119 謎の闖入者現る! その正体は……!?
「だろ? だから厄介なんだ。山の内部に巨大な空洞があった場合、崩れるかもしれない。地震の影響でその辺りの地形が変化するかどうかを見ておいてほしいんだ」
「分かりました」
崩れそうならこっそり補強しておこう。
内部が空洞なら、この間回収してまわった廃材を放り込むのも手かもしれない。
アイテムボックスで運んで空洞を埋めてしまえばいい。
もしくは、ミミに頼んで土砂が崩れにくくなるように根を張ってもらうという手もある。
最悪、山を無属性魔法で消し飛ばすという手も……。
うん、なんとかなりそうだな。
「まあ、そんなに気負わなくてもいい。鉄級のお前一人を行かせるつもりはない。ちゃんと凄腕の冒険者に同行を頼んでおいた。そいつと一緒に様子を見て来て欲しい」
「助かります。それで、俺と一緒に行ってくださる方はどちらに?」
今回の依頼は単純作業じゃない。
その辺りも加味して、ギルドマスターはサポートしてくれる人を用意していてくれた。
凄腕ということだし、しっかり勉強させてもらおう。
「……それが、今日ここで顔合わせの予定だったんだが、まだ来ていないんだ」
「もしかして……、事故? 安否を確認した方がいいんじゃないですか」
約束の時間に来ない。
普通なら遅刻を疑う場面だが、凄腕冒険者というならトラブルに巻き込まれた可能性もある。
大丈夫なのだろうか。
「その心配はない。なんだ……、時間にルーズな奴なんだよ。ルーズなのは時間だけじゃなんだが……」
妙に歯切れが悪い。ギルドマスターは、もごもごと言葉を紡ぐが、説得力が皆無だ。
というか、本当に凄腕冒険者なんだろうか……。ちょっと疑わしくなってきたぞ。
「なんですか、その喉にものが詰まったような言い方……。すごく気になるんですけど」
俺がギルドマスターを半眼で見ていると、バンと勢いよく扉が開かれた。
ハッと振り向けば、笑顔で片手を上げている女性が一人。
「はーい! お待たせ〜。いやあ、ごめんごめん、途中で犬を撫でていたら遅れちゃった。なかなかお腹を見せないから、むきになっちゃったんだよね〜」
頭をかきながら、遅刻の理由に相応しくない話をして苦笑する顔には見覚えがあった。
「紹介しよう、こいつが今説明していた、冒険者のニコルだ。こう見えてランクは金。見た目に惑わされるなよ?」
「あ、ニコルさん。お久しぶりです」
俺は立ち上がって、ニコルさんに挨拶する。
まさか、この人が金級冒険者だったとは。大先輩というわけだ……。
……全然そうは見えないな。
「やあ、まるもっちーじゃん。久しぶりだね」
「なんだ、知り合いだったのか。なら、話が早い。二人で北の山の様子を見て来てくれ」
俺たちが初対面じゃないことを察したギルドマスターが軽い調子で言ってくる。
俺が「はい」と、頷くと横から「まっかせなさーい!」と能天気な声が聞こえてくる。
「これは……、不安だ」
果たして目的地に無事辿り着けるのだろうか。
妙な不安が募る。
「ふふ、まるもっちーが怖がるのも無理はないね。けど、私がいるから安心して。ばっちり守ってあげるからね!」
ニコルさんが得意気な顔で俺の背をばっちーんと叩いた。
金級冒険者が任せておけ、と言う。とても、心強い場面のはずなのに、不安が先に立つ。
俺はいつからこんなに心配性になったのだろうか。
「た、助かります」
「むふふ、大船に乗った気でいたまえよ〜。あ、ちょっとご飯食べていかない? よく行くお店でアックスブルのメニューが復活したんだよね〜」
「……不安だ」
「もう、怖がりだなぁ。大丈夫だって」
ニコルさんが俺の肩に腕を回し、顔を近づけながら微笑んでくる。
とても頼もしいはずなのに、不安が増す一方なのは一体なぜなんだ。




