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18 街で冒険者登録。しかし、その時とんでもない事態に……!

 

 街と聞いて、百とか二百の建物が密集した状態を勝手に想像していたが、全然違う。


 ファンタジーな風景がどこまでも延々と続いている。端が見えない。


 元の世界の規模で言うなら市とまではいかなくても、区は軽く越えていそうだ。


 城下を見ることができなかったので分からなかったが、きっと王都はこれ以上の大きさだったのだろう。


 お城に居たとき客室から一歩も出なかったせいもあり、こうやって街の風景を眺めていると、今頃になって自分が異世界に来たことを実感してしまう。


 しかし、色々な人がいる。城の中でもエルフやドワーフっぽい人は見かけたが、ここまでバラエティに富んでいるとは思いもよらなかった。


 この感じだと、俺の外見でも差別される心配はなさそうだ。


 餅人として何とかやっていけるだろう。


 しばらく街の様子を眺めていると、革鎧を着込んだ人の集団がたまたま視界に入った。


 その人たちは、高層の大きな建物へと入っていく。


 建物には大きな看板が付いており、異世界の文字で冒険者ギルドと読めた。


「お、丁度探してたんだよね。ミミ、ちょっとあそこに行くよ」


『はーい。大きい家だね!』


「冒険者ギルドって言うんだよ」


 俺は大きい建物に興奮気味のミミを落ち着かせつつ、冒険者ギルドへと向かった。


 観音開きの大きな扉を開き、中へ入る。


 内部は仕切りや壁が無く、解放的な広い空間となっていた。


 受付、飲食スペース、掲示板が並ぶ場所などが見える。


 中は隅々まで清掃が行き届いており、建物のデザインと相まって巨大な銀行のような印象を受けた。つい、整理券を引く機械を探してしまいそうなほどだ。


 行き交う人は皆鎧を着込み、巨大な武器を担いだりしている。


 ちょっと物騒な雰囲気だ。


 そんな人々の視線が、腰みのを巻いた俺に集中する。


 い、居づらい……。


「まずは受付に行けばいいのかな……」


 初めて来る人はどこに行けばいいのだろうか、とキョロキョロしていると、一人の男が近づいてきた。


 男は短く刈った髪の間から鹿の角が生え、その体は革鎧を着ているのに鍛えていることが分かってしまうほどに筋骨隆々。


 鷹のように鋭い目は、こちらを捉えたまま動かない。


 見るからに怖そうな面構えの男が、目の前まで接近し立ち止まる。


 そして「おい」と一言声をかけてきた。


 俺は止む無く「はい」と答える。


 ってか、はい以外に何て言えばいいんだよ。怖えよ。


 これはあれだろうか。新人を見つけては、研修と称して金を巻き上げる的な……。


 いや、もっとダイレクトに、脅して金を奪い取る的なやつだろうか。


 男の凄みのある外見からは、ネガティブな未来しか想像できない。


「お前、冒険者ギルドは初めてか?」


「はい」


「そうか。もしかして、この街に来たのも初めてだったりするか?」


「ええ、今着いたばかりです」


 鹿角の男の目力に負け、正直に答えてしまう。


 詐欺や恐喝を疑うのであれば、嘘であっても経験者の振りをした方がいいんだろうけど、無理だった。


 適当にはぐらかして逃げるという手すら、男の圧が強すぎてできない。


 完全な棒立ちだった。


 鹿角の男はおもむろに手を伸ばし、俺の肩をがっちりと掴んでくる。


 これでは逃げられない……。


 ――やられる!


「そうか……、大変だったな……」


「え?」


「皆まで言うな! 分かる、俺には分かる。お前もブラックドラゴンに住処を追われて、止む無く冒険者になろうと、この街まで来たんだろ!? そんな裸も同然の格好で……。苦労したんだな……」


 鹿角の男は瞳をウルウルさせながら、まくし立てた。


「いや、別にそういうわけじゃないんですけど……」


「強がるなって! 家を焼かれたんだろ!? だからそんな格好で……。よくここまで頑張ったな! けどな……、冒険者登録するには金がいるんだ。無一文で仕事にありつけるってわけじゃないんだよ……。でも安心しな、俺に任せておけ!」


「ぇ? ……え?」


 鹿角の男は戸惑う俺の肩をバシバシと叩くと、飲食スペースの方へ向かって歩き始めた。


「おい、皆! 聞いてくれ! どうやらこいつは、冒険者になろうと身一つでここまで来たそうだ。今から一回りするんでカンパを頼む。小額でもいいから、こいつを助けてやってくれ!」


 鹿角の男の言葉に応じ、「しょうがねぇなあ」「また世話焼きエドモンが何かやってるぜ」「こういう時は助け合いだよな」などという声が聞こえてくる。


 冒険者達がやれやれといった感じで、続々と鹿角の男の下へ集いはじめた。


 その光景を呆然と眺めていた俺はハッと我に返り「すいません! お金ならあるんで大丈夫です!」と、集まった冒険者達に頭を下げながら説明し、解散してもらった。


 危うくお金を恵まれてしまうところだった……。危機一髪である。


「……おいおい、俺はてっきり無一文だから、そんな腰みの姿なんだと思ったぜ。まさかそっち系の趣味だったとはな……」


 と、鹿角の男ことエドモンさんが、ひきつった笑顔で俺を見て視線を上下させる。


 エドモンさんはその強面な顔からは想像も付かないほど親切な性格で、新人を見ると放っておけないらしい。


 俺を見て、わけありの奴と勘違いし、居ても立ってもいられなかったそうだ。


「違いますって! 服を買うタイミングがなかっただけなんです! 俺だってこんな恰好したくはなかったんですよ」


 この出で立ちが趣味ではないことを強調する。誤解は早めに解いておくべきだ。


「そうなのか? なら後で服屋に案内してやるよ。とにかく、登録をさっさと済ませてきな」


「なんか色々とすいません」


 と、エドモンさんに一言入れ、早速受付へと向かう。




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