20 冒険者のイロハを教わる間に、とんでもないところに!?
宿へ向かう中、エドモンさんからギルドで貰ったマニュアルについて色々と教えてもらえた。冒険者のイロハというやつだ。
冒険者とは、様々な依頼を受ける何でも屋。
主な依頼は、モンスター討伐や護衛といった荒事が多い。
他には、薬草採取や清掃、変り種なら店番や子守、剣術指南なんてのもあるとのこと。
雑用系の依頼なら俺でもできそうだけど、剣術指南は無理だな。
むしろ俺が教わりたい。
次に、冒険者は実績からランク分けされている。
現在の俺は、一番下っ端の鉄級。
そこから、銅、白金、銀、金、魔銀となり、一番上が魔金。
定められた条件を満たし、試験に受かることで次のランクに上がる。
逆に、ランクごとに設定された期間内に規定量の依頼をこなさないと、登録抹消。
その場合は、再登録が必要になる。
受けられる依頼は現在のランクから一つ上までが基本。しかし、例外が大量にあるので目安程度に思っておけばいい。
以上のことが、マニュアルとエドモンさんの話から分かった。
後は、悪いことはしちゃ駄目よってことと、事故や怪我は自己責任でよろしくといった感じのことがマニュアルに綴られていた。
エドモンさんの補足によると、悪いことをして除名処分になった場合、別の国で再登録しようとしても不可能とのこと。
冒険者ギルドは国を超えた組織のため、そういった情報は共有されているのだ。
一通り読み終えたが、マニュアルには、実際の依頼のこなし方などは記載されていなかった。
……う〜ん、初心者にお勧めの依頼とか載っていたら助かったのに。
初めは、どんな依頼を受けるべきなのかな?
「どうした? 何か分からないところでもあったか」
俺の思案顔を見て、エドモンさんが聞いてくる。
どんな依頼を受けたらいいか迷うと話すと、金に余裕があるなら薬草採取から徐々に慣れていくのが良いとの回答を頂く。
せっかく冒険者に登録したわけだし、登録抹消されない程度には依頼も頑張っていきたい。
明日は早速採取系の依頼でも探してみよう。
ぶっちゃけ、低ランクの間は団子屋でもやってる方が儲かる気がするけど……。
などと考えていると、前を歩いていたエドモンさんが立ち止まった。
「よし、着いたぞ。ここは料金もそこそこで飯が付き、共用風呂がある。新人冒険者だと少し高く感じるかもしれんが、疲れを取るのは重要なことだ。悪いことは言わんから、ここにしておけ」
「分かりました、ここにします。今日はありがとうございました。エドモンさんのお陰で本当に助かりましたよ」
「よ、よせよ。俺が好きでやってることだ……」
ちょっと照れくさそうに頬をかくエドモンさん。ゴツいからギャップが凄い。
「そうだ、よかったらこれを貰ってください。俺の故郷の甘味です」
俺は話しながら、餅スキルを発動。三本の三色団子を手早く作成。
串に桃、白、緑の団子が刺さった定番のやつだ。
それを今日のお礼にと、エドモンさんに渡した。
「お、何か悪いな。まあ、金じゃねえなら貰っておくぜ。ありがとよ」
「いえ、こちらこそ」
「これ以上はさすがにお節介すぎるから、何もしねえ。だがもし、困ったことがあればいつでも俺を訪ねて来い。それじゃあ、一人前の冒険者になれるように頑張りな!」
「はい、まずは銅級目指して頑張ります」
「おう、じゃあまたな。――お、この甘味うめえな……」
俺が頭を下げると、エドモンさんが肩を叩いて背を向けた。
こちらに軽く手を振ると、その場を去って行く。
見送っていると、雑踏の中に紛れていくエドモンさんの呟きが聞こえてくる。
どうやら歩きながら団子を食っているようだった。
「星の糸車亭ね」
紹介してもらった宿屋の看板には、そう書かれていた。
さっそく中に入り、部屋を取る。
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