第13話 双葉その4
「ようやく。ようやくこの時が来たわ!」
俺の机の前に双葉が現れた。
新品の制服に身をとある席に視線を向けて、嬉しそうに笑っている。
「確かにようやくかもな。双葉が同じクラスになるのは」
小学校の頃は全く別のクラスだったのだが、中学に上がると同時に同じクラスになった。
双葉がちらりと見つめた先には彼女の机があった。
ちなみに一花も浩司も同じクラスだ。
「ずっと仲間外れな気がしてたのよね。あんたたち三人仲いいのに私はずっと枠の外って感じだったもの」
「クラスが違ったからしょうがない」
「でもようやく一緒になったわ!」
「そんなに一緒のクラスになりたかったのか?」
「そんなわけないじゃない。私だけいちいちあんたの所に通ってるせいでいろいろ言われたのよ。わざわざ負けに行っているのかってね」
俺のような例外がいなければ、双葉はただただクラス一位の優等生の座についていただろう。
「でも負け続けはもう終わりになるわ! 一緒のクラスになったからにはあなたの弱点を見つけてみせるわ!」
「弱点ねえ……」
「実はじゅんちゃんは弱点いっぱいあるよねー」
「うんうん。なんでもできるようで、できないこともあるよな」
「あ、一花と浩司」
自分の席にいた二人が俺たちのほうにやってきた。
「弱点がいっぱい? こいつに弱点があったの? だったら早く教えなさいよ一花」
「ええー? だって双葉ちゃんはお勉強で勝ちたいんじゃないのー?」
「いいから教えなさい」
「じゅんちゃんはね。音楽とか芸術が苦手だよね」
「俺たちの中で一番下手だよな」
「どうにも歌や楽器が苦手でなぁ。芸術もセンスがないな。筆記でいい点とっているから通知表も悪くはないけどな」
二人の言う通り俺には芸術的なセンスは皆無だったらしい。前世からの知識があってもどうにもならなかった。
「何よ。じゃあ通知表で勝負したら私が勝てたかもしれないの?」
「たぶんな」
テストや授業態度は良いのだが、実技が足を引っ張っているせいで数字は振るわない。
「じゃあ勝負よ勝負! 今日こそ勝つわ!」
「入学式の日から早々にどうやって勝負するんだよ」
「そうね……。カラオケ! カラオケに行くわよ! 点数が出るから、はっきり白黒つけれるわ!」
「それもいいかもな。一花と浩司も一緒に行くか?」
「あー。金かかるんだよなぁ……。いや。でもいくか」
「じゅんちゃんがいくなら私も行くよー」
「決まりね。私の美声に酔いしれなさい!」
そうして親睦を深めるため学校帰りにカラオケによることになったのだった。
その日勝利を確信していたのか双葉の機嫌は最高によかった。
カラオケの採点の結果俺の順位は三位だった。
そして最下位は………………。うん。
彼女の自信はなんだったのだろうか……。
平成最後の投稿になります。
令和になってもよろしくお願いします。
今後も頑張って更新したいと思っています。
この作品呼んでくれる人めっさ少ないんだけどね。
続きが読みたいと思っていただけると幸いです。
評価していただけると俄然やる気が出ます。