120 とんでもない協力者現る……!
翌日、ギルドマスターの依頼を受け、北の山へ向かうこととなった。
同行者に並々ならぬ不信感を抱いていた俺は、眠れぬ夜を過ごすこととなってしまった。
が、俺の不安は思わぬことで完全に解消された。
それは、当日の朝、奇跡の出会いを果たしたためである。
「あ! あの実、食べれるかな……。ちょっと採って来る!」
「こら! 待ちなさい。そんなことに時間を使ってる場合じゃないでしょ。さっさと東の山まで行かないと、帰りがいつになるか分からなくなるわよ」
「はぁい……」
「オレリアさん!」
俺は救いの女神に対し、つい声を張り上げてしまう。
「な、なによ……」
びくっとなったオレリアさんが振り向く。
「助かります! 初めはどうなることかと不安だったんですが、なんとか前に進めそうです」
目的地に着くかどうかより、前進できるかどうかで悩んでいた。
主に、ニコルさんが原因で……。俺じゃあ、抑えきれそうになかったんだよね。
「大げさよ……。まあ、まるもっちー君の気持ちも分かるけどね」
肩をすくめて苦笑するオレリアさんは、リスを見つけて走り出そうとするニコルさんの首根っこを掴んではなさない。
動けないと悟ったニコルさんは、しょげてしゃがみ込んだ。
「ミミちゃん、二人がひどいんだよ?」
オレリアさんに管理され、消沈したニコルさんがミミに愚痴りにいく。
『よしよし。大丈夫だよ!』
ミミは笑顔でニコルさんを撫でつつ励ました。
慰められたニコルさんは「ふわぁ、ありがとう」と、感極まった声を出しつつ、ミミを抱きしめ頬ずり。
それを見かねたオレリアさんがニコルさんの襟を掴んで持ち上げ、立たせる。
「ほら、遊んでないで行くわよ」
「はぁい」
「スムーズだ……」
これなら東の山まで順調にいけそうだ。
今回は同行者が二人いるので走ることはできない。そのため、進行速度はそれなりだ。
無理をして二人を両脇に抱えれば走ることもできるが、そこまでする必要もないだろう。
むしろ、ベテラン二人と行動をともにし、学ばせてもらえるいい機会だ。
「待って。近くにモンスターがいるわ。少し遠回りになるけど迂回しましょう」
「ぇぇ〜……、私がいるから大丈夫だよ」
「俺もいますし、大丈夫ですよ」
モンスターの気配を感じ取ったオレリアさんが、避けて通ることを提案してくる。
俺とニコルさんは倒す気満々。意見が分かれた。
「……確かに、君がいれば大丈夫な気もする。でも、時間が惜しいわ。モンスターと遭遇するたびに戦闘していたら、いつまで経っても着かないわよ」
「それもそうですね」
今回の目的はモンスター討伐ではない。
優先順位をしっかり判断するのは重要なことだ。
これはオレリアさんの意見を尊重すべきだろう。
勉強になるなぁ、などと考えていると、ニコルさんが「倒すの!」と駄々をこね始める。
これは勉強になるなぁ。反面教師として。
「雑魚相手に時間を使ってどうするのよ」
と、呆れてため息を吐くオレリアさん。
「ふふ、確かに。私の実力はこの程度の相手に振るうものじゃないわ」
バサッとマントを翻すニコルさん。
その動作は格好いいが、少し前に駄々をこねて転げまわっていたことを忘れてはいけない。
「オレリアさんはモンスターの気配が分かるんですね」
これなら無駄な衝突を避けて、先に進める。
「まあね。狩りで培った技術よ。獲物を探さないと、皆が餓えちゃうからね」
「なるほど、避けるためじゃなくて、探すために磨いた技なのか……」
「う〜ん、両方かな。モンスターの数が多ければ、回避するからね」
「便利だなぁ。今度私にも教えてよ」
と、ニコルさんがオレリアさんにひっつく。
「気が向いたらね」
「ぇぇ〜、いけず〜」
「ほら、膨れないの」
オレリアさんは抱きついてきたニコルさんを引きはがしつつ、ポンポンと頭を叩く。
なんとも手馴れたあしらいだ。
「なんか、ニコルさんの扱いに慣れてますよね。本当に初対面なんですか?」
「なんていうか……、シロにそっくりなのよね……。人懐っこいところとか、なんでも好奇心旺盛なところとか……」
「ああ……、あの犬ですね」
なるほどなぁ、と感じながら、オレリアさんの家にお邪魔したときのことを思い出す。
初めて会う人にも警戒せず、何にでも興味を示す犬だった。
ミミと仲良くなって、一緒に家の中を探検していたなあ。
『シロ! もこもこだったよね!』
シロを思い出したミミも、ぴょんぴょん跳ねる。
ミミはふさふさの毛に覆われたシロの手触りが大好きで、よく撫でていた。
「シロ、元気にしてるかなぁ」
オレリアさんが遠い目をしながら、ニコルさんの顎を撫で、背を撫でる。
すると、ニコルさんは「ううん……」と、リラックスした声を出しながらオレリアさんにひっついた。
そんな二人を見て、つい「懐いてる……」などと呟いてしまうのも仕方ないと思う。




