205 出発! まさかの展開に……!
予選が終わった翌日、以前の約束通り、ジョゼさんとヴィヴィアンさんが故郷へ帰ることとなった。
初めは二人だけで行く方向で話が進んでいたが、その予定を聞いて俺とミミも同行を申し出た。
ジョゼさんの工房前で待ち合わせし、そこから一緒に向かうこととなる。
「で、お二人の故郷はどこなんですか」
と、待ち合わせ時間より少し早く到着したヴィヴィアンさんに尋ねる。
この街の外なのかな。
「すぐそこよ。門の中に畑を持つ農家よ」
ヴィヴィアンさんが肩をすくめてため息を吐く。
「え、じゃあなんでわざわざ二人で行くんですか?」
街の中の移動なのに、なぜジョゼさんはヴィヴィアンさんに頼み込んでいたのだろう。
「それはアイツが上がり症だからよ……。親にも上手く言える自信がないのよ」
と、苦笑いしながらヴィヴィアンさんが言う。
「な、なるほど。でも最近は緊張している場面をあまり見ないんですけど」
予選も問題なくこなせていたし、かなり人見知りを克服している気がするんだけどな。
俺とミミに対しては普通に接してくれるし、もう何ともないんじゃないだろうか。
「それは貴方たちに心を開いている証拠よ。よくこの短期間でそれだけ懐かれたわね」
「そんな警戒心の強い猫みたいな言い方……」
「だって、うちの助手たちの方が付き合いが長いのに、まともに話せないのよ?」
「あれは助手の皆さんの方に問題があると思いますよ。みんな、撫で回したりかわいがったりするんですもん」
以前、偶然皆で食事をすることになった時のことを思い出す。
ジョゼさんはヴィヴィアンさんの助手たちにもみくちゃにされていた。
かわいいかわいいと、ぬいぐるみのような扱いを受けていたのだ。
「まあね、あの子たちからすれば、ジョゼの上がっている姿がかわいいって変換されるから、スキンシップがどんどん過剰になっていくのよね……」
「そんな感じでした」
ジョゼさんに助けを求められ、人波かき分けて救いに行ったことを思い出す。
などと、ヴィヴィアンさんと会話をしていると、ジョゼさんが工房から出てきた。
「待たせた。それじゃあ行こうか」
「それでどうするの? 歩いて行くにはちょっと遠いし、私の魔走車で行く?」
ヴィヴィアンさんが移動手段を提案してくれる。
「助かる。できればそれでお願いしたい」
「あ、今回は俺が担いで行きますよ」
二人の間で話がまとまりそうになったのを、俺が遮る。
その話、ちょっと待った。
「何を言ってるんだ?」
ジョゼさんが意味が分からないといった顔をしながら、首を傾げた。
「二人とも本選を控えていますし、移動で時間を取られるのは勿体無いでしょ?」
俺が同行を申し出た理由。それは移動時間だ。
ジョゼさんとヴィヴィアンさんが予定を話し合っていた時は、まだ移動手段が決まっていなかった。それでも相当の時間がかかることが話を聞いて分かっていた。
もし魔走車で行くとしても、ここから農地までを往復すると一日使ってしまう。
現地に滞在する事を考えれば、最低でも二日は必要になる。
だが、俺が走れば、その時間もグッと短縮できる。
なら、削れる時間は削って、二人には本選へ向けての準備をしっかりしてもらいたい。
だから同行することにしたのだ。
「まあね。できれば工房にいる時間を少しでも確保したいところね。でもそれと貴方が走る事とは話が繋がらないわ」
俺の言葉にヴィヴィアンさんが頷く。しかし、ジョゼさんと同様に疑問顔だ。
「なら、多少難があっても時間は短い方がいいでしょう。農地まででしたら大した距離でもないですし、体にも負担はかからないと思います」
長時間フルスピードで飛ばせば、酔うかもしれない。
けど、今回は大した距離じゃないし大丈夫なはず。
「なぜか言葉の端々に危険な匂いを感じ取ったんだが……」
ジョゼさんが顔を青ざめさせながら数歩後退する。




