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21 宿屋到着! その部屋はなんと……!

 

 さっそく中に入り、部屋を取る。


 料金は銀貨四枚。エドモンさんは少し高いと言っていたが、俺からすれば安い。


 というか、そういう安くて使い勝手のいい穴場の店を教えてくれた気がする。


 星の糸車亭は立地が悪く、この街に詳しくない俺では到底探し出せなかったであろう場所に建っている。


 客室もそれほど多いわけでもないから、店も小さい。知る人ぞ知る店って感じだ。


 部屋まで案内してくれたのは、小さな女の子だった。名前はアリサちゃん。ここの店主の娘さんで、家族でお店を切り盛りしているそうだ。


 俺は案内してくれたアリサちゃんに、餅スキルで作り出した月見団子を一つ渡す。


 この世界にはチップ的なやりとりは存在しないそうなので、ちょっとしたお駄賃感覚だ。


 大した量じゃないし、この位ならいいだろう。


 小さい月見団子には労をねぎらう意味を込めて、癒やし効果スキルをたっぷりと振りかけておいた。


「ありがとうございますっ。……ゴホッ、ゴホッ」


 アリサちゃんは体が弱く、激しい運動などはできないとのこと。


 階段を登っただけで息切れしたり、咳き込んだりしている。


 場所を行ってくれればわざわざ案内しなくてもいいよ、と言ったのだが、頑なに譲らない。


「そういう風に手を抜いていくと、お客さんが来なくなっちゃうから」と言う。


 なんというプロ意識。


 俺がこのくらいの歳の頃は、冬場に半ズボンで鼻水たらしながら走り回っていたというのに……。


 しっかり者すぎる。ただ、無理はしないでほしい。


 体を壊したら元も子もないしね。



「あの、頭の上にいるのが従魔なんですか?」


「そうだよ。ミミっていうんだ。仲良くしてあげてね」


 アリサちゃんに聞かれ、頭上からミミを降ろす。


 俺の両手に抱えられたミミは、笑顔で手を振った。


「か、かわいいですね。私、アリサ。よろしくね、ミミちゃん」


 どうやらアリサちゃんも、ミミのかわいさにメロメロのご様子。


 軽い挨拶を済ませた後は、早速部屋へ入った。


 中はシンプルな構造で、小さな棚がとベッドがふたつ。


 棚の上には、花の形をした電気スタンドのようなものが置かれていた。


 スイッチに触れてみると、ほのかに明かりが灯る。


 スタンドの回りにも、ホタルが舞っているように小さな光球が数個発生。ふわふわと浮かんでいる。


「OH、ファンタジー」


『きれいだね〜』


 どういう仕組みなのだろうか。不思議だ。


 照明という用途を超えて、目を楽しませてくれる。


 ファンタジーな照明を堪能した後、ベッドに腰掛け、一息つく。


「ふぅ、ベッドに寝そべるのも久しぶりだな」


 ずっと野外で生活していたし、部屋にいるというだけで気が休まる。


 しばらくベッドでゴロゴロした後、ひとっ風呂浴びに行くことにする。


 風呂場に着くと、誰も使っていないようで、すぐ利用する事ができた。


 扉に付いていた札を使用中に裏返し、中へ入ると脱衣所で服を脱ぐ。準備を整え、浴室へ向かう。


 共用の風呂は狭く、一人で入るのがやっとの大きさだった。


 俺は自分とミミの体を洗い、早速浴槽へ。


 俺の図体のデカさで湯船に浸かると、大量の湯が溢れ出てしまう。


 それを見て、ミミが大喜び。湯が流れ出る様がツボに入ったらしく、『ざぱーんって、なったよ!』と偉く興奮していた。


 俺は「ふぃー」と息を吐きながら、熱い湯にじっくりと浸かる。


 体が温まり、体の疲れがじんわりと取れていく。うん、気持ちいいな。


「んん〜、効くねぇ」


『ふぅ〜』


 ミミと二人、久々の風呂をたっぷりと堪能した。


 入浴後、ホコホコになった俺たちは食堂へ向かい、夕食を取ることにした。




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