136 逃走! とんでもない旅立ちに……!
なぜ、こんなところに……。
気が動転している間に壁に押し付けられ、両腕で左右を防がれた。
壁ドン状態で顔を近づけられ、凄まれる。
「お前の銅像を作るという話が出ている」
「聞きました……」
勘弁してほしい。
「お前を馬車に乗せて街中をパレードするという話も出ている」
「それは聞いていません」
それも勘弁してほしいよ……。
「タイムリーなところで言うと、今日をまるもっちーの日という記念日にして、毎年お祭りをするという案も出た」
「やめてください!」
堪らず叫んでしまう。さすがに大げさすぎるだろ!
「そう言うと思ってここに来た。シモーヌが話した通りの奴だな。ほれ、こいつを受け取れ。そして今すぐこの街を出ろ」
バルバラさんは大きな革袋を投げて寄越した。
受け取るとズシリとした重みが伝わる。
何が入ってるんだ?
「これは?」
「ムカデを倒した報酬だ。それに銅像を建てる予算と、パレードを行う予算と、記念日の予算も含まれる。つまりそれを受け取れば、全て行われなくなる、ということだ」
「ぐ……」
バルバラさんの意図を察し、押し黙ってしまう。
「クク、さあどうする? その金はいらんか? いらんなら返してもらって構わんぞ。ただし、どうなるかは分かっているだろう?」
「ありがたく頂戴します!」
貰うしかないよね……。
お金を遠慮すると、銅像とパレードと記念日の三点セット。
心の天秤にかけるとお金を受け取る方に傾いた。
「分かればいい。それを持って今すぐ街を出ろ。そうしないと他の連中が押し寄せてくる。私が抑え込められる範疇を越えているからな。急いだ方がいいぞ?」
「わ、わかりました。色々便宜を図って頂きありがとうございました。失礼します」
俺は早口でお礼を言うと、路地裏から走り出た。
「うむ、気をつけて行け。街を救ってくれたこと、感謝する!」
「まるもっちー! ミミ! ありがとうよ!」
「まるもっちーさん、お団子美味しかったです! ミミちゃんも気をつけてね!」
「まるもっちーさん、ミミちゃん、お元気で!」
声を聞いて振り返れば、ギルドから出てきたギルドマスター、ロザリーさん、リリアーヌさんが手を振っていた。
「皆さん、お世話になりました! 失礼します!」
『ばいばーい!』
俺とミミは手を振り替えして、頭を下げると街の出口へ駆け出した。
「ふう、逃げるように出てきちゃったな……」
振り返り、綺麗に積み上がった防壁を見つめる。
一部はヘルセンチビートルに壊されてしまったが、大半は順調に修復が進んでいる。
きっと、今回壊れた箇所も近いうちに元通りになるはずだ。
「街が無事復興できるといいな」
この調子で進めば、きっとうまくいく。
今回の一件のほとぼりが冷めるころには、完全な状態になっているかもしれない。
そうなったら、また来たいな。
『マスター、次はどこに行くの?』
物思いにふけっていると、ミミに次の目的地を聞かれる。
「次はミルティユの街だね。錬金術を教えてもらいにいこうか」
次に行くべき場所は決まっている。
約束があるのだ。
『ジョゼさんに会いに行くんだね!』
ミミが目を輝かせて元気一杯に言う。
「そうだよ。じゃあ、行こうか!」
『はーい!』
ミミの元気に負けじと俺は答え、ミミを頭に乗せる。
準備を整え、街道を走り出す。
次に目指すは、ミルティユの街。
教わる技術は錬金術。
どんなものなのか今からとても楽しみだ。ワクワクするな。




