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100/322

100 謎の人物がとんでもないことをしていた……!?

 

 しかし、その外見の特徴、覚えがあるぞ。


「もしかして……」


 土砂で道が塞がっていると忠告してくれた人ではないだろうか。


 大きい荷物を背負ったいたし、あれが全部お金ならどんぴしゃだ。


 それならあの時、追いかけて会えなかったことも頷ける。


 魔金級の冒険者なら移動速度も速いはずだもんね。


「なんだ、知り合いか?」


「いえ、軽く立ち話をした程度です。名前も知らないので同一人物かどうかも自信がないですね」


 多分合っている気がするけど、確かなものは何もない。


 確実と断言できるほどではないんだよね。


「そうか、まあいい。とにかく、この街はお前たちのお陰でかなり潤ったということだ。これで復興のめども立つ。街の崩壊が軽微で済むように、私が身を挺してブラックドラゴンから守った甲斐があったというものだ」


「え、ブラックドラゴンと戦ったんですか!?」


 バルバラさんの話に驚き、大声を出してしまう。


 それでさっき、シモーヌさんはバルバラさんの体を心配していたのか。


「うむ、当然単独ではないがな。街長として当たり前のことだ。きっちり追い払ってやったわ!」


 ハハハッと豪快に笑うバルバラさん。


 しかし、それを見たシモーヌさんは頬を膨らませた。


「もう! 当然のことじゃないから! 元冒険者とはいえ、なんで街長が一番前で戦ってるのよ! 普通は後ろで指示するものじゃないの!?」


「うちには優秀な秘書がいるからな。頭脳担当は私ではない」


 街長がそんなこと言っちゃっていいのだろうか。


 などと思っていると、バルバラさんの視線がこちらへ向く。


「しかし、まるもっちー、貴様はえらく強いな。ケヴィンの話ではしばらく滞在してくれるそうだし、その間は街も安泰だ。修復作業もはかどるだろう」


「過剰な評価のような気もしますが、ありがとうございます」


「ふむ、まあいい。ところで、ケヴィンの話によると、あまり表に出たくないそうだな。なら、この書類に目を通し、納得してサインをしろ。アックスブルで金は一切受け取らず、寄付することに同意しますという内容だ」


「はい、分かりました」


 書類を受け取り、頷く。


「書き上がったらケヴィンに渡しておけ。それで全て終わりにしておく。公に周知もしないし、催しや式も行わん」


「助かります」


 鉄級冒険者の俺が大仰に表彰されたり、式に出たりしてもややこしいだけだ。


 そっとしておいてくれる方がありがたい。


「こちらはそれでアックスブルが大量に貰えるんだ、何の不満もない。よし、ギルドへ行く前に用件も済んだ。シモーヌ、帰るぞ」


「もう、姉さんたらマイペースなんだから」


「お前こそ、仕事熱心にも程があるぞ。どうせすぐ帰るつもりなんだろ。なら、一秒でも姉妹水入らずで過ごす時間を作ろうとするのは当然ではないか。ということだ、まるもっちー。お前はもう帰れ」


 うむ、もういいぞ、とバルバラさんに言われる。


 それを聞いたシモーヌさんがちょっと怒った。


「姉さん! まるもっちーさんにそんな言い方しないで」


「いえ、構いませんよ。それにバルバラさんも仕事が忙しいでしょうし、二人の時間を邪魔したくないですよ。シモーヌさんもそれなりの思いでここまで来たわけですしね」


 再会できた姉妹の時間を邪魔しちゃ悪いし、ここで失礼しよう。


 ここまで来ようと決意するほどシモーヌさんはバルバラさんを心配していたわけだもんね。


「分かってるじゃないか。改めてお前を評価しよう」


「……でも、皆で食事くらいなら」


「いえ、行って下さい。俺は大丈夫なんで。ミミと一緒にゆっくりします。ねー?」


『ねー♪』


 ミミと目を合わせて頷きあい、行ってくれと言う。


 こちらのことは気にせず、二人の時間を楽しんでほしいしね。


 俺たちの様子を見たシモーヌさんが渋々といった体で納得してくれる。


「分かりました。まるもっちーさん、本当にありがとうございました」


「妹をここまで連れてきてくれたこと、礼を言おう。では、さらばだ」


「はい、失礼します。シモーヌさんもタマリの街へ帰るときは気をつけて下さい」


「うん。まるもっちーさんも依頼で無理しないでね。それじゃあ」


『ばいばーい』


 俺たちはシモーヌさんとバルバラさんに手を振り、見送った。


 二人はこちらに一礼すると、楽しそうに談笑しながら街の雑踏の中に消えていく。


 久しぶりの再会、良い時間になるといいな。



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