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227 選手激励するも、とんでもない会話に……!?

 

「え……、映像が流れるんですか!?」


 初耳だ。というか、この世界にはそんなものまであるのか。



「はい、中継されますよ。我が街の最先端技術を駆使して、空撮します。今までは小さな映像しか見られなかったので声のみの実況だったんですが、今回からは会場の特設ディスプレイで観賞できます! 凄いでしょう?」


 そう言って得意気に話すスタッフが、客席にある巨大な板を指差した。


 あれって、モニターだったのか。


 く、異世界だと思って舐めていた。技術発展しすぎだろ。


 先頭集団に走って併走する俺の姿があれに映しだされるのか……。


 これでは余計な所で目立ってしまう。


 今の内に破壊しておくか?


「顔が怖いぞ? よからぬことを考えていないだろうな」


 と、ジョゼさんに突っ込まれてしまう。


 さっきから鋭すぎるぞ。完全に顔から思考を読まれているな……。


 こんなところでひと月一緒に生活した弊害が出てくるとは。


「そ、そんなことないですよ。ジョゼさんこそ映像が流れるからって緊張しないでくださいね?」


 俺はとぼけながら、わざとらしくジョゼさんへ笑いかけた。


「だ、大丈夫だ! ……と思う」


 巨大ディスプレイを凝視し、カチコチに固まるジョゼさん。


 大丈夫か……。


「それでは失礼しますね。依頼、頑張ってください」


「ありがとうございました」


 俺たちと打ち合わせを終えたスタッフは固まるジョゼさんに苦笑いしながら去って行った。


 しっかりしてくださいよ、とジョゼさんの肩を叩いていると、背後から声をかけられる。


 振り向けばヴィヴィアンさんがこちらへと近づいてくる所だった。


「あら、元気そうじゃない。もっと落ち込んでいると思ったのに」


「ふん! 私は立ち直りも早いんだ。もう過去は振り返らない」


 さっきまで固まっていたジョゼさんが完全復活し、ヴィヴィアンさんに言い返す。


「どうせ、途中で失格になったことを散々後悔して泣きまくったくせに」


「泣いてない! 泣いてないから!」


 痛いところを突かれたジョゼさんが声を荒らげる。


「ふーん」


 ヴィヴィアンさんはまるで現場を見ていたかのように、余裕顔でニヤニヤしていた。


「……ちょっとは泣いたかも」


 そっぽを向きながら拗ね顔で事実を認めるジョゼさん。


「もう大丈夫みたいね。心配してたんだからね? 立ち直れてよかったわ」


 ジョゼさんがいつも通りなのを見たヴィヴィアンさんは、ふっと笑みを零す。


「引きずらなかったのは、魔走車が売れたからかもしれないな」


 先日の出来事を思い出したのか、ジョゼさんが笑いながら頷いた。


「え、売れたの?」


「聞いて驚け。シプレの街長に買ってもらう話になっている」


「やったじゃない! いくらで売れたの?」


「…………だ」


 自分のことのように喜んでくれるヴィヴィアンさんに、ジョゼさんが喜びを隠せないといった様子でひそひそと耳打ちする。


「はぁ!? それ本当なの?」


 ジョゼさんの回答を聞き、ヴィヴィアンさんが目を丸くする。


「本当だ。話が決まった時はお祭り騒ぎだった」


「良かったわね」


「うん、ありがとう」


「まあ、私は必ず優勝するから、そんな降って湧いた話に左右されないけどね」


「知っている。君は必ず優勝するとも!」


「よく分かってるじゃない。応援頼んだわよ!」


 ジョゼさんとヴィヴィアンさんはお互いに笑い合い、拳を突き合わせた。


「特定の選手に肩入れする事になるから会話は出来ないが、特等席で観させてもらうよ」


「何の話?」


 ジョゼさんの話した意味が分からなかったのか、ヴィヴィアンさんが疑問顔になる。


「俺たち、ギルドの依頼で同行するんです。レース中はよろしくお願いします」


 俺から簡単に事情を説明する。


「だからこんな所にいたのね。でも、君はどうやって? ジョゼの後ろに乗るの?」


「いえ? 走りますけど」


「……少し前なら、人がレース用の魔走車と併走するなんてあり得ないって一蹴してたところだけど、今は何一つ信じられないわ」


 ヴィヴィアンさんが俺の回答を聞いて、深い息を吐く。


「同感だ。そもそも、ギルドからの正式依頼というのが理解できない。ギルドはまるもっちー君がレース期間中ずっと上位グループと併走できると判断しているということなのか……?」


 ジョゼさんまでヴィヴィアンさんの言葉に便乗し、ため息吐く。


 二人揃ってそんな言い方しなくても……。


「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないですか。ヴィヴィアンさん、頑張ってくださいね!」


 俺は話題を強引に変え、ヴィヴィアンさんに声援を送った。


『頑張ってね!』


 ミミも笑顔でヴィヴィアンさんに両手を振る。


「そうね、ミミちゃんがかわいければそれでいいわ。じゃあ、行ってくる」


 ヴィヴィアンさんはミミの頭を撫でると、俺たちに軽く手を振って自分の魔走車がある方へと戻っていった。



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