233 トラブル発生! とんでもない事態に……!
確かこの辺りに沼があって、コースに水が浸食しないように岩で塞いだのだ。
「ああ、君が補修工事を行った所だね」
依頼が終わった後、夕食の話題にそのことを話していたため、ジョゼさんが察して相づちを打ってくる。
「はい。雨で増水したのかも」
「むう。確かにかなりの雨量ではあったが……」
「あれ、ヴィヴィアンさんの魔走車が止まりましたよ。故障しているようには見えないけど」
ジョゼさんと話しながら進んでいると、先頭を走るヴィヴィアンさんの魔走車が停止するのが見えた。
何かあったのだろうか。
「君が置いた岩の補修跡が見えるから、沼の辺りだな」
と、二人で現状を確認していると、先頭から順に魔走車が止まりだす。
上位グループの最後尾に付けていた俺たちは、近づいてくる景色を見て先頭が止まった理由を理解した。
沼の水が増水し、道が通れなくなってしまっていたのだ。
俺が補修したエリアからはみ出る形で水が漏れ出し、道の上にまで広がってしまっている。
といっても、魔走車なら多少の水たまりなら構わず走行できる。
が、水が溜まった場所は下りと上りでV字のようになっており、そこが池の様になっていた。
あれだけ水深があると、さすがに通れない。
レースは一時中断するしかなかった。
「おい、どうするんだ! 通れないぞ!」
「後続がドンドン追いついて来てるじゃねえか! 順位はどうなる!?」
停止した先頭集団から怒鳴り声が聞こえてくる。
ヴィヴィアンさんは腕組みしたまま黙り込み、水溜まりを凝視していた。
「溜まった水がどの程度の深さか確認してくるよ。なんとか渡れるといいのだが」
状況を見て、ジョゼさんが調べてくれるという。
「ありがとうございます。俺は後続の魔走車が追突しないように知らせてきます」
魔走車に詳しくない俺が行っても、水溜まりを渡れるかどうかの判断は難しい。
なら、二次被害の発生を防ぐように動くのが得策だ。
ついでに現在の順位を書き留めておこう。
俺は続々と停車し始めた後続集団へ向かった。
「なんだ、どうなってる? チェックポイントが変わったのか?」
「この先に増水して通れない場所が出来て立ち往生しています。今、確認中なのでしばらくお待ち下さい」
と、停車して下りてきた選手に説明する。
「そういうことか。急に止まったから何事かと思ったぜ」
話を聞いた選手は意外に冷静だったため、案外すんなり聞き入れてもらえた。
上位グループのように口論にならなかったのはありがたい。
そんなことを考えている間に次の魔走車が近づいてくる。
「止まってくださーい!」
続く魔走車へ向けて合図を送る。
こちらのサインを確認した魔走車が減速し、次々と停車していく。
これでレースに参加している魔走車は全て止まったことになるな。
俺は現在の順位を書きとめ、それぞれの選手に現状を伝えながら最後尾へと向かった。
「……というわけなんです。再開されるまで、しばらくお待ちください」
「分かった。最悪、俺たち全員で水たまりを埋めないといけないかもしれないな」
「そうですね。まあ、その時は考えがあるので大丈夫ですよ」
埋めるとなれば俺とミミの出番だろう。
俺が土砂を運んで埋めるか、ミミに橋を作ってもらえばいい。
一応短時間で出来る自信はあるが、後続が停車していない状態でやるのはさすがに危ない。
ここは全員に周知してから、じっくりといくべきだな。
選手への報告も済んだし、ジョゼさんに渡れるかどうかを聞きに行くか。
そう思って先頭の方へ視線を向けた瞬間それは起きた。
ドオン、という爆発音のような音とともに巨大な水柱が上がったのだ。
現状を把握できず、選手たちが騒然となる。




