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199 ジョゼの魔走車を見たギャラリーが衝撃の反応を……!?

 

「そんな事より入場が始まりましたよ」


 丁度ファンファーレがなり、出場者が魔走車とともに入場してくるところだった。


「本当なんだから!」



「お、ジョゼさんの動きが硬くなってないな。本番に強いタイプだったのか」


 ヴィヴィアンさんの発言をスルーし、ジョゼさんの姿を確認する。


 動きにぎこちなさがない。あまり緊張しているように見えない。


 これはいい傾向かもしれないな。


「違うわよ。多分ヘルメットのせいね。あれのお陰で自分が注目されていないと勘違いしているから、緊張が軽減しているのよ」


「さすがヴィヴィアンさん。俺とは付き合いの長さが違いますね」


 ヴィヴィアンさんの的確な分析に唸る。


 その説明を聞くと、納得できる。


 ヘルメットで視界が狭くなっているから、周囲の視線が気にならないのかも。


「もう、私をからかうんじゃないの」


 などとお叱りを受けてしまう。


 しかし、こうやってレースに出場する魔走車を全て見ると、ジョゼさんの魔走車は異質だ。


 他の魔走車とはデザインどころか、コンセプトが違いすぎるせいで、完全な別物になっている。


 周りはヨットのような外見の魔走車ばかりなのに、ジョゼさんのだけバイク。


 それは専門家でない素人が見ても、ひと目で分かる差だった。


 そのせいで観客席がざわつき始める。


 やれ、あれで走るのか、とか受け狙いだとか、目立ちたいだけだとか、弱小工房の考えそうなことだとか、散々な言われようだ。


 しかし、この一月ずっと一緒に居た俺は知っている。


 ジョゼさんは自分の魔走車にかなりの自信を持っていた。


 あれは、奇抜さだけが売りの魔走車ではない。


 明確な意図を持って設計されたものだ。


 テスト走行すらしていないのがネックだが、なんとか無事完走してほしい。


 俺が祈るようにジョゼさんの方を見ていると、ヴィヴィアンさんがすっくと立ち上がった。


「アンタたち、ジョゼのこと何にも知らないくせに適当なこと言ってるんじゃないわよ! アイツは受けや目立つためだけで、あんな物を作ったりはしないわ! 黙ってレースを見てなさい!」


 と、啖呵を切る。


 これはかっこいいぞ。


 俺とミミはヴィヴィアンさんに小さく拍手を贈った。


「ヴィヴィアンさん、ありがとうございます。ジョゼさんのことを信頼しているんですね」


「そ、そんなんじゃないから。でも、私もアイツもレースには本気で挑んでる。勝つためにずっとやってきてる。ずっと……、ずっとやってきてるのよ」


「俺も何か言いたかったんですけど、咄嗟に言葉が浮かんでこなかったです」


「しっかりなさいよ。貴方、助手でしょ。でも、一月しか経ってないうえに、作業にも加われないんじゃ、仕方ないわよね……」


「恥ずかしい話ですが、その通りです。ジョゼさんが頑張っているのは知っていたんですが、魔走車の性能についてはさっぱりですし、いい加減なことを言えば余計に笑われてしまうと思ったので」


 根拠のない自信から適当なことを言っても、鼻で笑われるのがオチだ。


 ちゃんと事実に基づいた説明が出来なければ話にならない。


「まあ、アイツの魔走車はちょっと奇抜な見た目だけど、性能は高いはずよ。あの形に落とし込むまで、私も結構関わったからね」


「そうなんですね。結局試運転もしないまま、ぶっつけ本番になったから心配していたんですよ。だけど、それを聞いて安心しました」


 ヴィヴィアンさんの自信に満ちた言葉を聞き、ほっとする。


 走っているところを一度も見た事がなかったから、凄く心配だったのだ。


「……え、今何て言ったの? ちょっと!?」


 ヴィヴィアンさんが急に慌てた様子で俺の両肩を掴んで揺すってくる。


「結局、完成したのが昨日の夜なんです。その状況で走らせて何かにダメージが出ても修理ができないからということで、一切走行していないんですよ」


 起動や動作確認は行っているが、路面では動かしてないんだよね。


「聞いてないから! そんな状態で走って勝てるわけないでしょうが! どうするのよ、大見得切っちゃったじゃない!!!」


 動揺したのか、ヴィヴィアンさんが俺を滅茶苦茶に揺すってくる。


「黙って見てろって言っちゃいましたね……」


「あぁぁぁああああ……」


 声にならない音を吐き出しながら、頭を抱えてうずくまってしまうヴィヴィアンさん……。


『これ食べて?』


 丸まって動かなくなったヴィヴィアンさんにミミが飴を差し出す。


「うう……。ミミちゃん、ありがとう」


 ヴィヴィアンさんがミミに慰められている間も、レースの準備は進んで行く。


 次第に辺りが静まり返り、緊張感が漂い始める。


 どうやら、開始準備が整ったみたいだ。



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