231 チェックポイント到着するも、とんでもない事態に……!
「どうしたんですか、ジョゼさん。顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」
表情が優れない。何かあったのだろうか。
「荷物を盗られた。魔石がない……」
「ええ!?」
急いで運営に報告へ行くと、同様の被害が出ていることが分かった。
どれも置き引きにあったらしいが、犯人の目撃情報はゼロ。
盗られた場所、時間帯、荷物の大きさなども不規則。
これは……、以前調査していた置き引きとパターンが一致するぞ。
捕まえようとしていたときは全然ヒットしなかったのに、ここで現れるのか。
「まさか、このタイミングで例の置き引きに遭うとは……」
「何か知っているのかい?」
俺の呟きを拾ったジョゼさんが尋ねてくる。
「ええ。ミルティユの街周辺で発生している謎の置き引きです。ジョゼさんは知らないですか? ミルティユの街の冒険者の間では有名らしいですよ」
「そういえば聞いたことがあるような、ないような。街から出ないから、はっきりと覚えていないな……」
ジョゼさんは置き引きのことを、噂話レベルでしか知らないようだった。
街の外に出ることが少ないのであれば、そういう反応になってしまうかもしれないな。
「かなり犯行を重ねているらしいんですが、誰も犯人を見ていないんです。盗られた物も金額的に見ると釣り合いが取れなかったりして、何が目的の盗みかもよく分かっていないんですよ」
「私の鞄には魔石しか入っていない。なんせお金がないからな……。犯人は魔石が目当てじゃないのか?」
「魔石か。それは試していなかったな……。ちょっと他の盗られた人にも確認してきますね」
ジョゼさんの意見になるほどと頷く。
俺はてっきり金か金目の物。もしくは食料だと思っていた。
魔石も金目の物というくくりで見ていたので、単体として意識していなかった。
さっそくスタッフと置き引きにあった選手へ聞き込みを行う。
すると、ジョゼさんの予想を裏付ける回答を得られた。
「魔石かもしれないですね。皆、レース用に魔石を必要以上に携帯していたみたいです。そのせいで、盗られたどの鞄にも魔石は入っていたそうです」
スタッフに聞くと、今まで開催されたレースでも同様の事件が起きたことがあったそうだ。
ただ、毎回というわけではないので、注意喚起は最低限しか行っていなかったという。
「犯行に気付いてから時間が経つ。今から犯人を追うのは難しいだろうな」
「ですね。残念ですが今はレースに集中すべきでしょう」
もともと捕まえるのが困難と言われていた置き引きだ。
手がかりのない状態で今から捜していれば、明日のスタートに間に合わなくなる。
悔しいが、ここは諦めるしかないだろう。
「私は魔石を持っていかれたのが痛いな。途中で魔走車の魔力が足りなくなる。運営で購入するしかないか……」
「俺のを差し上げますよ。アイテムボックスに入っている物は盗れないみたいですね。選手で盗られた人は運営が補てんしてくれるみたいですよ」
魔石をアイテムボックスから適当に出し、ジョゼさんに手渡す。
「助かる。これで続行できそうだ」
「騒ぎになっていますが、強引に続行するみたいですね」
「うむ、我々も明日に備えて就寝しよう」
「分かりました」
その日はざわついた雰囲気が収まらないままに一日が経過。
翌日を迎えることとなる。




