を上げた。


「危うく、友人が優勝するところを見逃してしまうかもしれないところだったんだ。魔走車の一台や二台、どうなろうと構わん。ヴィヴィだって、逆の立場だったら私と同じことをするだろう?」


「……それはッ!?」


 ジョゼさんの言葉に、ヴィヴィアンさんが痛いところを突かれたような表情で固まる。


「絶対に私と同じ事をするはずだ。そして、当然のことだと言い切るに決まっている。ついでに言うなら、ここまでしたんだから私に優勝を捧げるのは当然だと嫌みたらしく言うに違いない」


 ジョゼさんが得意気な表情でニヤニヤしながら言う。


 その表情に、一切の曇りはなかった。


 本当に魔走車を失ったことを後悔していないのだろう。


「分かったわよ! 絶対優勝してやるから!」


 ヴィヴィアンさんは浮き上がった涙をグシグシと勢いよく拭き取ると、ジョゼさんに優勝を誓う。


「その意気だ。早く整備した方がいいぞ」


「うるさい! 言われなくても始めるわよ!」


「今は運営の仕事をしているから、公平さに欠けるかもしれない。だが……、応援しているぞ」


「あんたが大事なものを懸けたんだから、それに見合う走りを見せてやるわ」


 二人は話を終え、別々の方向へと歩き出した。



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