第7話 三鷹順一 その2
二度目の人生というのは大抵のことはイージーモードだ。
小学生なら怠けていてもテストでいい点を取れ、運動も前世の経験の分、優位に立っている。
だけど、なんでも出来てなんでも得意というわけではない。苦手なものだってある。
「どうしたんだい? 朝から怖い顔して」
学校へ行く準備をしていると兄さんに声をかけられた。
どうやら顔に出ていたようで心配されてしまったようだ。
「なんでもない」
「そうか」
兄さんは納得していないようだけど引き下がってくれた。
心配してくれているのに、ぶっきらぼうに答えたことを悪いと思い、何が原因なのか答えることにする。
「今日はこれだから」
そういっていつもより一つ増えた荷物を兄さんに見せる。
「ああ、今日からプールだったね。初めてのことできんちょうしてたのかい?」
「うん。そんなところ」
俺は水泳が前世から引き続き苦手だった。
克服する機会もなかった。
そんな俺とは対照的に浩司と一花は楽しみにしているようであった。
登校中、ポンポンとリズミカルに水泳用品が入ったバッグを蹴り飛ばしながら歩く浩司と新品の水泳バッグを嬉しそうに何度も見つめる一花。
どっちも前を見て歩け。危ないぞ。
「あっついからプール楽しみだな。あの広いところであそぶんだろ。ビニールプールとはぜんぜんちがうんだろうな」
「そうだなー」
テンションの高い浩司に適当に相槌を打つ。
「元気ないなー。そんなんじゃおぼれるぞー」
「え、じゅんちゃんおよげないの?」
「泳いだことがないだけだよ」
今世は。
「じゃああたしがおよぎ方教えてあげるね」
「ああ、うん。一花が泳げたらな」
「およげるようになったらきょうそうしようぜ」
何の根拠もないのにフフーンと自信満々な一花とどこまでも勝負事が好きな浩司だった。
運動神経抜群の浩司は前世でも水泳をマスターしていたので、すぐに競争することになるだろう。
苦手なだけで全く泳げないわけじゃないからな。
そして一花よ。
自信満々なところ悪いが、俺は確信しているぞ。
鼻に水が入って泣き叫んでいるであろうことを。




