230 説教! とんでもないことで怒られてしまう結果に……!
「ちょっと、選手を驚かせてどうするのよ。何やってるわけ?」
騒ぎになっていることを聞きつけ、ヴィヴィアンさんが呆れ顔で突っ込んでくる。
うう、申し開きできない。
「す、すみませんでした。でも、明日からも併走します」
依頼なので、どうしようもない。
出場選手の皆さんには慣れてもらうしかないのだ。
「貴方が側を走っていると、本当は大して速度が出てないんじゃないかって、だんだん自信が無くなってくるのよね……」
と、ヴィヴィアンさんがぼやく。
「く……、何もしてないのに扱いがおかしい」
皆からの散々な言われようにちょっとショックだった。
一悶着あった後、受付で報告を行い、明日の予定の打ち合わせを済ませる。
その際スタッフから、他の選手からも俺の事について質問責めにあったと愚痴っぽく言われてしまう。
こっちはごく普通に依頼をしているだけだというのに……。
『マスター、大丈夫? 飴食べる?』
と、心配したミミが撫でてくれる。
「心配してくれてありがとう。飴も残り五つか。どれが美味しかった?」
紙袋を覗き込めば、大事に食べてきた飴も残りわずか。
今度また買ってあげようかな。
『う〜んとねぇ……。ミミはこの紫色が好き』
「グレープ味ね。まだひとつあるね」
紙袋の中にはミミが好きだと言った飴が残っていた。
『うん! 美味しいから一番最後に残してあるの』
「おお、そうなんだ。ミミは楽しみを最後に残しておくタイプなんだな」
『そうかも!』
笑顔で返事を返してくれたミミは自分の分の飴を口に放り込むと、紙袋を大事そうに鞄へしまっていた。
「それじゃあ、ジョゼさんのところに行こうか」
『はーい!』
俺は元気よく返事をしてくれたミミを頭に乗せると、魔走車を整備しているジョゼさんの下へ向かった。
「ジョゼさん、明日からは魔走車での走行になりますが、どうですか?」
「整備と点検を終えたが、問題ない。行けそうだ」
整備していた魔走車からこちらへ振り返ったジョゼさんが言う。
「魔走車の魔石は大丈夫ですか? これだけの距離を走るとなると、かなり消耗しそうですけど」
ジョゼさんの魔走車は大気から魔力を吸収する帆がついていない。
その分、魔石の消耗が激しいのだ。
これからかなりの長距離を走ることになるが、魔石は足りるのかな。
「問題ない。鞄に詰めるだけ詰めてきた。チェックポイントで魔石の販売も行っているようだから、最悪それを利用させてもらえばいいだろう」
「俺も魔石なら持っているんで、足りなくなったら言ってくださいね」
「うむ、分かった。もしもの時は頼む」
「その時は任せて下さい。じゃあ、俺たちは食事の準備をしてきますね」
「すまないが、もう少し整備をさせてくれ。終わったらそちらへ行くよ」
「分かりました」
というわけで、ジョゼさんは整備、俺たちは食事の準備となる。
今日は作り置きしておいたものを組み合わせて、軽く仕上げるかな。
などと考えながら割り当てられら場所に移動し、テントを建てた。
これだけ人目が多い場所で一軒家を出すと騒ぎになりそうなので、レース中はやめておこう。
ついさっきも幽霊と間違われて色々言われたばかりだし、なるべく目立たないようにしたい。
テントの次はテーブルと椅子、調理用の魔道具を出していく。
そうやって夕食の準備をしていると、酷く慌てた様子でジョゼさんがこちらへと駆けて来るのが見えた。
「まるもっちー君、た、大変だ……」
ジョゼさんが肩で息をしながら言葉を詰まらせる。
「どうしたんですか、ジョゼさん。顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」
表情が優れない。何かあったのだろうか。




