196 期日迫る! まさかの事態に……!
――それから数日。
一軒家の完成から、料理作りは非常にはかどった。
色々なものを試し、最終的にこだわりだしたのはソース作り。
中濃ソースに成功したことがきっかけとなり、色々とやってみた。
中には時間の掛かる工程が含まれるものもあったが、発酵もこなしてしまう錬金術があれば、ちょちょいのちょいなのである。
市場に通いつめ、スパイスコレクションも充実してきた。
コレクションと言えるほどの種類をそろえることができたのは、リチャードさんと知り合えたのが大きかった。
お陰で、欲しい香辛料が手に入らないという状況に陥ることがなかった。
初めの頃はログハウスで始めた料理も、今は二階建ての一軒家。
これまでの成果を思い出してみると、月日の流れを感じる。
今日までに挑戦した料理も二十種を超えたわけだし、当然といえば当然のことだ。
そして、それだけ日数が経過すれば、自然と近づいてくるものもある。
そう、魔走車レースの予選がとうとう明日に迫っていた。
しかし、未だジョゼさんの魔走車は完成していない。
大丈夫なのだろうか……。
今の俺に出来ることは、美味しい夕食を作って元気付けることのみ。
今日は前日に聞いておいたリクエストのカレーを作り、工房へと帰った。
「ただいま帰りました」
『カレーだよ!』
と、俺とミミが工房へ入るのと同時に、作業場の方から「出来たぁあああ!」という歓喜の叫び声が聞こえて来た。
俺はミミと顔を見合わせると、駆け足で作業場へと向かう。
「ついに完成したんですか!?」
「ああ、見てくれ! なんとかギリギリ間に合ったぞ。試運転すらできなかったが、後はぶっつけ本番でやるしかない」
「まだ明日まで時間がありますし、少しだけでも走っておいた方がいいんじゃないですか?」
本番まで一度も走らせないのは、さすがにまずいのでは……。
今ならまだ日も暮れていないし、ギリギリなんとかなる。
が、俺の言葉を聞いたジョゼさんは首を横に振った。
「迷ったんだが、やめておくよ。もし走らせて部品が損傷した場合、明日までに直すのは不可能だ。なら、予選を試運転の場と切り替える。幸い、予選と本選は日数が空くからな。そこでなら修理や調節も可能だ」
「それもそうか。修理や調整にかける時間が足りないですよね」
もし不具合が見つかっても、直す暇なんて無い。故障すれば、それで終わりなのだ。
そもそも調整したい気持ちにかられても、今からでは間に合わない。
それなら、明日に備えて体力を回復させることに時間を使った方がいいかもしれない。
「そうなんだ。結局調整したい部分が見つかったとしても、時間を捻出するのは難しい。それに資金がカツカツの状態なんだ。これ以上の無茶をすれば本選に使えるお金がなくなってしまう……」
「ギリギリなんですね」
「ああ……。まあ、予選突破できると高をくくっているようで、あまりいい気がしないがね。かといって、本選への余力を残しておかないのは無計画すぎる。難しい所だよ」
予選で資金を全額注ぎ込めば、本選で使えるお金がなくなってしまう。
そういった意味でも、今日出来ることは何もないということか。




