束の間の・・・
再アップです。
2020年11月
「中古本」
先日、某ショッピングサイトで古本を
まとめ買いしました。
昔はよく古本屋で自分の好きな漫画を
買っていましたが、行くタイミングによって
お目当ての巻があったりなかったりと。
それならばショッピングサイトを利用しようと
思い、古本を注文。
結果から言うと、大満足でした。
ちなみにオチはありません笑
晴れやかな雲ひとつない初夏の朝。
朝日が差し込む部屋の中、朝の訪れを
知らせてくれる雀の鳴き声で俺は目を覚ました。
枕元に転がっている数百円で買ったデジタル時計は
朝の訪れを無機質に伝えていた。
ベットから体を起こし、欠伸を少々。
静寂のアパート内の部屋に、不明瞭で非断続的な
欠伸が響いた。それから辿々しい足取りで
部屋のカーテンを開けた。窓外からは初夏の若葉の
木々の梢が姿を見せた。
「あ、いっけね」
ふと今日は千原と映画に行く日であることを思い出す。
デジタル時計を急いで確認。
待ち合わせまで1時間程度しかない。
脳裏に遅れた時の情景が思い浮かんだ。
ブーブー言われ、やれ喫茶店でコーヒーを奢れとか
飯を奢れとか言われるに違いない。
そう思うや否やトースターで食パンを一切れ焼き、
口の中に放り込み、地元のT駅へと向かった。
今日は日曜日であり、本来なら部屋で一日中
将棋の研究をするつもりだったが、まぁ1日ぐらいは。
という言い訳をしつつも、何だかんだで俺自身が
楽しみに感じていることは異論の余地がなかった。
「ふぅ、何とか間に合ったな」
指定された時刻の5分前には地元のT駅へと着いた。
日曜日ということもあり、人混みが多く混雑していた。
ちらほらとカップルの存在も見受けられる。
軽くジェラシーを抱きながら、俺は待ち合わせ場所の
時計台の下でぼんやりと千原を待っていた。
数分後、待っていてても暇なのでスマートフォン
の将棋アプリを触って暇を潰すことを決めた。
コンピューターを相手に
3局ぐらい指したあたりだろうか。
「隣くん、お待たせ」
右前方から、見知った声が聞こえた。
俺はその方向を振り向いた。そして、
口を半開きにさせたまま動けなくなってしまった。
そこには、モデルかなにかの女優でも
やってるのかと言いたくなるくらいの
美人の女が立っていたからだ。
「お前、まさか千原か!?」
「それ以外に誰があなたに声をかけるの?」
ごもっとも。
俺は驚きのあまり声が裏がえってしまう。
白のレース服に水色のミニスカート。
なにしろ、ロングの黒髪に顔全体に薄化粧がしてあるのか
パチッとした目や唇などがいつもより際立っていて
いつもの制服姿より10倍くらい可愛いかったからだ。
「あぁこれ?可愛い?」
千原は、少し上目遣いでこっちを見てくる。
不覚にも俺は高鳴る胸の鼓動を抑えるのに必死で
会話どころか目を合わせることもできなかった。
自然と頬が紅潮した。
「ねぇ隣くん行こうよ。」
無理やり俺の視界に入ってきて
腕を組んできてさりげなく胸を押し付けてくる。
「ん……っておい、お前さりげなく遅刻していることを
誤魔化してるんじゃない!」
「てへ。 まぁ細かいこと気にしない、気にしない」
そして、艶のあるピンク色の下を軽く出した。
うっ……これは……
まともに直視できず、腕を振りほどく。
そんな仕草に千原は口をとがらせたようだった。
「……もう。 とりあえず映画館に行きましょ」
それから俺達は近くのショピングセンターの
近くにあるであろう、映画館に向かうことになった。
推定なのは、俺自身もよく場所を把握していないからだ。
自慢じゃないが、道を覚えることは苦手だ。
アスファルトの道路を二人並んで小気味良く歩く。
千原はこちらに視線を転じた。
その拍子に黒髪がなびいた。
「隣くん、なんの映画みる?」
「お前決めていいよ。 どうせ寝るから」
「もう、それ意味ないじゃん」
やけに疲れたな。俺は肩に手で揉み解しながらそう思う。
普段動いてないからかな。
昨日も遅くまで将棋の研究をしたからだろう。
本来なら、今も将棋の研究をしているはず
だったからなぁ。
だから俺は気づかなかったのかもしれない。
何となく感じた悪い予感に。