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208 再会! 衝撃の展開に……!

 

 入らないのかと聞こうか迷っていると、ジョゼさんが「よし」と覚悟を決めたように強く息を吐く。そして、玄関の扉を開けて中へ入っていった。



 俺たちもそれに続く。


「……ただいま」


 身を固めたジョゼさんは、とても小さな声を絞り出す。


 すると奥の部屋からその声を聞きつけて、恰幅のいい女性が飛び出してきた。


 女性は勢いよく、ジョゼさんを抱きしめた。


 きっとジョゼさんのお母さんなのだろう。


「ジョゼじゃない! 元気にしてたかい? あんた、ジョゼが帰って来たよ!」


 お母さんはジョゼさんを抱きしめたまま奥の部屋へ行ってしまう。


 置き去りとなった俺は「お邪魔します」と言いつつ、慌てて後を追った。


 辿り着いた部屋はリビングだった。


 部屋の奥でほっそりした男性が黙々と農具の手入れをしているのが見えた。


 あれがきっとジョゼさんのお父さんかな?


「うん、怪我も病気もしていないよ」


 ジョゼさんはお母さんに圧倒されっ放しで、照れくさそうに頷くのが精一杯といった様子だ。


 あれだけ家に入るのを躊躇していたので、もっと険悪な雰囲気かと思ったら、全然いい感じじゃないか。


「近いんだから、もっと帰ってきなさいよ!」


「うん」


「あら、そちらさんは誰だい? ジョゼの彼氏さんかい?」


 というお母さんの声を聞いて、奥に居たお父さんが猛烈な勢いで立ち上がった。


 そして俺の方を射殺す勢いで睨んでくる。


 ちょ、怖い怖い怖い怖いって。


「ち、違う! 助手だ! うちの工房で助手をやってもらっているまるもっちー君と従魔のミミ君だ」


「初めまして、まるもっちーです。ジョゼ先生に錬金術を教わっています」


『こんにちは!』


「あら、かわいい二人だねぇ。ヴィヴィアンちゃんなら泣いて抱きつきそうだよ」


「はは……」


 お母さんの感想を聞き、ちょっと乾いた愛想笑いが出てしまう。


 ヴィヴィアンさんの工房には、俺とミミにそっくりに作られたぬいぐるみがあると言うが、抱きつかれているのだろうか……。


『んふー♪』


 ミミはかわいいと言われてご機嫌の様子。


「で、今日はどうしたんだい? わざわざ助手さんまで連れてきて」


「まるもっちー君たちは色々な偶然が重なっただけなんだ。今日はこれを渡したくて」


 ジョゼさんはおずおずとした様子でチケットを取り出した。


「あら! 魔走車レース本選のチケットじゃないかい! じゃあ、もしかして……」


「うん、予選を突破したんだ。だから観にきて欲しくて……」


「やったじゃないか! おめでとう! ついに本選まで行けたんだねぇ……。あんた! ジョゼがやったわよ!」


 ジョゼさんの報告にお母さんが感情表現豊かに喜んでくれる。


 そして、お父さんの方へ話を振っていた。


 お母さんは受け取ったチケットをポケットにしまうと、ジョゼさんを抱きしめて頭を撫でまくっていた。


「……そんなことはどうでもいい。明日も早いんだ。飯の支度を頼む」


「なんてこと言うんだい! ジョゼが本選に出場できるんだよ!」


 お父さんの素っ気無い態度に、お母さんが声を上げる。


 しかし、お父さんの反応は冷ややかなままだった。


「ふん……、いつまでそんなことをやっているつもりだ。遊んでいる暇があったら、畑仕事を手伝わんか」


 お父さんの言葉を聞いたジョゼさんは強く口をつぐみ、後退る。


「…………チケットは渡したから」


「あ、ジョゼ!」


 お母さんの呼び止める声を無視し、ジョゼさんは部屋を飛び出してしまう。


 俺はご両親に会釈すると、その後を追った。


 ジョゼさんはそのまま家を出て、しばらく走り続けた。


 家が見えなくなるくらい離れたところで立ち止まる。


 ジョゼさんは肩で息をしながら、じっと地面を見つめていた。


「出てきちゃいましたけど、いいんですか?」


 もう少し話し合うべきでは。


 ジョゼさんがずっと努力して手に入れた物なんだし、時間をかけて話せばきっと理解してもらえるんじゃないだろうか。


 と、一瞬そう思ったが、違う気もした。


 俺はこの数分間しかジョゼさんと家族の関係を見ていない。


 もしかすると、今までもこんなことがあったのかもしれない。


 今日だけ急に感情的になって飛び出したと考える方が不自然だ。


「見苦しい所を見せてしまったね。チケットは渡せたし、いいさ」


「そうですか……」


 俺の問いに薄く微笑むジョゼさんを見ていると、何も言えなかった。


「待ち合わせの時間までまだある。少しこの辺りを案内しようじゃないか」


 そう言って、ジョゼさんが歩き始める。



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