211 呼び止められ、まさかの展開に……!
街に戻り、顔が真っ白になった二人をそっと地面に降ろすと、あっさり仕事モードに切り替わってシッキャリする。
数秒後には何事もなかったかのように、明日以降の予定を話し合いだした。
「それじゃあ、明日も庭を使わせてくれ。それで最後にする」
「分かったわ。玄関は開けておくから好きに使って」
「助かる。ではまた明日。まるもっちー君、私は少し休憩する。君も疲れただろうし、休んでくれ」
ジョゼさんはヴィヴィアンさんに挨拶すると、俺に声をかけ、そのまま先に工房へと帰って行った。
よっぽど疲れたのかな……。
じゃあ、俺は食事の支度でもするか。
お昼が団子だけになっちゃったし、夕食を少し早めよう。
「それじゃあ、俺も失礼します」
ヴィヴィアンさんに頭を下げ、工房へ移動しようとする。
だが、俺が背を向けたタイミングでヴィヴィアンさんに肩をつかまれた。
「貴方は少し待ちなさい」
「え、俺ですか」
「そうそう、ちょっと聞きたいことがあるのよ」
呼び止められた理由が分からなかった俺は首を傾げた。
「何でしょう」
「ジョゼは本当にチケット渡せたの?」
ヴィヴィアンさんが心配そうな顔でそう尋ねてきた。
なるほど、それが知りたかったのか。
「渡せたかどうかというと微妙なラインですが、一応」
渡すことは渡していた。
その後がややこしいことになっていたけど……。
どう答えていいか分からず、あいまいに濁してしまう。
「そう、ならよかった。その割には早く家を出たみたいだったから、少し気になっていたのよ」
「それはジョゼさんが途中で家を飛び出しちゃったからですね。その後は散歩しながらお二人の話を聞いていました」
「どうせ、私が凄いみたいなことを散々言ってたんでしょ?」
「まあそうですね」
後半は概ねそんな感じだったな。
凄いとは言っていなかったけど、間接的にそう聞こえた。
「はぁ……、相変わらずね」
俺の回答を聞き、ヴィヴィアンさんが深々とため息を吐く。
「ジョゼさんの話を聞く限り、俺もヴィヴィアンさんは凄い人だと思いましたけど?」
ジョゼさんはああいう話で嘘をついたり、話を盛ったりしない。
多分、事実だけを淡々と言っただけだ。
そうなると、ヴィヴィアンさんはやっぱり凄いということになるわけで。
「それはあいつが自分のことを過小評価しているからよ」
「そうなんですか?」
まあ、ジョゼさんは自分のことを自慢げに話すタイプではない。
どちらかというと謙遜したり、照れくさがったりしてうまく言えないタイプだとは思う。
だからといって、ヴィヴィアンさんの凄さが変わるとも思えないけどな。




