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UNKNOWNな引きこもり  作者: 砂を持った猫
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4 緊急ミッション発令

 能力が使えるようになってから、僕の生活習慣は正しくなった。

 なぜかって?朝の家族の会話を視るために決まっているでしょ。家族が繰り広げる朝の会話って、思っている以上に大事で、誰が何時ごろに帰ってくるのかを知る機会にもなる。

 

 家族と顔を合わせたくない僕にとっては、ものすごく貴重な情報源なのだ。


「お母さん、今日の晩ご飯はゼミの人達と食べてくるからいらない」

 

 ふむふむ。姉ちゃんは今日早く帰ってこないと。

 

 でも、嘘はいけないなぁ?昨日、大学で彼氏とご飯食べる約束してたじゃないか。父さんが不機嫌になるからって嘘はいけない。


 まったく、いけない姉ちゃんだ。


「あらそう。今日は美輝の好きな棒々鶏(バンバンジー)のつもりだったのに、残念」

「取っておいて!帰ってきてから食べるから!」

「そんなに食べたら太るわよ?」

「大丈夫!太らない太らない」


 ダウト!!1週間前くらいに太ったって落ち込んで、部屋でストレッチしたり、朝早く起きて走ったりしていたじゃないか。と言っても、姉ちゃんは余り太っているようには見えない。

 それなのに太ったとか、何gの世界なのだろうか。女の人は厳しい。


 とこんな具合に、家族の会話に1人突っ込みを入れることで家族に慣れようとしている。家族の会話って本当に大事だわ。僕は参加してないけど。

 え?方向性を間違ってるって?いいんだよこれで。実際に面と向かって話すのはまだいいのだよ!

 

 していることがストーカ、マジで気持ち悪いとか言わないで。


 今の1日の流れはこうだ。朝の会話を視て、家族が全員家を出たことを確認してから部屋を出る。シャワーを浴びて、朝ご飯を食べて、テレビを見て、遠視を使って家族の観察、昼ご飯を食べたら外に出てお気に入りの場所まで散歩。

 家族が帰ってくる前に、家に戻り、遠視を使って擬似的に世界を散歩して、晩ご飯を食べたら寝る。


 2ヶ月間この繰り返しだ。


 しかし、今日は違った。


 今日もいつもと同じように、家族が出かけたのを確認してから部屋を出て、シャワーを浴びて、ご飯を食べて、テレビを見て、姉ちゃんのリア充生活を覗いたりしていた。


 ~~~♪~~♪~~~~♪


 スマートフォンの着信音が聞こえる。スマートフォンから着信音が流れている気がする。


 いやいやいや。気のせいだろう。僕のスマホから音が流れるわけがない。友達いないし、アプリの通知は切ってるし、アラームも付けた記憶が無い。

 考えられるのは、家族からの緊急連絡くらいだ。


 ん?緊急連絡?もしかしてそれなの?


 恐る恐る、画面を覗いてみる。そこには母さんからの着信と表示されていた。


 なんだろうか。出た方が良いのかな。いや出るべきだろ、緊急時みたいだし。引きこもりで、まともに会話なんかしない息子にお使いを頼むとも思えない。

 

 やばい緊張する。


 腹を決めて電話に出る。


「……もしもし」


 声は小さくなってしまったが、聞こえてはいるとおもう。


「えっ、出た」


 いや、お母様。かけてきておいて、それは無いでしょ。そりゃ出ないと思われても仕方ないけども。

 

 最近、観察してたおかげなのが前よりも会話をすると言うことに抵抗感が無く、出ようと思ったのだ。以前なら、申し訳ないと思いながら耳をふさいで無視をしていただろう。


「……えっと。何かな」

「え?あ。そうだ。昇、今から明輝のこと迎えに行けない?」

「え?」

「明輝、学校で体調崩しちゃって早退するみたいなのよ。それで、学校から迎えに来てくださいって言われたんだけど、私今仕事から手が離せなくて行けないのよ。お父さんも最近仕事忙しいみたいだし、お姉ちゃんも大学だから頼めるの昇しかいなくて」


 緊急事態の内容はお使いではなく、明輝のお迎えでした。

 

 え?明輝と顔を合わせるの?2年間くらい会ってないよ?まじ?これは僕にとっても緊急事態だ!誰か助けて!

 

 頭の中は大混乱になり、しばらく無言になる、すると電話の向こうから。


「・・・・・・やっぱり無理よね。ごめんなさい無理言って」


 という、母さんの悲しそうな声が聞こえてきた。

 家族を観察していて気付いたことがある。母さんは僕の話題に触れると必ず悲しいそうな表情をするのだ。

 

 能力以前よりは、一方的にだけれど家族には触れていたつもりだ。妹の迎えくらい行ける。大丈夫、大丈夫と何回も言い聞かせ、返事をする。


「行けるよ」


 電話の向こう側から、ダイレクトにものが落ちた音が聞こえた。さては、母さん驚きすぎてスマホ落としたな?

 しばらくすると、母さんの声が聞こえてきた。


「本当に行けるの?」

 

 なぜかさっきよりも少し鼻が詰まっているような声だ。

 

「行けるよ」

「そう」


 鼻づまりの声だけでは無く、軽く嗚咽も聞こえてきた。遠視をしなくても手に取るように状況が分かってしまう。

 

 僕が悪いんだけども、泣かなくても良いじゃないか。なんか恥ずかしいんだけど。


「父さんの車借りるよ」


 父さんは電車通勤なので、平日は父さんの車が家にある。


「うん、お願いね、後、病院にも連れて行ってあげて。お金はリビングにある電話おきの戸棚にあるから」


 どうやら、病院にも連れて行かなくてはいけないらしい。


「保険証は?」

「明輝が持ってるはず」

「そう。じゃあ行ってくるね」

「……ありがとうね」


 母さんの涙声を聞いて、一気に気恥ずかしくなり、電話を切った。


 ああ、それにしても行きたくない。明輝に会いたくない。でも、約束しちゃったし行くしかない。

 

 大丈夫、行けるぞ!


 大丈夫と思ってからすぐに準備を始めた。こういうものは一回立ち止まって考えてしまうと、行けなくなるものだと知っているからだ。


 お金を取り、車の鍵を探し、外に出る。


 今、一番心配なのは、車の運転だ、明輝を迎えに行く前に事故ったらどうしよう。


 取りあえず運転席に座り、シートベルトを締め、エンジンをかける。低く唸りを上げ始めたエンジンの音を聞き、少しずつ感覚を取り戻していく。

 

 車を発進させてからは、意外とすんなり運転できた。2年間も運転していなかったのに、不思議なもんだ。


 そんなこんなで、色々な緊張でガチガチになりながらも明輝の通う高校へ向かった。



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