142 ギルドマスターからの頼みごとがとんでもないものだった!?
とりあえず内容だけは確認しておこう。
簡単にできそうなことなら、錬金術を習う合間にこなすという手もある。
あまりに手間や時間を取られるものなら断るしかないが、そうでないならなるべく協力したいしね。
「もうすぐこの街の名物である魔走車レース大会が開催される。レースは街のサーキット場で行われる短距離レースと街の外で行われる長距離レースの二種類がある。その長距離レースで使われるコースは普段使われていない旧街道がメインになる。その旧街道部分をレースの直前に下見をしてほしい。一応定期的に見てはいるが、天候で危険な場所が出来る可能性があるからな」
「なるほど、俺の足なら直前ギリギリのタイミングで見に行けますからね」
崖にヒビが入っていて、レース当日に崩れるなんてフラグを回収しておくわけか。
ブラックドラゴンが暴れていたわけだし、可能性がゼロとは言えないな。
「そういうことだ。もうひとつは、その長距離レースに同行して見回りを頼みたい。最近はブラックドラゴンやらデッケえムカデが出たって聞くし、念のためってやつだ。トラブルが発生したときに二次災害で事故が起きるのを防いで欲しいんだ」
「冒険者ギルドかレースのスタッフがレースに同行しないんですか?」
「街で一番速い魔走車を決めるレースだぞ? レース用の魔走車に併走するのは速過ぎて無理だ。一応チェックポイントに運営スタッフがいるが、同行は考えていない」
「それもそうか……。三つ目もレース関連ですか?」
「いや、最後はちょっと毛色が違う。というかダメ元の頼み事だ」
「なんでしょう?」
「実はこの街の周辺では昔から置き引きの被害がちょくちょくあってな。街を目指す冒険者や商人、旅人なんかが野営中に狙われている」
「昔からっていうと、犯人がずっと捕まっていないってことですか?」
「そうなんだ。そもそも犯人の目撃情報がない。盗られたのは確実なんだがな……」
「それはさすがに難しそうですね」
盗みの犯人探しとなると、専門外すぎる。
しかもずっと捕まっていないとなると、相手は凄腕。
残念ながら、そういったことに使える能力を持っていない俺では力になれそうにない。
得意分野ではないからなぁ。
「まあ、そう言うとは思っていた。こちらとしてはそれほど期待しているわけじゃない。ただ、そういう事実があると知っておいてくれ。何か手がかりが見つかれば、是非教えてほしい」
「犯人を捕まえるのは難しそうですけど、それくらいなら……」
安請け合いは出来ないが、気づいたことを知らせるくらいなら出来るかな。
でも、ずっと捕まっていないみたいだし、そう簡単に何か見つかるとも思えないけどな。
「レースの依頼はどうだ? 受けてくれるか?」
「一応ふたつとも大丈夫だと思いますけど、正式な返事は今後の予定がある程度決まってからでも構いませんか?」
今回は俺個人で動くわけではないので、即決できない。
ジョゼさんと会って、すり合わせをしておいた方がいいな。
「分かった。色のいい返事を期待してるぜ。お前の方から何かあるか?」
「いえ、特にないですね。二つの依頼もなるべく受ける方向で検討します」
置き引きはどうしようもないけど、レース関連の二つはなんとかしたいな。
「話は以上だ。依頼を受ける気になったら、受付で話してくれ」
「分かりました。それでは失礼します」
ギルドマスターからの説明を受けた俺は冒険者ギルドを後にした。
次に向かうべき場所は……。
「さて、それじゃあジョゼさんのところへ行こうか」
錬金術を教わるべく、ジョゼさんの家へ向かう。
『はーい! どこへ行けばいいの?』
「う……、確かに分からないな。確か工房がどうとか言っていたから、そういうのが密集している所を探せばなんとかなるかも……」
ミミに聞かれ、ジョゼさんがどこに住んでいるか知らないことに気付く。
慌てて通行人に工房がある区画を聞き、そちらへ向かった。
「おお、それっぽい雰囲気だな」
『煙がいっぱい出てるね!』
ミミと二人、辺りを物珍しげに見回す。
到着してみるとそこは大小様々な工場が建ち並ぶ場所だった。
工場……、いや、これが工房なのか。




