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恋だけが残る  作者: 青木りよこ
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朝が来た。

来てしまった。

来てほしくなかったのに。

でも前向きに考える。

朝が来て新しい一日が始まると私はあの人に近づく。

一日一日が終わるたび私達は近づいてゆく。

今は違う色だけど、いつかは同じ色に染まる。

その時まで私は生きる。

だからまずは起きて朝食を作る。

あの人そっくりの彼のために。


「おはよう」

「何、その恰好・・・」


彼はスーツ姿だった。

あの人と同じ。

グレーのスーツに白いワイシャツ、ネクタイはしていない。

あの人も出かける直前までネクタイはしなかった。

シャツの第一ボタンは留めていない。

そこもあの人と同じ。


「何って、仕事に行くんだからスーツに決まってるだろう?」

「それ、あの人のスーツでしょう?」

「ああ、シャツは新品だけどな。スーツもこれ、まだ一回も着てないんじゃないか?」

「それはそうかもだけど・・・」

「服は服でしかないぞ、奈緒」

「それは、そうなんだけど・・・」

「早く食べさせてくれ。遅刻する」

「うん・・・」


私はご飯とカボチャのお味噌汁をよそい彼の前に出す。

テーブルにはだし巻き卵と塩紅鮭の焼いたのとわかめとしらすの酢の物と梅干と松前漬け。

もう一品くらい出したかったけど、まあ初日だしこんなものかとも思う。


「美味そうだな」

「ホント?」

「ああ、いただきます」

「いただきます」


彼はお味噌汁のカボチャを口に入れ、わかめとしらすの酢の物の小鉢に手を付けた。


「美味いな」

「そう、良かった」

「奈緒。俺はカレーが食いたい。今日はカレーにしてくれ」

「わかった」

「ハンバーグも食いたい」

「ハンバーグとカレー食べるの?ハンバーグは明日でよくない?」

「ああ、いい。じゃあ明日はハンバーグだ」

「わかった。チーズ乗せる?」

「ああ。明後日はコロッケ」

「ひき肉ばっかね」

「後々後日は酢豚」

「お肉ばっかり」

「次は」

「もういいわよ。そんな先のこと」

「そうか」


あの人のいない朝。

もうすぐこれが日常になる。

当たり前になる。

あの人にそっくりな男のために早起きしてお弁当を作り、朝ごはんを用意し、見送る。

掃除をし、洗濯をして、買い物に行き、夜ご飯を作る。

あの人にそっくりな、あの人そのものの見た目を持つ男のために。


「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」


彼はネクタイをして出かけて行った。

あの人と同じように。

夜になればあの人と同じように帰って来て私の作った夜ご飯を食べるのだろう。

そしてお風呂に入り、テレビを見たり少しダラダラしてから眠る。

私達は毎日ともに食事をし、彼のお休みの日には一緒に出掛けたりして過ごすのだろう。

家族みたいに。

夫婦みたいに。























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