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17 街に到着! しかし、とんでもない事実に気づく……!

 

 ――ミミを仲間にしてから、街を目指して数日が経過した。


 その間、何度かモンスターに襲われるようなこともあったが全て倒した。


 投石で倒せてしまった……。レベル99、恐るべし。


 かなり巨大な個体も襲い掛かってきたが、軽く石を投げるだけで何とかなったので助かった。


 倒したモンスターは街で売れる可能性を考え、全てアイテムボックスへとしまってある。


「色々あったけど、何とかたどり着いたみたいだな」


 そして、とうとう目的地に到着したようだ。


 結局タマリの街を目指した方が日数が掛かってしまったが、そこはご愛嬌。


 視界の最奥に石造りの壁が見えた。


 壁はビルのように高くて厚く、中が全く見えない。


 多分、外敵から身を守る防壁的な役割があるのだろう。


 壁伝いに歩けば、どこかに入り口があるはず。


 ……と、ここまで来て俺はあることを思い出す。


「いかん、全裸のままだ……」


 そう、城を脱出してから今に至るまで、ずっと裸だったのだ。


 客間でおむつと称されたシーツふんどしを着用していた時以外、ずっと裸体。


 中々にワイルドな生活をしていたものである。


 しかし、このまま街の入り口へ向かうのはいただけない。


 あらぬ誤解を与えたり、余計な騒ぎを起こしてしまったりする可能性もある。


 何とか服を調達したいけど、こんな何もない場所では、それも難しい。


 となると局部(存在しないけど)だけでも隠しておきたい。


 俺は周囲にある大きい葉っぱを千切って集める。


 すると頭上で寝そべるミミが不思議そうに聞いてくる。


『マスター、なにしてるの?』


「ん、これか? これはね……、こうしてっと。どうかな?」


 俺は葉っぱを寄り集め、即席の腰みのを作成し着用してみせた。


 原始人感が半端ないが、全裸よりは増し。職質を受けるよりは増し。


 裸の理由を正面からこんこんと問い詰められるより、遥かに増しなのだ。


『わぁ! かっこいい! ミミもやってみる』


 非常にかっこ悪いスタイルであったが、なぜか大好評。


 しかも、真似をするという。


 ミミは俺の頭の上から飛び降りると、華麗に着地。


 う〜ん、と力を込める仕草を始めた。


 なんか一生懸命さがあって、かわいらしいなぁと眺めていると、ポンという音と共に腰に百合の花弁を逆さまにしたようなスカートが装着される。


『どう? マスターとお揃いだよ♪』


 嬉しそうにその場で回ってみせるミミ。


「お、かわいいな。そんなこともできるなんて凄いな」


 と言うと、途端にミミがうつむいて動かなくなってしまう。


 どうしたのかと覗き込んでみれば、顔を真っ赤にして『えへへ、凄いって言われちゃった……』と呟いていた。


 俺はそんなミミを頭の上に乗せると、壁伝いに街の入り口を目指した。


「あれか」


 しばらく歩くと、門らしきものが見えてくる。


 その前には街に入ろうとしている人や馬車が手続きを待つために行列を作っていた。


 俺も早速その行列の最後尾に加わる。


 どうやら腰みの作戦は成功のようで、身だしなみについて注意や指摘を受けることはなかった。が、注目はされた。


 こんなもち肌の大男が腰みのひとつで行列に並んでいるのだから、視線を集めてしまうのは仕方の無いことだ。


 そんな好奇の視線をやりすごしているうちに、自分の順番が回ってくる。


 衛兵と簡単な質疑応答(街に来た理由など)を済ませ、入街料を払う。


 これで中には入れるかと思ったが、まだのようだ。


「おい、その頭の上にいるのはテイムしたモンスターか?」


「頭の上? あ、そうです! そういうやつです!」


 衛兵の質問に乗っかる形でごまかしておく。


 精霊と説明すると、ややこしいことになりそうな気がしたし、向こうの都合に合わせた方が話が進めやすそうだったためだ。


 結構見た目が似ているので、親子と間違えられるかも、と思ったがそんなことはなかった。


『モンスターじゃないよ』


 俺達の会話を聞いたミミが反論していたが、その言葉は衛兵には届いていない。


 というか、話しているのか? 俺だけに通じる念話みたいな感じがするんだけど。


「ふむ、テイマーとは珍しいな。もしテイムしたばかりなら、冒険者ギルドで正式な登録をするように。それでは入っていいぞ」


「分かりました。ありがとうございます」


 衛兵に礼を言い、門をくぐる。


 と言っても壁の厚さは尋常ではなく、トンネルを進んでいるようなもので、中々出口が見えてこない。日の光が恋しくなる頃、やっとのことで門を出る。


 すると、一面の小麦畑が出迎えてくれた。


 広大な畑に混じってちらほらと民家があるのが分かる。


 目を凝らせば、遠くに突き当たりの壁がおぼろげに見えた。


「あれ、思ったより街っぽくないな」


 俺が疑問を感じて呟いたのを、後ろを歩いていた人が聞き取り、「街はここから歩いて半日ほどの距離だ。あの壁の先だよ。無料の駅馬車が出ているから、それを利用するといい」と、親切に教えてくれる。


 壁は二重構造。畑と街を区切るようにして二つ建っていたというわけか。


 つまり端の壁と思っていたのは、本当の街へ通じる壁だったのだ。


 馬車に乗り、小麦畑を眺めていると、壁まで辿り着く。再度長いトンネルを潜ると、今度こそ街に着いた。


「おお、結構デカい街なんだな」


『わー! いっぱいだね!』


 壁の中は石造りの建物が立ち並び、大通りには大きな蜥蜴のような動物が引く馬車っぽいものが行き来していた。中にはヨットに車輪がついたようなものまで走っている。


 街を行き交う人々も普通の人間に見える人から、猫耳や尻尾、山羊の角が生えた人まで様々だ。髪や肌の色も統一感がなくバラバラ。


 多種多様な人がいる賑やかな街だった。


 映画、マンガ、アニメでこういったシーンはよく見かける。最近はCGも洒落にならない進化を遂げて、まるで本当にそういった生き物がいるかのような完成度だったりする。


 が、実際に生で見ると、迫力というか得られる情報量が違う。


 俺は目の前に広がるファンタジーで不思議な光景に興奮を隠せなかった。


 すげえ、ワクワクする。


 これからどんな冒険が待っているのか楽しみだ。


 ――まあ、ラスボスみたいなのを初っ端に倒しちゃったけどね。




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