126 苦戦! とんでもない展開に……!?
足を広げて踏ん張り、一気に腰を捻り、投擲体勢へ。
「おりゃああああ、レーザービーム!!!」
気合の一声とともに、外野からホームへ向けて全力で送球するイメージで大岩を投擲。
強烈な加速を見せる大岩は、ヘルセンチビートルへ向かう。
が、大岩を察知したヘルセンチビートルは器用に体をくねらせ、直撃を避けた。
大岩はヘルセンチビートルの体を掠めて、行ってしまう。
「くそ……、まさか避けてくるとは」
かなりの速度が出たのに避けられてしまった。
不意打ち狙いで側面や背面から狙えば、結果は違ったかもしれないが、進行方向を変えたかったのでそうもいかなかったのだ。
俺が悔しがっている間にヘルセンチビートルが横をすり抜けて行く。
まずい、追い抜かれてしまった。
『ミミが縛るよ!』
と、両手をかざすのと同時に、地面から大量の木の根が飛び出し、ヘルセンチビートルを絡めとろうとする。
「ミミ、縛れそう?」
『だめ〜……、すごい暴れるから、逃げられる〜』
ミミの言葉通り、ヘルセンチビートルはとても反応速度が早く、木の根の拘束をかわすのだ。
何度か体の一部に根が絡みつくも、掴みどころが悪くてすり抜けられてしまう。
「こうなったら、掴んで力技で止める。考えるのは動きを止めた後だ!」
俺はミミを拾って駆け出し、ヘルセンチビートルに追いつく。
そして、頭部目がけて飛びかかった。
「おりゃっ!」
掛け声とともにヘルセンチビートルの口から生えたクワガタの角に似たキバを掴み、踏ん張る。
ググッ、と強い抵抗を感じ、地面に足幅の溝を二本作りながら大きく後退。
「ぐおおおおお! 止まれぇえええ!」
足に力を込め、限界まで踏ん張る。
すると、ある瞬間から、押される力がガクンと抜け、完全に停止する。
ヘルセンチビートルを押しとどめることに成功したのだ。
「よし、これで……。うおッ!?」
ホッとしたのも束の間。
ヘルセンチビートルは鎌首をもたげるように上体を持ち上げ、頭部を左右に振って俺を引きはがそうとしてきた。
俺はキバを掴んで必死に堪えるも、手が滑ってあえなく空中へ放り出されてしまう。
空中で行動不能状態に陥った瞬間、ヘルセンチビートルが下体を尻尾のようにしならせ、こちらへぶつけようとしてきた。
「まずい!?」
俺はミミを抱きしめるようにして庇うと、来るであろう攻撃に備え、身を固める。
鞭のようにしならせたヘルセンチビートルの体が直撃すると思われた時、俺とヘルセンチビートルの間に何の前触れもなく巨大な氷の柱が地面から飛び出した。
しかし、俺たちを守るように現れた氷の柱は、しなる下体にあっさりと破壊されてしまう。
が、さらに氷の柱が発生。迫る攻撃を防ごうとするも、また破壊。
氷の柱が三連続で発生した後、巨大な落雷が落ちた。
それを嫌がったヘルセンチビートルは攻撃を止めて停止。
なんとか俺への直撃を防ぐ形となった。
着地して辺りを見回すと、肩で息をするオレリアさんとニコルさんの姿が視界に入った。
「なんとかなったみたいね……」
「でも、限界だよ……。もう魔力がなくて動けない……」
グッタリとする二人。
俺は二人の下へ駆けつけ、状態を確認する。
傷はないが、顔から滝のように汗が流れ、とても辛そうだ。
「二人ともこれを食べて、物陰に隠れてください」
俺は癒やし効果を注いだ月見団子を手渡した。
「さっきはありがとうございました。俺はもう一度、挑戦してきます!」
本当は二人を介抱したかったが、そうも言っていられない。
ヘルセンチビートルは前進を再開し、とっくにこの場から離れてしまっていた。
「……気をつけて。次はフォローできないわ」
「私たちの分もかましてきて!」
「はい!」
俺は二人と短く言葉を交わすと、ミミを頭上に乗せて駆け出した。




