125 とんでもない敵、あらわる……!?
巨大なモンスターが空へ向かって伸びるたびに、周囲の山が地面に吸い込まれるように縮んでいく。
つまり、周囲の山の中にも身体が納まっていたということだ。
一体どれだけの長さがあるんだ……。
「ムカデ?」
ニコルさんの呟きを聞き、そうか、と納得する。
大きすぎてイメージが結びつかなかったが、あれは超巨大なムカデに間違いない。
大量の脚や長い胴が蠢く様は虫特有のものだ。
試しに、鑑定スキルを使ってみるとヘルセンチビートルと出た。
「大層な名前なだけはあるな……」
全身をあらわにしたヘルセンチビートルを見上げながら呟く。
まるで雲の上へ届く豆の木を連想させるほどの巨大さ。
なんて化け物なんだ。
皆が上方に視線を固定して呆然とする中、ヘルセンチビートルが大きく傾く。
地面へ向けて倒れ出したのだ。
まずい、と思ったが、突然の出来事だったため、その場で顔を覆うくらいが精一杯だった。
ズウン、という巨音と衝撃が周囲に広がる。
土煙が高波のように辺りを覆い、巻き起こった風で吹き飛ばされそうになるのを踏ん張る。
衝撃が収まったのを確認し、目を開ければ、ヘルセンチビートルが動き出すところだった。
その進行方向の先にはシプレの街が……。
「まずいわ……。あの先にはシプレの街が……」
顔を真っ青にしたオレリアさんが、言葉を詰まらせる。
「みんな、ごめん。攻撃してこっちに引きつけるよ。シプレの街に行かせるわけにはいかないからね!」
静かな表情でそう言ったニコルさんが抜刀すると、剣を天に掲げた。
「雷断魔迅剣!」
叫んだ瞬間、雲ひとつない空から雷が落ち、ニコルさんの剣に吸い込まれていく。
剣は雷を纏い、激しい光を発した。イナズマが巨大な刃と化したのだ。
上段に構えた剣からは絶えずバチバチという音が鳴り、激しく明滅している。
「行くぞぉ! 雷破斬!!」
ニコルさんが掲げた剣を振り下ろすと同時に、巨大な稲妻がヘルセンチビートル目がけて飛んでいく。
激しく音を立てる稲妻はヘルセンチビートルへ直撃。
巨大な焦げ跡を作った。
しかし、ヘルセンチビートルは何も感じていないかのように無反応だった。
稲妻を受けたのを合図に、シプレの街へ向けて前進の速度を速めてしまう。
大量の脚があるせいか、巨大な図体に似合わず凄まじい速さだ。
「うそ……、全く効いてないってこと?」
魔法を使って疲労したのか、片膝をついたニコルさんが呆然とする中、ヘルセンチビートルが遠ざかって行く。
「なんて速度なの……。このままじゃ、まずいわ」
「俺が止めてきます。ミミ、おいで」
『うん!』
俺の呼びかけにミミが頭上に乗る。
今は時間が惜しい。話をしている場合ではないだろう。
俺は二人の返事を聞く前に駆け出した。
一気にトップスピードまで到達し、ヘルセンチビートルを追い越し、急停止。
相手の眼前に立ちふさがる形で待ち構える。
といっても待つというほどの時間もない。接近まであとわずかだろう。
残念だが、魔力を練って名乗魔法を使うほどの余裕はない。
「くそ、こうなったら岩を投げるか……」
『アックスブルを塞いだやつだね!』
俺はアイテムボックスから大岩をひとつ取り出し、持ち上げる。
こいつを全力で投げれば、多少は効果があるかもしれない。
「よし、これで行くぞ!」
『マスター、ファイトー!』
ミミの声援を受け、狙いを定めていく。




