表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/354

105 とんでもない方法で疑惑解消……?


 ロックさんは俺が抱えて運ぶことを頑なに拒否する。


 まあ、普通はそうなるよね。


「じゃあ、走りますんで、付いてきてくださいね?」


「分かったよ。ならさっさと行けよ。――待てぇえええええ! ちょっと待てぇええええ!」


 シッシと手を動かすロックさんを確認した俺は、早速駆け出すも、すぐ止められる。


「どうしたんですか?」


「なんだその速度は……。おかしいだろ! そんなもん付いていけるか!」


「ええ。ですから、俺が運びます」


「……でもな」


 渋面を作って嫌そうな声で言葉を詰まらせるロックさん。


「俺が運びます」


「分かったよ。頼むわ」


「じゃあ、持ち上げますよ」


「……お前、なんか柔らかいな」


 俺が横抱きにすると、肩や腕を揉んで感触を楽しむロックさん。


 くすぐったいからやめてほしい……。


「行きますよ? 舌をかまないように気をつけて下さいね」


 俺はそう言うと、軽く駆けた。


 日が暮れてしまうと、照明が少ない所は危ない。


 ここは少し速度を出して早めに切り上げた方がいいだろう。


 二周したので、人と接触の危険がある場所も把握しているし、速度を出してもいけるはず。


 そう判断し、様子を見ながら少しずつ速度を上げていく。


「うおおおおおおおおおお!?」


 俺の速度に慣れていないロックさんが絶叫するも無視だ。


 俺はロックさんを抱き上げた状態で資材を置いた十箇所を巡った。


 確認を終え、再び空っぽの資材置き場へと帰還する。


 ロックさんを地面に降ろすと、生まれたての小鹿のように膝がぷるぷるしていた。


「全部運び終えてやがった。本当にあった……。どうなってるんだ一体……。いや……、あれだけ速く走れるならできるか……」


 ロックさんが青ざめた顔でブツブツ呟きながら一人納得する。


「分かってもらえましたか?」


「現物を見たんだから、信じるしかないわな」


「じゃあ、そういうことで。お疲れ様でした」


 それじゃあ確認も済んだし、宿へ帰るか。


 俺は頭を下げると、踵を返した。


 と思ったら、ロックさんが俺の頭に腕を回しヘッドロックしてきた。


 多分、肩に手を回したかったんだろうけど、俺の頭がデカすぎて引っかかってしまったのだろう。


「ちょちょちょっ! ちょぉおっと待て」


「わわ、なんですか」


 説教か、パワハラか。


 急に体を固定されて慌ててしまう。


「今書くから待て。よし、出来た。依頼完了の書類だ。こいつをギルドに提出しろ」


 ロックさんは俺をヘッドロックした状態をキープしたまま、器用に書類を書き上げ、俺に叩きつけた。


「ああ、そういえば受け取り忘れていました。ありがとうございます」


 これがなければ依頼達成できない。危うく依頼失敗となるところだった。


 ひと仕事終えてやり遂げた気分に浸って忘れてしまっていた。危ない危ない。


「よし、約束だ。酒でも何でも奢ってやるって言ったよな? 好きなものを言え」


「じゃ、じゃあ夕食をお願いします」


 ぐぐい、と強引に迫られ、飯と答える。


 時間も時間だし、お腹が減っていたのだ。


「いいだろう。ククッ、お前はついてるぜ。昨日俺の知り合いの飯屋がアックスブルの肉を手に入れたんだ。最近じゃ、めっきり流通量が減って、超がつくほどの高級食材になったのに、とある伝手から買えたそうだ。今日はそいつを食わしてやる」


「おお、それは楽しみです。アックスブルは初めてですね」


 ロックさんの話を聞き、そのアックスブルがどこから出てきたものか察する。


 多分、俺が卸したやつが、ギルドから流れているんだろう。


 これからは少しずつ供給量が増え、値段も安定してくるはずだ。


「アックスブルの肉はここらの特産品なんだ。色々な食い方があるが、初めてならシンプルに焼いたものが一番お勧めだ。旨いぜぇ」


 ロックさんはアックスブルの味を思い出したのか、顔が緩んでニヤニヤしていた。


 至近距離で見るとちょっと怖いぞ。


 しかし、シンプルな味付けが美味しいというのは元の素材が旨いということ。


 これは楽しみだな。


『ご飯?』


 俺たちの会話を聞いていたミミが脚にしがみ付いて見上げてくる。


 お腹が減ったのかな。


「そうだよ」


『わーい! お腹ぺこぺこだったの』


 ご飯と聞いてニッコリ笑顔のミミ。


 これは沢山食べさせてあげたい。


 今回はご馳走になるし、足りない分は後で俺がなんとかしよう。


「助かったのは確かだから、しこたま食わせてやる。覚悟しておけよ」


「ご馳走になります」


『ありがと〜!』


 俺とミミ、二人でお礼を言う。


「おう、素直でいいじゃねえか。じゃあ、行くか!」


「はい。あの、そろそろ腕を解いてもらってもいいですか?」


 豪快に話すロックさんにヘッドロックの解除を申し出る。


 もう逃げないんで、お願いします。


「おう、わりぃ。普通の速度で行くからな。走るなよ?」


「分かりました。じゃあ、行きましょう」


 走ることを禁止された俺たちは、ロックさんと一緒に料理屋へと向かうことになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ