15 弱肉強食! とんでもない現場を目撃……!
俺は慌てて石ころを拾うと、サーベルタイガー目がけて投げつけた。
といっても、相手に命中させたいのでコントロール重視。
全力投球には程遠い、ゆるゆるの投石だった。
が、軽く放り投げた石ころはピッチングマシンが裸足で逃げ出すような風切り音を上げて驀進。サーベルタイガーの頭部を貫通した。
頭蓋を突き破った石は後ろにあった木にボスッとめり込んで停止。
木に開いた穴からは白煙がほのかに立ち上っていた。
当然、サーベルタイガーは絶命。ヘッドショットを食らって、生きているはずもない。
「ま……、まあ、倒せないより、倒せた方がいいよな」
色々突っ込みたい事実を端にやり、そう自分に言い聞かせる。
倒れた小人のモンスターも、何が起きたかよく分かっていないようで、放心状態で固まっていた。
俺は現場へと近づくと、サーベルタイガーの死骸をアイテムボックスへとしまう。
死んでいるとはいえ、ついさっきまで襲い掛かってきていたモンスターが側に居ると小人のモンスターも落ち着かないだろう。
「大丈夫か?」
俺は小人のモンスターを両手で持ち上げ、立たせてやる。
モンスターは未だ現状が把握できていないようで、オロオロしていた。
しょうがないので、スキルで大福を作って手渡す。
大福には癒やし効果スキルを注入しておいた。
「ほれ、食ってみ?」
と、食べるジェスチャーをしてみるも、小人のモンスターは大福を持ったままポカンとしている。
伝わらなかったようなので、もう一個大福を作り出し、自分で食ってみせる。
「こう、な?」
それを見た小人のモンスターはようやく理解したのか、大福にかぶりついた。
途端、笑顔になり猛スピードで食べ始める。
「お、おい、気をつけろよ。喉に詰まったら死ぬからな?」
竜だって死んじゃうんだぜ。
と、あまりのがっつきっぷりに心配しながら、大福を食べるのを見守る。
小人のモンスターが大福を食べ終えると、癒やし効果スキルの影響か、表情も落ち着き、安心していることが窺えた。それを確認した俺は立ち上がる。
「次はあんなモンスターに見つからないようにしろよ。じゃあな」
そう言って、森の外へ向けて歩き出す。
するとトテトテと小さな足音が背後から聞こえてきた。
振り向けば小人のモンスターが俺の後を付いて来るのが見えた。
モンスターは俺と視線が合うと、こてんと頭を倒して首を傾げる。
「もう一個欲しいのか? いやしんぼさんめ」
と、俺は大福をもう一個作り出し、小人のモンスターにあげる。
大福を受け取ったモンスターはおおはしゃぎ。その場で駆け回りだした。
見た目がかわいいせいか、ついあげてしまった……。
「もうあげないからな。家へ帰るんだぞ」
俺はそう言って再度歩き始める。
が、しばらくするとまたトテトテと小さな足音が聞こえてくる。
振り向くと大福を両手で大事そうに持ったモンスターが付いてきていた。
今度は俺が振り向くのにあわせて後ろを見ている。いや、君を見ているんだよ?
どうやら自分が見られているということが、分かっていないようだ。
「いや……、お前を見たんだって」
と言うと、振り向いてニッコリ笑ってくる。……かわいいな。
俺が一歩進めば一歩後を付いて来る。
スタスタと数歩歩けば、歩幅が足りないので、一生懸命に小走りで付いて来る。
「俺と一緒に来たいのか?」
と尋ねると、意味が通じたのか、コクコクと激しく首を縦に振った。
――さて、どうしたものか。
このまま放っておけば、また別のモンスターに襲われるかもしれない。心配だ。
ここまで関わって、見捨てるのも後味が悪い。
う〜ん……、これも何かの縁かな。
「しょうがないなぁ。ほら、おいで」
屈みこみ、手を伸ばす。
それに応じた小人のモンスターは、こけそうな勢いでこちらへ走ってくる。
俺の側まで近づくと手を握ってきた。
『お名前、つけて?』
と、俺の頭の中に声が響く。
「お前の声なのか?」
小人のモンスターに尋ねれば、『そうだよ。お名前、つけて』と返ってきた。
「名前かぁ……」
確かに名前があれば、呼ぶときに便利だ。
しかし、どんな名前にしたものか。
小人のモンスターはどこか植物っぽい。
全身は白く、四肢の端へいくと淡い桃色へと変化している。こちらを見つめるつぶらな瞳は大きく、パチパチと瞬きしていた。
見た感じ、マンドラゴラとかアルラウネ的なモンスターっぽい。
う〜ん……、植物、自然、緑、ミドリ……、ミミとかでどうかな。
見た目がかわいいし、意外としっくりくる気がする。
「じゃあ、今日からお前はミミだ」
と小人のモンスターを名付ける。
するとミミは大喜びの様子で、『ミミ! 私、ミミ! 名前貰った! ミミ! ミミ!』とぴょんぴょん飛び跳ねる。
モンスターを連れて街に入れるかどうか分からない。が、ここはファンタジーな異世界。
きっとモンスター使い、テイマーみたいなのも居そうな気がするし、何とかなるだろう。
最悪、袋や鞄に隠して持ち込むという手もある。
何よりこんなかわいい子が喜んでくれているなら、それでいいんじゃないだろうか。
本作品を読んでいただき、ありがとうございます!
面白い、続きが読みたいと思っていただけたなら、
広告の下のブックマークの登録、
ポイント投入欄を☆☆☆☆から★★★★★にしていただけると、作者の励みになります!
よろしくお願いします!




