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210 別案採用! まさかの事態に……!

 

「何話し込んでいるのよ。ちゃんとチケットは渡せたの?」


「あ、ヴィヴィアンさん」


 急に声が聞こえたと思ったら、木の影からヴィヴィアンさんが姿を現した。


「一応渡した。観に来てくれるかは分からないがな」


「そう、なら帰るわよ。少しでもいい結果にするためにも、追い込みをかけるわよ」


「うむ、そうだな」


 短い言葉を交わし、ジョゼさんとヴィヴィアンさんが頷き合う。


「じゃあ、行きましょうか」


 と、俺は二人に声をかけた。


 二人とも気持ちが昂ぶっているみたいだし、ここは早速移動だ。


 その思いを工房での作業にぶつけてもらおう。


「「ちょっと待って!」」


 と思ったら、二人から待ったがかかった。


 これから頑張るぞって感じで、すごくいい雰囲気だったのに。


「どうしたんですか? 二人で熱く意気込んでいたのに」


「いや、移動方法に多少の不満があるというか、なんというか……」


「帰りは馬車にしましょう、そうしましょう!」


 ジョゼさんが口ごもり、ヴィヴィアンさんが早口でまくし立てる。


「まあ、俺はそれで構わないですけど。で、どこで馬車に乗るんですか?」


 行きで充分に時間短縮できたし、ヴィヴィアンさんがどうしてもと言うならそれでもいいか。


 帰りは馬車か、と思っているとジョゼさんがこめかみを押さえて呟いた。


「ヴィヴィ……、ここがどこか忘れているだろう」


「あ……」


 ジョゼさんの言葉に、目を見開いたヴィヴィアンさんが言葉を失う。


「二人とも大丈夫ですか?」


 急に押し黙る二人を見て、尋ねる。


 するとジョゼさんが苦々しい表情で口を開いた。


「ここでは一日に四本しか馬車が出ない。しかも同じ人が御者をやって往復しているため、到着時刻も発車時刻も適当だ。停留所で何本目の馬車が出たかは確認できるが、いつ来るかは分からん」


 なるほど、馬車を利用するのは難しいのか。


 ジョゼさんの説明に納得していると、ヴィヴィアンさんが妙案が思いついたかのように顔を明るくした。


「家で馬車を借りてくるわ! ちょっと待ってて」


「ヴィヴィ! 仕事道具を借りるんじゃない。いくら相手がご両親でも迷惑だろ」


「うう……、だって……」


 ジョゼさんの指摘にヴィヴィアンさんがうな垂れる。


「諦めるんだ、ヴィヴィ。さあ、まるもっちー君、やってくれたまえ」


 ジョゼさんが全てを諦めたような表情で笑いかけてきた。


 そして両手を前に出し、目を閉じる。


「なんで死刑執行するみたいなムードを出してくるんですか。別に目を閉じなくてもいいですよ、もう……」


 なんて大げさな。


 ちょっと抱えて走るだけだというのに。


 俺はミミを頭に乗せ、二人を両脇に抱え込む。


 準備完了だ。そこまで嫌なら、なるべく走っている時間を短くしてあげた方がいいよな。


「それじゃあ、行きますからね」


 悲壮な表情で首肯する二人を抱えた俺はなるべく高い速度を維持して帰った。



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