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209 散歩中、衝撃の事実が語られる……!

 

「待ち合わせの時間までまだある。少しこの辺りを案内しようじゃないか」


 そう言って、ジョゼさんが歩き始める。



「ここは何もないところでね。街からは少し離れているし、子供の頃はずっとここにいた」


「気分転換にどうぞ」


 三色団子を取り出し、ジョゼさんに渡す。


 もちろんミミに渡すのも忘れない。


 三人で団子を食べながら散歩だ。


「気が利くじゃないか。うん、君が出す甘味はどれも美味しいな」


 豊かに実った小麦が揺れる畑を見ながら、のんびりと農道を歩く。


「初めて魔走車レースを観に行ったのは、子供の頃だ。本選のチケットが取れずに予選だったがね。予選でもレースは素晴らしいものだった。それはもう興奮したさ。そして虜になった。それは一緒に行ったヴィヴィも同じだった。帰りは二人でずっと魔走車の話をしていたんだ」


 ジョゼさんは空を見上げながら記憶を探るように話す。


「そのことがきっかけで私たちは錬金術師を目指し始めた。初めは娯楽が少ないここでの新しい遊びの延長だった。だが、次第に専門的になっていってね。どんどんのめり込んでいったんだ。私たちはお互いに刺激を受けながら、錬金術を独学で学んでいった」


 俺たちが歩いていると、反対方向から子供達が元気よく駆け抜けていく。


 きっとジョゼさんとヴィヴィアンさんも昔はあんな感じだったんだろうな。


「数年が経ち、親の援助が得られたヴィヴィは学校へ入学する事が決まった。私はあせったよ……。ここで出来ることには限りがある。差が開くんじゃないかってね」


 風車が建ち並ぶ地帯を抜け、丘が見える方へ進路を変更する。


「それでも勉強は続けた。そして、街に行く機会を見つけては、助手として受け入れてくれる工房を探したんだ」


 緩い坂を上り、丘の上を目指す。


 穏やかな風が土と作物の香りを運び、暖かい陽射しが気持ちいい。


「その間にヴィヴィは学校を好成績で卒業し、大手の工房へ行くことが決まっていた」


 丘の上に辿り着くと、辺りが一望できた。


 どこまでも続く小麦畑。そのずっと先には、街へと続く壁が見える。


「その時、私は何とか助手にしてもらえる工房を見つけて、家を飛び出したところだった」


 ジョゼさんは側にあった大木の幹へ向かい、腰掛ける。


 俺たちも隣へ座った。


「やっと錬金術が学べるという事が嬉しくて、がむしゃらに頑張ったよ。大変なこともあったが毎日が楽しかった」


 木陰は涼しく、落ち着いた気分になれた。


「その後なんとか独り立ちし、工房を設けることも出来た。その頃になるとヴィヴィは肩書きだけでなく、沢山の結果も残していた。新人の錬金術師としては注目株として、大手工房からも一目置かれ始めていたんだ」


 ヴィヴィアンさんは順風満帆だったんだな。


「その噂は畑しかないここにまで届いて大騒ぎさ。決定打になったのは魔走車レース好成績を残したあたりだろうか。不動の人気を獲得したといっても大げさではないな」


 そんな状態になれば、ヴィヴィアンさんを意識しているジョゼさんなら焦るよな。


「そうやってヴィヴィがどんどん大きくなっていく中、私は魔道具の修理依頼などをこなしてコツコツやっていた。一度資金を貯めて魔走車レースに出たが、結果は惨敗。差が開く一方さ」


 ジョゼさんが遠くを見ながら苦笑する。


「それでも失敗を活かし、設計を一から見直しているころに、うちの隣に大きな工房が建った。誰かと思ったらヴィヴィだったというわけさ。あいつが隣に来た時は本当に驚いたよ。しかも、ただ隣に来ただけじゃなくて、口を出してきた。悔しいが的確で自分では気づく事の出来なかった視点からの意見は非常に参考になったよ。ヴィヴィからのアドバイスを受け、とうとう完成したのが今回の魔走車なんだ。私は……、あの魔走車で必ず結果を残してみせる」


 と、強い言葉で締めくくる。


 今回のレースに並々ならぬ思いがあるんだな。


「頑張ってください。俺もしっかり応援しますんで」


 こんな話を聞いたら応援せずにはいられない。


『ミミも!』


 俺と気持ちを同じくしたミミが、ジョゼさんに手を振る。


「ああ、ありがとう」


 俺たちの言葉を聞き、ジョゼさんが微笑む。



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