223 交渉成立! とんでもない金額に……!?
こ、このままではパレードが行われ、俺の銅像が建てられてしまうかも……。
「そもそも悪い話ではないと思うのだが?」
と、バルバラさんが不思議そうな顔をする。
「ジョゼさん、何か売りたくない理由でもあるんですか?」
俺はジョゼさんに理由を尋ねた。
やはり、初めて本選に出場した記念に取って置きたいのかな。
次のレースに出場するなら、きっと新しいものをゼロから作るはずだ。
今回作った魔走車を調整して使うということはしないだろう。
「……よくよく考えたら特にないな。むしろ上位三位に入れなかったから、当てにしていた賞金はなし。ほぼ無一文状態なので、一刻も早く収入を確保したいくらいだ」
俺たちの問いかけに、顎に手を当てたジョゼさんが考えをまとめるように呟く。
なら、売っても問題ない気がする。きっと、バルバラさんの勢いが強すぎただけだ。
「バルバラさんが強引にやりすぎるから、抵抗されていただけじゃないですか……」
暴れ回りすぎだ。豪快な性格にも程がある。
そのせいで初対面での印象が最悪になってしまった。
「すまんな。欲しいという欲求に抗えなかった」
「ジョゼさん、売って問題ないなら、悪くない話だと思いますよ。バルバラさんが乗れば宣伝効果も期待できますし」
街長が乗れば、それだけで注目される。
間接的に仕事が舞い込む可能性を期待してもいいんじゃないだろうか。
「宣伝効果……、それは見逃せない話だな。よし、売ろう。ただし、今の状態では無理だ」
俺の言葉を聞いてジョゼさんが即決する。だけど、条件があるみたいだ。
「な、なぜだ!?」
「レース仕様だからだ。屋外の道を走行するように調整されていない。速度重視に設定してあるから、普段走りで使うと燃費も悪い。再調整する必要がある」
そう言われれば、確かに滅茶苦茶ピーキーな設定になっている。
できるだけ短時間で最大速度に到達し、その状態を保持し続けることを主眼において調整されているから、サーキット場以外で走るのは危険すぎる。
「後は体格差だな。私の体に合わせた調整になっているので修正する必要がある。これに関しては元々サイズ変更可能な機構が備わっているので、それほど時間はかからないが」
「そういうことなら仕方ないか。待とう。金額はこのくらいで問題ないか?」
バルバラさんが素早い動きでジョゼさんに密着し、メモに筆を走らせた。
「ッ!?」
メモを見たジョゼさんが驚きの表情で固まる。
いきなり高額を提示されたのかな?
「少ないか? ならこれでどうだ」
難色を示されたと勘違いしたバルバラさんが再度メモに何やら書きこむ。
「……それで構わない!」
止めていた息を一気に吐き出す勢いでジョゼさんが首肯する。
これは相当いい値段で売れたんじゃないだろうか。
「よし、決まりだ。調整にはどの位かかる?」
「簡易調整なら試運転を入れて十日といったところかな。本格的にチューンナップするのであれば三ヶ月くらいはみてほしい」
「ならば簡易調整したものに乗って、不備を感じれば再度お願いしよう」
「承知した。その方向で作業を進めさせてもらう」
話が進み、受け渡しまでの流れが決まる。
「その位の期間であれば、長距離レースが終了した後に受け取れるな。その時にまた訪ねる」
バルバラさんは満足そうに頷くと、こちらの反応を待たずに工房から出て行ってしまう。
切り替えが追いつかない俺たちは、しばし呆然とその場に立ち尽くしていた。
そして、数分の後。
「……やったー!」
ジョゼさんが大声を上げて飛び跳ねた。
「ジョゼさん?」
「す、すごい金額で売れてしまった……。しかも街長が乗ってくれれば、私の名も自動的に知れ渡る。最高じゃないか!」
手をワキワキさせながら、ニヤニヤと語り出すジョゼさん。
気分が昂揚したのか、体中で嬉しさを表現している。
「話が決まって良かったですね」
「ああ! 思い出のある魔走車だが、街長に使ってもらえるなら、それも新しい思い出となる。うちで埃を被っているより、ずっと有意義な使われ方だ」
俺の言葉にジョゼさんが笑顔で何度も頷く。
「そうと決まったら再調整ですね」
「うむ。やっていくぞ! 今回はレースとは無関係だから、君にも手伝ってもらう」
「おお! 頑張ります」
ジョゼさんからの要請に、気合が入る。
やっと俺も魔走車をいじれるのか!
「期待しているぞ。それじゃあ取り掛かろうか」
「はい!」
引き締まった表情で腕まくりするジョゼさんの言葉に、俺は強く頷いた。




