124 脱出するも、とんでもないことに……!
俺は再度、頂上付近の異変を凝視する。
火口のように開いた山の天辺。その側にクレーン車のアームのようなものが突き出し、蠢いていた。
日の光が逆光となって詳細な部分は見えないが、生きた何かなのは間違いない。
それが動くたびに岩が落ち、地面が揺れている気がする。
まるで何かが岩の殻を付きやぶって、出てこようとしているかのように見えた。
「あれは……、何だと思いますか?」
「ブラックドラゴンじゃないのは確かよね」
額から脂汗を流したオレリアさんがごくりと唾を飲み込む。
「ねえねえ……、あれがさ……、モンスターだとしてさ……。ブラックドラゴンみたいに石化してたとするならさ……。この山全部がモンスターってことにならない?」
周囲を見回したニコルさんが声を詰まらせながら言う。
しかし、その予想は間違っている。
「いや、模様は地中まで続いています。大きさは今の目の前にあるものより、遥かに大きいはずですよ」
「……そのようね」
言葉を失ったニコルさんの代わりに、オレリアさんが消え入りそうな声で頷く。
「まだ他の部分は石がはがれ落ちていませんが、これはまずいんじゃあ……」
揺れが激しくなると同時に岩のはがれる速度も上昇していく。
「ギルドに知らせるべきね。何かしら対策しないとまずいわ」
「じゃ、じゃあ、早く行こ? 私、ちょっと怖いかも」
「とりあえず、外へ出ましょう。ここはまずい。ミミ、胸ポケットに」
『わかったよ!』
ミミが胸ポケットに入ったのを確認した俺は、オレリアさんとニコルさんを両脇に抱えなおし、外へ出ようと一歩踏み出した。
「くそっ! 岩の数が多すぎる」
しかし、落石が多すぎて思うように進めない。
両手が塞がっているので振り払うことも出来ない。
三人で走るのも手だが、できれば俺の脚力で一気に外まで出てしまいたい。
俺が逡巡していると、オレリアさんが前方へ向けて両手をかざし、
「魔氷螺旋波!」と魔法名を叫んだ。
すると両手をかざした直線状に吹雪が巻き起こった。
俺が驚いている間に、吹雪は収まり、氷のトンネルが姿を現す。
トンネルは出口まで続き、落石を防いでくれていた。
「さあ、これを抜けて! 長くは持たないわ!」
「了解です!」
俺は頷くと同時にダッシュ。氷のトンネルを一気に駆け抜け、外へと出た。
洞窟を抜け、日の光を浴びて目が眩んだ瞬間、後方で氷のトンネルが崩れる音が聞こえる。
「オレリアさん、助かりました」
俺は抱えた二人を降ろしながら、山を見る。
揺れは未だおさまらず、山の表面でも落石が起きていた。
折角外に出たのに土砂崩れでも起きたらまずい。
視線のやり取りで通じ合った俺たちは、無言のまま駆け足でその場から距離を離す。
「まるもっちー君こそ、運んでくれてありがとう」
「ふぃ、危機一髪だったねぇ。それにしても揺れが凄いね」
皆で山から離れつつ、安堵の声を漏らす。
俺たちは山が崩れても大丈夫な場所まで充分距離をあけながら、様子を窺った。
地震が激しさを増し、収まる気配がない。揺れがどんどん酷くなっていく。
森からは危険を察知したのか、鳥が大量に飛び去っていく。
ここまで揺れると、歩くこともままならない。
皆、倒れまいと踏ん張っていると、それは起きた。
ズゴンッ、と強烈な巨音が轟き、まるで噴火したかのよう大量の岩が山からはがれ、周囲に飛び散ったのだ。
はらはらと小石が降り落ちる中、山があった方を見れば、巨大な何かが天へ向かって蠢いている姿が見えた。
モンスターなのか?
あまりに大きすぎて、自然現象の一種と勘違いしてしまいそうだ。




