2 鑑定! 結果、とんでもない数値が明らかに……!
おそらくそんな感じ。
二人という発言から組み合わせを考えると、関連性がないのは俺の方だしね。
――という予想は大体的中していた。
話を聞くところによると、ブラックドラゴンなるモンスターの群れが暴れて困っているらしい。
ブラックドラゴンたちは進行方向上の街を破壊しながら、王都に向かって来ているとのこと。
その行軍速度は凄まじく、打つ手全てが後手となり、非常に危険な状態に突入。
止む無く勇者召喚の魔法を使用することとなった。
召喚魔法は成功し、無事二人の勇者を喚び寄せることに成功した。
と、思ったら何か三人いた、というわけである。
予想外のオマケがいたことに向こうが慌てた様子を見せたのは一瞬。
すぐに解決策が用意される。
国宝の魔道具だ。
見た目が水晶球っぽいそれは、鑑定の魔道具といわれるもの。
それに触れた者の能力や、隠された力が分かるそうだ。要はステータスが見えるってことか。
順番に玉っころを撫で撫でした結果、俺が巻き込まれて召喚されたことが分かった。
思いっきり転移失敗者って表示されていたし、間違えようが無い。
予想的中である。
逆に高校生カップルの二人は称号の欄に転移者、クラスの欄には勇者と表示されていた。
勇者である二人の能力値が軒並み四桁に到達しているのに対し、俺は二桁。
二人のレベルは20で、俺はレベル1。
これほど分かり易い巻き込まれ召喚も珍しい。完全に俺が部外者であり、いらない子枠。
こんな数値では何の役にも立てそうにない。ちょっと泣けてくるな。
鑑定の際に二人の名前が、鷹村陽一君と富士原明美さんだと判明。
なんか、個人情報を盗み見たみたいで気が引けるな。
と思ったので、焦って自己紹介を済ませる。
二人に茄子畑紫郎です、よろしくねって名乗ったら、微妙にひきつった表情をされてしまった。
タイミングが遅かったせいだろうか……。
まあ、そこまでは良かった。
ギリギリ良かった。
問題はそこから先だった。
なぜか……、周りが俺のことをチラチラと見てくるのだ。
異世界の人たちが俺たちを見てくるのなら、服装が珍しいからだろうと納得もできる。
だが、こちらに視線を合わせないようにしながら俺を見てくる面子には、鷹村君と富士原さんも含まれていた。……なぜに?
「ねえ……陽くん、やっぱり動いてるよね?」
「……ああ、明美。自然に動いてる……。どうなってるんだ?」
俺の方を見ながらヒソヒソ話をする二人。
会話の内容は聞こえたが、意味が分からない。
「あの……、さっきから気になってるんだけど、俺に何か?」
「く、口が動いてる……」
「あ、ありえねえ……」
当たり前のことを言って、目を見開く二人。
一体どこに驚く要素があるというのか。
いくら能力値が低いといっても、口ぐらいは動かせますとも。パクパク動くぜ。
「いや、何言ってるの? 普通でしょ」
日本人同士で会話したくらいで驚愕されても困るのだが。
いくらなんでもSUGEEのハードルが低すぎるだろ。
やはり異世界に召喚されて気が動転しているのかな……。
いや、もしかして超コミュ症と思われているのだろうか。
それはそれでショックだな……。
「あ、あんた……、気付いてないのか?」
と、鷹村君がいぶかしみの視線を向けてくる。
「え、何が?」
「着ぐるみのまま話していますよ? 着ぐるみの口が動いているんです」
と、富士原さんが、鷹村君の背に隠れながら答えてくれた。
……ふむ。それで驚いていたというわけか。
「……なるほど。んん…………? えええッ!?」
時間差で驚愕の事実を知った俺は、顎に手を当てながら口を動かしてみる。
確かに口がとてもスムーズに開閉していた。
――だが、この着ぐるみにそんな機構は付いていない。
動くはずがないのだ。
……いや、それ以前におかしいことがいくつかある。
「口が開いているのに、中の人が見えないんだけど……、どうなってんだ?」
「どう見ても、着ぐるみが発声しているようにしか見えないよね」
「ああ……、しかも……」
「声がかわいい!」
「だよな! すげえゆるキャラっぽい!」
ゆるキャラの着ぐるみを前に、二人は肩を寄せ合って怯えていた。
そのリアクション、微妙に傷つくんですけど。