115 犯人特定! とんでもない量の証言が……!?
「昨日から定期便もUターンができる土砂撤去場所まで復活し、念願の錬金術師も大量に来てくれました。これで防壁の仕上げ作業ができます。他のエリアへの資材の運搬は終わっているから、仕上げをやっている間に他の場所の防壁を組み上げることができる。つまり、ロスなく防壁の工事を進められるわけです」
話し終えた、ロザリーさんがため息をつく。
話を聞くと、土砂を撤去した場所が広くなったので、中継ターミナルのような扱いになっているみたいだ。土砂崩れの再発を防ぐために平らにしただけだったが、これは嬉しい誤算だ。
朗報のはずなのに、なぜそんな疲れきった表情をしているのだろうか。
「俺たちは街への被害を減らすため、モンスターの流入が多いエリアの防壁から工事を進めていた。だが、ある日を境にモンスターが一切出現しなくなった。まるで全滅させられたかのようにな。お陰で防壁工事がはかどり、予定を大幅に短縮できた。地震の頻発はあるが、好調な状態を維持できている。このままいけば、街の防壁がどのくらいで直るか見込みが立ちそうだ」
と、ロックさん。とても喜ばしい状況のはずなのに、表情は奥歯に物が挟まったかのようだ。
顔全体に納得できないといった雰囲気が充満している。
「流通も元通りになるし、別の街からの大工や冒険者の出稼ぎも本格的に訪れはじめた。これで倒壊した家屋の建て直しも、一気に進むだろう。廃材の撤去も済んでいるし、資材の搬入も済んでいる。後は人さえ来ればすぐに作業に取り掛かれる」
と、トマさんが抑揚のない声で淡々と言う。
解体作業はトマさんの担当なのに、まるで他人事のようだ。
「現在、家屋が無くなって避難している人たちへ炊き出しを行っています。ですが、その近辺で正体不明の食料提供者が頻繁に出没しています。そのせいで皆、飢えをしのぐどころか、豊かな食生活を送れるようになっています。結果、その人物のお陰で飢えからくる犯罪や暴動の発生を未然に防げています。主に餅ばかり持ち込む謎の人物ですが……」
と、リリアーヌさんが半眼で俺を見下ろしてくる。
く……、報酬を払うとか言われると困るので秘密裏に活動していたが、さすがにやり過ぎたか。バレてる感じする……。
「どこも作業が急ピッチで進んでいるため、本来なら人員の疲労度はかなり高くなってないといけません。ですが、ギルドを含むどこの作業現場でも疲れがピークに達する直前に謎の人物が現れ、疲労が回復し頭がスッキリする団子を大量に差し入れにくるため、従業員に病気、ケガが一切出ていません。真っ白な巨体の持ち主という事だけは分かっていますが……」
と、ロザリーさんが俺を見つめながら言う。
いやいや、俺がロザリーさんに「差し入れです」って渡してるんだから、謎の人物じゃないでしょうに。
みんな大変そうだったから、癒やし効果を注いだ団子をちょくちょく差し入れていた。
結構好評だったのに、凄く怪しい言われ方だな……。
「怪我人の治療などで枯渇しかけていた薬草類も各所で大量に補充が入った。一旦ギルドの薬草採取の依頼を引き上げるほどの量が手に入って、治療院と薬屋の連中が大忙しだ。なぜ、補充が入ったかと言えば、妙な人物がギルドの依頼とは別枠で持ち込みで売りにきたためだ。皆、初めは今の混乱に乗じた詐欺を疑ったそうだが、持ち込まれた品を見て目を疑ったそうだ。薬草の品質が異常に良すぎてな」
ギルドマスターが俺の肩を掴み、ニッコリ微笑む。が、目は笑っていない。
く……、以前ミミに作ってもらった薬草が四千九百九十五個ほど余っていたので、売りさばいていたら、そんなことに……。
ギルドで薬草採取の依頼をこなせば、余計な事務仕事を増やすと思って、直接売りに行っていたが、見つかってしまったか。
ここなら需要があるだろうと、つい売りまくってしまった。
「とまあ、色々あったわけです。中にはよく分からない謎の人物の仕業というものもあったので、その正体をつかむため、仕事と並行して調査を進めていました」
キラリとロザリーさんの目が光る。
そしてロザリーさんの言葉を引き継ぎ、ギルドマスターが話し始めた。
「その調査が実り、目撃証言も大量に集まった。こっそりとモンスターを倒して回り、食い物を配り、薬草をばら撒いたのは全て同一人物。そいつは図体がでかく、色白でモチモチした肌で、小さなかわいい従魔を連れた男。そう――」
「「「「お前だ!!!」」」」
皆が目を見開いて、俺を指差す。
く、ここまでか……。




