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14 モンスターを倒して驚愕のレベルに……!

 

「さて、これからどうするか……」


 腕組みした俺は、周囲に散乱するブラックドラゴンの死骸を見渡す。


 討伐の証明は女神様がやってくれるし、現物を残しておく必要はない。


 死骸をこのまま放置しておいてよいものか。


 折角死んでくれたのに、ゾンビにでもなったら厄介極まりない。


 いっそのこと全部貰ってしまうのも手だ。


 アイテムボックスにしまっておけば、後々役に立つかもしれない。


 売る……のは多分無理。


 いや、牙の一つくらいなら手頃な値段で売れるかもしれない。


「ここは全部持っていっちゃうか……」


 というわけで、全ての死骸をアイテムボックスへと収納。


 アイテムボックスは特殊という名にふさわしく、竜の巨体をものともせずに、すんなり収納してしまう。二十八匹も収納したのに何の問題もない。


 どんな状態なのか確認しようと思えば眼前に立体映像的ウィンドウが現れ、ブラックドラゴン×28と分かりやすく表示されていた。


 在庫確認もしやすいし、ありがたい機能である。


 ブラックドラゴンという文字部分に触れ“一匹”と念じれば一匹だけ取り出すことができてしまう。ウィンドウを消し、ブラックドラゴンを一匹出すと念じながらアイテムボックスを使用しても、同じことができた。


 どうやらウィンドウを表示しなくても出し入れができるようだ。


 俺は取り出した死骸を再度収納する。


「……そういえば」


 と、ブラックドラゴンでアイテムボックスの確認を行っていたためか、ここであることが気になりはじめる。


 ――それは、女神様が“ブラックドラゴンを倒した”と、言っていたことだ。


 まるで、俺が倒したかのような言い回しだった。


 でも、あれって事故だよね?


 相手が勝手に死んだだけ。そう、思っていた。


 しかし、それが事故ではなく、倒したとなると話が違ってくる。


 なんか凄いのを二十八匹も倒したとなれば、レベルも相当上がっているのではないか?


 わざわざ勇者を召喚して倒そうとしていたくらいのモンスターを倒したとなれば、レベルが上がっていてもおかしくない。ちょっとワクワクしてくるぞ。


 俺は早速、鑑定スキルで自身を鑑定してみる。


 すると――。



【名 前】 まるもっちー

【種 族】 餅人

【レベル】 99(MAX)


【膂 力】 101204 (+100000)

【魔 力】 100998 (+100000)

【体 力】 101172 (+100000)


【クラス】 

【称 号】 転移失敗者 悪竜殺し 


【固有スキル】


 鑑定 自動翻訳 特殊アイテムボックス 

 餅 癒やし効果


【スキル】


「カンストしとるがな……」


 レベルが99になっていた。


 99という数字の隣には、マックスと表示されている。


 これは間違いなく天井。カウンターストップだ。


 上がっていて欲しいとは思ったが、まさか上がりきっているとは思ってもみなかった。


 しかも悪竜殺しという称号のオマケ付き。


 その称号の効果か、全ての能力値にボーナス補正が入っていた……。


 つまり、それほど危険な存在と対峙していたということだ。


 まあ、レベルは高いに越したことは無い。


 大は小を兼ねるというし、1より99の方がいいに決まっている。


 少し驚いたが、何の問題もない。そういうことにしておこう。


 死骸も片付けたし、自分の現状も把握した。


 となれば、次はどこへ向かうべきか、だ。


 脅威は去ったわけだし、王都へ戻るというのも手だ。


 願いが叶った影響で、俺を知る者はいないから何も気にする必要は無い。


 と言いたいところだが、俺のそっくりさんとして認識されるから、ルイーズさんと会うと余計な気を使わせてしまう。だから王都へは行くべきではないだろう。


 なら、初めに目指していた街へこのまま向かってしまおう。


 城を出て日数も経過していたし、戻るより進んだ方が目的地に着く時間も短いはず。


 というわけで、当初の目的地であるタマリの街を目指すことにした俺は、森の外へと向かうことにした。


「じゃあ、行きますか」


 早速森を脱しようと歩き始める。


 ブラックドラゴンが木々を薙ぎ倒して回ったせいで、外へ向かう即席の道が出来ていた。


 そのお陰で逃げ回った森の中でも、迷うことは無い。


 もう少しで森から出られるなと思って歩いていると、突如横から鳴き声のようなものが聞こえてくる。


 何だ、と思って顔を向ければ、小人のようなモンスターが巨大な獣のモンスターに追われていた。


 小人のようなモンスターは全体的に淡い色味で、どこか植物っぽさがある。


 それを追う巨大なモンスターの方は一言で表すなら、真っ赤なサーベルタイガー。


 5メートルほどの大きさで、全身赤一色の虎が大口を開けて小人を追いかけているのだ。


 まさしく弱肉強食。この異世界なら、割とよく遭遇しそうな一場面。


 それなのに、なんとなく小人のモンスターを助けたいと思ってしまう。


 それは逃げているモンスターが人型で、自分と似ている体型だったからかもしれない。


 寸胴で見た目もかわいらしいし、見殺しにするのはどうにもかわいそうな気がしたのだ。


 といっても、俺にサーベルタイガーと戦う技術は無い。


 レベルは高くなったが、強くなった実感が全く無い。


 むしろあんな巨大な獣を見ていると、ビビッて震えてくる。


 倒せるビジョンが全く浮かばない。


 ここは戦わずに、小人を逃がすアシストをするに留めておこう。


 具体的に何をするかといえば、投石。


 石ころを投げてこちらへ注意を向け、逃げる。


 サーベルタイガーが俺を追ってきたら、ブラックドラゴンをも魅了した餅で、何とかやりすごそう。と、餅頼みの作戦を立案する。


 などと考えているうちに、小人のモンスターがつまずいて転倒してしまう。


 今までは小さい体を活かして逃げ回っていたが、これはピンチだ。


「やばッ……。とにかく投げないと……」




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