190 衝撃の決断! とんでもない事態に……!
――それから数日。料理作りをしながら、置き引き用の鞄を置く日が続いた。
日々の経過とともに料理の腕は着実に上昇していったが、置き引きに遭う事はなかった。
毎度置き引きに遭わないことからくるストレスは、料理にこだわるという形で解消される毎日が続くこととなる。
そんな中で目覚めたのがソースやタレ作りだ。
ソースの種類が増えれば作れる料理の種類も増える。
その事に気づいてからは、ひたすらソースを作りまくった。
デミグラスソースやステーキソース、焼肉のタレ、マヨネーズ、ごまドレッシングなんてものまで完成させた。
後、コンソメスープの素やシャンタンスープの素なんかも無理矢理作った……。
どうやら創造補助スキルでのレシピ検索は、俺の知識がベースとなっているっぽい。
例えば、ハンバーグと検索をかければ大量にレシピが出てくる。
家庭料理、ファミレスの品、スーパーのお総菜なんかでそれぞれ製法が違うためだろう。
なので、検索時には「簡単な」とか「家庭料理の」などという言葉を加えて検索している。
すると、必ずと言っていいほど要求される材料がコンソメスープの素だ。
初めのころは無しでいったり、別のもので代用したりしていたが、最終的に自作した。
わざわざコンソメスープを作って、それを粉状にしたのだ。
コンソメスープのままで使うと水分量の調整が難しいので、粉末にする必要があるんだよね……。
元はコンソメスープを手軽に作るアイテムのはずなのに、異常な苦労を強いられた。
しかし、そういったものが増えれば、料理の幅も広がる。
自然と料理のレパートリーも増え、食卓が豊かになる。
置き引きに遭わないということを除けば、とても良い好循環だ。
新しい料理を披露すればミミとジョゼさんが美味しそうに食べてくれる。
それが俺にとって良い刺激となり、ソース作り熱が冷めない。
ついつい調子に乗って色々やってしまった。
そして気付く。鉄級の依頼を全くこなしていないことに……。
つい面白くて、熱中しすぎてしまったのだ。
さすがにそろそろまずいと感じ、冒険者ギルドに依頼をこなしにいく。
とりあえず、期限を延ばすために薬草採取の依頼を受け、ミミに作ってもらったベンダーラ草でやり過ごす。
「ふう、うっかり忘れて資格剥奪になるところだった……」
危ない危ないと、手の甲で額を拭う。
ついでに鉄級でも討伐可能なモンスターの依頼を受け、素材買取所へ。
森へ行くたびに倒していたモンスターがまた溜まってきていたので、解体を依頼。
その際に討伐部位だけ先に受け取り、ギルドで討伐依頼を達成しておく。
これだけまとめてやっておけば、またしばらくは大丈夫だ。
一度に大量のモンスターを出したため、素材買取所ではシンディーさんに「あんたのお陰で大繁盛だが、てんてこまいだよ」と愚痴られてしまった。
これは、もう少し持ち込み量を調節すべきだったかもしれない。
鉄級の依頼を済ませた翌日。今日も今日とて、森へ繰り出す。
いつも通りログハウスを出して、置き引き用の鞄を置く。
と、ここでいつもなら料理作りを始める所だが、一旦手を止めて考える。
「ちょっと手狭になってきたよな……」
そう呟いて見つめる先には、アイテムボックスから取り出したログハウスの姿があった。
このログハウスで料理を作り始めて随分経つ。
結果、道具も揃い。スパイスや調味料も揃い。ソースも揃えた。
以前とくらべ、料理をする環境が整ってきたのだが、それと同時にログハウスに限界を感じ始めていた。
今まで騙しだましやってきたが、さすがに狭さを感じるようになってきたのだ。
調理器具もコンロしか常設できないので、ちょっと不便なんだよね。
最近だとオーブンを利用することも増えたが、出しっぱなしにすると狭くなるので、使うたびにアイテムボックスから取り出している。
その動作が段々面倒になってきた。これだけの頻度で使うなら置きっ放しにしたい。
それに調味料や食材の置き場所も確保したい。
そもそも室内に食べるスペースがないのは問題だ。
今まで、出来た料理を味見したり、間食したりする際はわざわざ外に出て食べていた。
屋外で食べるのは気持ちがいいが、部屋の中で食べれた方が便利なんだよな。
それしかできないのと、それ以外も選べるというのは大きな違いなのだ。
「本格的に家を作っちゃうか……」
初めは調理室みたいなものを作り直そうと考えていた。
そこに、食べるスペースを加えて、お店みたいにするつもりだった。
目的に特化しているし、それでいいかとも思ったが、こうなったら全ての機能を入れ込んでしまうか。
結局後々になってから、あれもいるしこれもいるという結果におちいりそうだしね。
それなら初めから一軒家を作ってしまえばいいのである。
ジョゼさんの工房を掃除しまくったせいもあり、家に関する情報は結構収集できた。
元の世界でこんな家に住みたいな、と考えていた願望も実現できる。
ならば作ってしまえばいいのである。




