229 レース開催! とんでもないスタートに……!
俺は歓声が引いた会場を駆け抜け、外に出た。
コース上を快適に走っていると、最後尾の魔走車が見えてくる。
案外早く追いつけたぞ。
「最後尾に追いつきましたね。ちゃんとグループに分かれているみたいなので、先頭を目指しますよ」
あっという間に、最後尾を走る魔走車の背後に付ける。
前方へ向けて目を凝らせば、車列の停滞がなくなっていた。
先頭集団だけ順位争いが激しい印象を受ける。
「簡単に進むなぁ……。人を抱えて走っている人間の言葉とは思えない……」
「行きますよ!」
ぼやくジョゼさんに声をかけ、走る速度を上げる。
少しずつ速く走り、ジョゼさんが驚かないように心がけた。
最後尾の魔走車を抜き去り、ジワジワと距離を詰めて、その次へ。
一台ずつ順に抜いていき、先頭集団の背後につける。
後方を確認すると、後ろを走る魔走車とはかなりの差が開いていた。
多分、先頭集団に追いつくのは難しいだろう。
「上手くいきましたね。後は一日目のチェックポイントまでこの状態をキープです」
依頼が順調なことに胸をなで下ろした俺は、ジョゼさんに声をかけた。
「レース用魔走車の先頭集団にジョギング感覚で張り付いて走る人間とは一体何なんだ……。私の中の現実が歪んでいく……」
しかし、ジョゼさんはブツブツとひとり言を呟き、こちらの声が聞こえていない。
そんな調子で大丈夫だろうか。
…………
レースは事故もなく順調に進み、夕方には全ての魔走車が第一チェックポイントへと到着した。
チェックポイントへ辿り着いた魔走車は順位順に指定された場所へ停車し、選手は受付で手続きを行うこととなる。
俺たちはレースに出場しているわけではないので、そういった作業をする必要が無い。
だけど報告義務がある。というわけで、スタッフに問題がなかったことを伝えるために受付へ向かう。
すると、ちょうど同じ方向へ進む選手達の話し声が聞こえてきた。
「俺、体調が悪いのかもしれん……。ずっと後ろを走ってくる幽霊が見えたんだ」
「ッ! お前もか! 実は俺も……。ぴったり張り付いてくるし、幻覚かと思っていたぜ……」
前を歩く選手二人が顔を青ざめさせながら何やら話している。
体調が悪いのかな。
「大丈夫ですか? 気分が悪いなら運営に話してくださいね」
「「で、出たー!?」」
俺を見て、悲鳴を上げる二人。
二人の選手は、逃げ出すようにして受付へ走って行った。
「あ……」
そんな二人に声をかける暇もなく、俺は立ち尽くす。
まあ、目的地が同じだから、また会うんだけどね。
「そ、そうか、ギルドの依頼か……。いや、うん、理解できたような、できないような……」
「大声を上げて悪かったな。てっきり幽霊が追いかけて来ているのかと思ったよ」
先へ走っていった二人の選手に追いついて話すと、逃げていった事情が分かる。
どうやら俺の事を高速で走る幽霊と勘違いしていたようだ。
こちらとしては苦笑いするしかない。




